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米国より強力な経済救済策の策定に動こうとしない安倍政権

ポイント
・今回の新型コロナ禍を受けてトランプ政権が迅速に超強力な経済救済策に動き、FRBもそれに応じて超大規模な金融緩和策を打ち出したことで、今や米財政赤字の対GDP比は最悪の状況になり、FRBの総資産の規模も世界最大になっている。
・これまで、FRBが超強力な金融緩和策を打ち出すと、「属国」であり世界でも群を抜く貯蓄超過国の中央銀行の日銀がそれ以上の緩和策を強いられることで、ドル不安に陥るのを防いできた。
・今回、安倍政権も「空前絶後」の規模を謳った経済救済策が策定されて2回もの補正予算が組まれたが、米トランプ政権が打ち出したものと比べると見劣りするものだ。給付も遅れており、政府がそれを改善するために動こうともしていない。
・最近、数々のスキャンダルや政策対応の不手際もあって安倍政権の支持率が落ち込んでいる。自民党は国会の会期末の延長を拒否しており、政府が野党議員から追求されるのを防ぐためとされているが、意図的に米国より大規模な政策を打ち出さないためでもあるようだ。



圧倒的な世界最大の累積債務国で財政事情や中央銀行の総資産の規模が最悪に

 今回の新型コロナ禍を受けて主要各国の中で米ドナルド・トランプ政権が最も迅速に強力な経済救済策に動いたことで、今や世界でも群を抜く累積債務を抱える米国の財政事情が対国内総生産(GDP)比で最悪の状況になっている。また連邦準備理事会(FRB)も政府の姿勢に応じて立て続けに超強力な金融緩和策を打ち出したことで、その総資産の規模も日銀を抜いて世界最大になっている。しかも、これから最低でも国債と住宅ローン担保証券(MBS)を対象に1,200億ドルもの資産を毎月買い続けることで、その規模がさらに膨れ上がっていくことになる。
 ただ、以前には健全財政政策の維持に固執していたドイツ政府が今では財政出動政策に動き、欧州中央銀行(ECB)もそれに応じて量的緩和策の強化に動けるようになっている。そのため、比較相対的には米国は言われているほどには深刻な状態にはないといった見方もできるかもしれないが、それでも政府部門や中央銀行の債務の規模が突出して多く、それがさらに悪化していくことが確実視される状態にあることに変わりはない。


ドル不安を防ぐために日銀はFRB以上の緩和策を強いられる

 注目されるのは、これまではFRBが強力な緩和的な金融政策に動くと、世界でも群を抜く貯蓄超過国(債権大国)の中央銀行である日本銀行(日銀)もそれを上回る超強力な緩和策に動くことでドル不安に陥ることを防いでいたものだが、今回は日本側が打ち出している政策は米国のそれに比べると小規模なものにとどまっていることだ。
 例えばかつて、87年10月19日に「ブラックマンデー」と呼ばれる米国株の大暴落が起こった際には、日銀の澄田智総裁は当時の政策金利である公定歩合を史上最低の2.5%まで引き下げたことで、日本経済はバブル化が進行してしまったものだ。また90年代後半のニューエコノミーバブルが00年に崩壊して米国経済が景気後退(リセッション)に陥り、それから立ち直る際の00年代前半にはまだデフレ圧力が根強い状態が続いたので、アラン・グリーンスパンFRB議長は政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利をインフレ率を下回る水準にまで引き下げたものだ。それに対応して、日銀側では福井俊彦総裁(いずれも当時)が民間銀行から預かる当座預金残高を最大30兆~35兆円まで拡大することで量的緩和策を強化していき、ドル不安に陥るのを防いだものだ。


以前から日銀は米国から量的緩和策の導入を求められていた

 ちなみに日銀に最初に量的緩和策を導入するように要求したのが、90年代にアドバイザーとして来日しており、金利決定方式のモデルである「テイラー・ルール」を提唱したことで知られているジョン・テイラー元財務次官だった。
 また金融政策決定会合で最初にそれを提案したのが、つい最近まで「世界皇帝」として君臨していたデイヴィッド・ロックフェラーの日本人の“直系子分”であり、福井総裁の前任で日銀プロパー出身だった速水優総裁と激しく対立した中原伸之審議委員(いずれも当時)だった。いわゆる「中央銀行の独立性」という概念は、本当は中央銀行を当該国家ではなくグループ・オブ・サーティ(G30)の管轄に置くための“詭弁”なのだが、日銀法の改正に最も尽力したのもこの人物である。
 さらにいえば、安倍晋三政権が12年12月に再登板して翌13年4月に「アベノミクス」と呼ばれた経済政策を打ち出すにあたり、日本に派遣されたラエル・ブレイナード財務次官(当時、現FRB理事)とともにその作成に深くかかわったのもこの人物である。


安倍政権は意図的に米国より見劣りする政策を推進しようとしている

 問題なのは、今回は安倍政権は米国側の大規模な政策を上回る政策を打ち出そうとしておらず、それにより新規国債もそれほど増発されないために日銀も限定的な追加緩和策しか決められないことから、将来的に危惧されるドル不安の到来を防ぐ姿勢が見受けられないことだ。
 安倍首相は新型コロナ禍への経済救済策として2回にわたり総額117兆円と「空前絶後」の規模を謳いながら補正予算を組んだが、トランプ米政権が打ち出した政策に比べると規模の面で見劣りする。しかも、そこでは全国民に10万円を支給する特別定額給付金を筆頭に休業者を支援する雇用調整助成金、減収企業を支援する持続化給付金のいずれも給付が滞っている。米国ではすぐに大人1人に1,200ドル、子供1人に500ドルが支給され、さらに中小企業向けの給与保護プログラム(PPP)も積極的に利用されてうまく機能していることで、実際に5月の雇用統計では失業率が事前予想より低く、非農業部門の雇用者数(NFP)も予想に反してかなり増加しているなど効果が如実に出ていたが、それとは“雲泥の差”である。
 給付がうまく進まないのは末端の役所の非効率なシステムや硬直的な官僚制度によるものであり、必ずしも安倍政権に責任があるとはいえないが、そうした状況に陥っても政府が率先して動こうとしないのも不可解である。意図的に米国より見劣りする政策を推進しようとしていると感じているのは筆者だけだろうか?


批判される安倍政権と国会の延長が拒否されたワケ

 今、安倍政権の支持率が落ち込んでいるが、それ自体は米国のトランプ政権も、ロシアのウラジーミル・プーチン政権でもそうした状況に陥っており、親イスラエル右派的で国家主義的、民族主義的なナチズム系の権力者層が背後に控えている政府首脳に共通している現象である。
 最近の安倍政権ではPCR検査体制が一向に拡充しないことや、いかにコロナ経費とはいえ官邸が自由に使える予備費に10兆円も計上していること、持続化給付金の支給を巡り、電通に委託するにあたり「サービスデザイン推進協議会」といった“ダミー会社”が仲介しているのは“中抜き”ではないかといった一連のコロナ対応を巡る問題に加え、東京高検の黒川弘務前検事長(当時)を対象にしているとされていた検察官の定年延長問題が最近では批判を受ける主な要因だった。
 新型コロナ問題でまだ他にも多くの審議を要する問題があるにもかかわらず、自民党が国会の会期末の延長を拒否しているのは、安倍政権が野党からこうした問題で追及されるのを防ぐためといった見方が一般的であり、実際に国会で質問に立った野党議員もそのように揶揄していたものだ。しかし、筆者は意図的に米国より大規模な対策を成立させないために早期に国会が閉会される面もあるのではないかと見ている。


 明日もこの続きを掲載します。
 明日は先日、米大手格付け会社から日本国債の見通しを引き下げたことを手がかりに、日本の財政問題の本質について見ることで、米国の属国支配と官僚主導の統治体制の本質について考えることにします。
 なお、今週は通常より1日多く、20日の土曜日まで掲載します。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。