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北朝鮮の暴走で中国が苦しい立場に

ポイント
・北朝鮮の暴走が止まらない状態にあり、ICBMや核兵器の小型化の開発、実用化に猛毒ガス「VX」が使われるなどしたことで、米国が攻撃するとの観測がくすぶっている。
・米国は中国が北朝鮮にしっかり圧力をかけていないと批判しているが、中国としては朝鮮反動北部は重要な緩衝地帯であり、同国の現体制を絶対に崩壊させられない事情がある。



止まらない北朝鮮の暴走

 先週は中国で5日から開催されている全国人民代表大会(全人代)で、今年の成長率目標が6.5%に引き下げられたうえで当面の経済政策の方針が発表された。また翌6日には北朝鮮がミサイル4発を発射し、さらにドナルド・トランプ米大統領が新たな入国禁止措置の大統領令に署名した。週末10日には韓国で憲法裁判所が朴槿恵(パク・クネ)大統領を罷免する判決を下した。
 いろいろ重要なことがあったが、このうち中国の全人代の決議内容についてはそのうち採り上げることにして、今回は北朝鮮問題について考えることにする。

 それにしても北朝鮮の“暴走”が止まらない。
 今年に入ってからだけでも、1月1日の「新年の辞」で金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長が「大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試験発射の最終段階にある」と述べて米国を挑発した。
 そして2月12日(米国の現地時間は11日)には、安倍晋三首相が訪米してトランプ米大統領とゴルフをしている最中にミサイルを発射した。
 さらに翌13日には、マレーシアのクアラルンプール国際空港で金委員長の異母兄の金正男(キム・ジョンナム)氏が殺害された。
 そしてつい最近の6日には再び日本海に向けてミサイル4発を発射し、うち3発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾した。そのうち1発は能登半島の北北西約200キロの海域に落下し、これまでのミサイル発射で最も日本本土に接近したものとなった。

 巷間では、米国が北朝鮮を攻撃するとの観測がくすぶっている。
 6日にミサイル4発を発射したのは、昨年の同じ時期にもスカッド・ミサイル2発を日本海に発射しているように米韓合同軍事演習に反発したものであとはいえ、今回は北朝鮮側が明確に在日米軍への攻撃の訓練であると宣言している。米国に届くICBMの開発や実用化の時期も近いとされており、ミサイルに搭載可能な核兵器の小型化も時間の問題か、既にそれに成功している可能性すら指摘されている。さらに金正男氏が殺された際には猛毒ガス「VX」が使用されたが、これをミサイルに搭載すれば無差別的なテロ活動に活用できる。
 それにより、金正恩委員長は米国の“虎の尾を踏んだ”といったことがいわれている。


中国は絶対に北朝鮮の現体制を崩壊させられない

 米国の批判の矛先は中国にも向けられている。トランプ大統領が「中国が望めば簡単に出来る」と述べるなど、北朝鮮が暴走しているのは中国がしっかり同国に圧力をかけていないからだとして非難している。
 これに対し、王毅外相は2月17日に「直接の当事国である米国と北朝鮮が速やかに政治決断をすべき」だとして、中国による関与には限界があることを暗にほのめかした。いくら北朝鮮を抑え込むように要請されても、こちらには採るべき手段は限られたものでしかないのだから、米国と北朝鮮が直接解決すべきだとして“匙(さじ)を投げた”といえる。

 中国は国連の安全保障理事会の制裁決議を履行するにあたり、既に2月19日から年内いっぱいの予定で、北朝鮮の重要な外貨獲得手段である石炭の輸入を全面的に停止している。北朝鮮は原油その他のエネルギーの供給をほぼ全面的に中国経由に依存しているため、確かにその停止をほのめかすことで中国は大きな影響力を行使できなくはないはずだ。
 しかし、北朝鮮の現体制が崩壊して韓国主導で朝鮮半島が統一されると、中国としては隣国に核兵器を持つ親米国が誕生することになる。しかも、中朝国境に米軍が駐留することになり、安全保障上の観点からも中国としてはこうした状況は容認できない。さらには、それにより大量の難民が国境を越えて中国領内に押し寄せると、首都北京にまでそれほど距離がないだけに、沿海部の大都市の治安が乱れて共産党による統治体制すらも危機的な状況に陥りかねない。
 中国にとって朝鮮半島北部は重要な緩衝地帯なのであり、いかに北朝鮮が“言うことを聞かない駄々っ子”だとしても、その現体制を見捨てるわけにいかないのである。

 特に中国の共産党政権にとって厄介なのは、この最後の難民の問題である。中国としては地方の農村部で一揆的な抵抗が高まる限りにおいては特に問題ではなく、“極端な話”として“恐怖政治”を繰り広げることで“皆殺し”にすれば済む話なのである。
 ところが、まさに天安門事件の再現とでもいうべき沿海部の都市部で大規模な暴動が起こると、そうした鎮圧ができないために非常に厄介なのである。だからこそ都市部では絶対に金融危機を引き起こしてはならないのであり、農村部から出稼ぎに来ている「農民工」たちについても、当局は都市部で新たな職が得られないような人たちをできる限り地方に送り返そうとしている。
 以前、共産主義青年団(共青団)系の李克強首相が経済政策の主導権を握っていた際には、農村民と都市住民の戸籍の一本化による改革が謳われていた。しかし、「核心」と謳われるようになった習近平国家主席が主導権を握るようになった現在では、そうしたことがいわれなくなったのはこのためだ。


 明日は北朝鮮問題について、ミサイル発射や核実験をどうして繰り広げることができるかといった、より本質的な問題に迫ります。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
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