FC2ブログ

記事一覧

シムズ理論が脚光を浴びている背景について

ポイント
・非現実的なシムズ理論が脚光を浴びているのは、米権力者層が作為的にそれを広めることで、その裏側に大きな目的があると見るべきだ。
・それは一つには、日本側にヘリマネ政策を導入させることで、財務官僚はじめ財政規律重視派の抵抗を抑え込もうとしていることがあるのではないか。
・もう一つは、巨額な財政赤字や累積債務を抱えている米国でさらに国防費を増額させていく環境設定があり、当然のことながら日銀の外債購入も視野に入っているだろう。



ヘリマネ政策の導入に向けた環境設定か?

 ここでは、どうして非現実的なシムズ理論が“褒めそやされて”脚光を浴びているのかを考える必要があるだろう。いわゆる“ブーム”というのはメディアその他で作られるものであり、そのメディアの背後には権力者層の意向が強く働いていることが多いからだ。
 以前、トマ・ピケティ氏による経済格差と不平等を扱った『21世紀の資本』が、地元のフランスではほとんど注目されなかったものの米国で脚光を浴びたものだ。その背景には、その米国の政策当局者やその背後の権力者層が真剣にこうした状況を問題視していたことがあった。
 米国ではリーマン・ショックによる巨大な金融危機により中間層が没落して富や所得の格差の拡大が顕在化してしまい、「世界の一大需要基地」としての役割を担えなくなったことで、中国を敵視して「新冷戦構造」を構築して巨大な軍需を創出していこうとする大きな潮流があったわけだ。

 では、どうしてこうした非現実的なクリストファー・シムズ・プリンストン大学教授の議論が脚光を浴びているかというと、一つは完全に日本側の要因として、ヘリマネ政策の導入に向けて、それを“雰囲気面”から環境を整備していこうという意図があるのではないか。いかにシムズ教授の議論ほど“過激”なものではないとしても、それでも無利子の永久国債を日銀に実質的に引き受けさせるというのは大きな衝撃を引き起こさずにはおかず、財政規律重視派から相当に大きな抵抗を受けることが考えられるからだ。
 特に財務官僚による抵抗をどのようにして抑え込むかが課題であり、いかに安倍晋三首相が米権力者層から支持を受けており、また黒田東彦日本銀行(日銀)総裁も世界の主要国の中央銀行の金融政策を統括しているとされるグループ・オブ・サーティ(G30)の指示で動いているとはいえ、なかなか困難であるのはいうまでもないことだ。
 米政府側は以前から麻生太郎副首相兼財務相を訪米させるように要請しており、結局、2月10日の日米首脳会談で安倍首相とともに財務相も同行することで落ち着くようだが、その背景にはこうした財務官僚への対策をめぐる調整があるのかもしれない。


米国側での国防費の大幅な増額に向けた批判をかわす狙いも?

 もう一つ考えられるのは米国側の要因である。米国ではもとより巨額な財政赤字や累積債務を抱えているなかで、ドナルド・トランプ政権は大規模な減税や公共インフラ事業を打ち出し、さらに国防費を大幅に増やそうとしている。当然のことながら、トランプ大統領の“身内”である共和党保守派に多いとされている「小さな政府」を掲げている勢力や、外交問題評議会(CFR)系から反発を受ける恐れがあるので、そうした勢力への対処といった面もあるのではないか。
 いうまでもなく、それにより日本側が大幅に増発される米国債をいかに引き受けていくかが大きな課題になり、日銀が外債購入を決めることも視野に入っていることが容易に予想されるところだ。

 これからコンドラチェフ・サイクルの上昇局面では世界覇権国である米国が国防費を大幅に増額していき、それを世界最大の貯蓄超過国である日本勢が引き受けていくことで日米マネタイゼーション政策が確立されていくことにより、デフレ状態が克服されて世界経済は成長軌道の恩恵にあずかれるだろう。
 しかし、いずれ米国の累積債務がさらに“途方もない”ほどに膨れ上がっていく一方で、いかに日本は世界でも群を抜く貯蓄超過国であるとはいえ、それもやがて限界を迎えざるを得ない。それにより世界経済はコンドラチェフ・サイクルが下降局面に転じるとともに、1930年代の再来となる「暗黒の時代」に転落していくのだろうが、それはまだかなり先の話である。


 今週はこれで終わりになります。
 来週はまた6日月曜日から掲載していくのでよろしくお願いします。
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

17894176

Author:17894176
永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。