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超弱気なNFP以外は強気な内容となった米雇用統計

ポイント
・今回の米雇用統計の発表でNFPの増加幅が非現実的なほど低水準だったのは、過去3カ月間の平均値が高水準にならないようにバランスを取って細工をされた公算が高い。
・NFP以外では失業率の大幅な低下をはじめ長期失業者やパート勤務者も大幅に低下しており、過去3カ月分の平均値も利上げ推進路線に変更がない水準を維持している。



衝撃的なほどに低水準だったNFPの増加幅

 次に先週末7日に発表された3月の米雇用統計について概観する。
 今回、かなり意外感をもって受け止められたのが、非農業部門の雇用者数(NFP)の前月比の増加幅がわずかに9万8,000人と10万人を切る水準にとどまり、事前予想の18万人を大きく下回ったことだ。しかも、前月分も23万5,000人から21万9,000人に、前々月分も23万8,000人から21万6,000人に引き下げられ、合わせて3万8,000人も下方修正された。
 その一方で、失業率は4.5%と前月や事前予想を0.2ポイントも下回るかなり強気な数値になった。発表された直後、外国為替市場ではNFPの意外な数値に衝撃を受けてドル安に振れたが、すぐに失業率の結果が好感されてドル高傾向に転じた。

 このNFPの“超弱気”な結果については、まずサンプリング対象である3月12日の週を含む週間失業保険申請件数が26万1,000件と、最近の傾向からはかなり多めであったことが指摘できる。
 また、3月中は米国では悪天候に見舞われることが多かったことが影響したことも考えられる。実際、天候要因に最も敏感に反応する傾向が強い建設業の部門が、前月に5万9,000人も増えた反動もあってわずかに6,000人の増加にとどまったあたり、そうしたことをうかがわせるといえよう。
 とはいえ、いかに特殊要因や統計上の誤差その他から低めに出ていた可能性があるとはいえ、10万人を切る水準はあまりに実態とかけ離れていると言わざるを得ない。実際、米労働省が発表しているこの雇用統計よりも実態を反映しているとされるオートマティック・データ・プロセッシング(ADP)雇用統計は実に26万3,000人に達しており、著しく乖離している。

 どうして非現実的といい得るほどにかなりの低水準の数値になったのかというと、まず考えられるのが過去2カ月間の水準を考慮してバランスを取ったというものだ。
 雇用統計の中でも特にNFPはかなりブレが大きいため、市場の動きが当月分の数値に大きな影響を受けるのとは裏腹に、多くの専門家は過去3カ月分の平均値を重視している。ところが、今回は前月分、前々月分とともに23万人台(修正前)とかなり高水準だったため、実態よりかなり低めの数値を出すことでバランスをとったことが考えられる。
 そうしなければ、ドナルド・トランプ政権が財政政策を打ち出す以前から、市場が“前のめり”で利上げやバランスシートの縮小の加速化を織り込んでいき、信用不安が強まる恐れがあるからだ。


NFP以外ではタカ派的な内容がそろう

 もっとも、今回の非現実的といい得るほど超弱気なNFPの内容と前月、前々月分の下方修正を受けても、それでも過去3カ月分の平均値は17万8,000人に達している。ジャネット・イエレン米連邦準備委員会(FRB)議長が失業率が低下していかない水準として提唱している10万~12.5万人を大きく上回っており、「緩やかな」利上げの推進やバランスシートの縮小に向けた動きが阻害されるわけではない。
 今回のNFPの結果を受けて、ハト派的な金融アナリストの間ではFRBの利上げ推進路線が遠のいたといったことや、それを積極的に推進していく必要はないといった見解が散見されるが、見当違いも甚だしいと言わざるを得ない。

 実際、今回の雇用統計の結果は、このNFP以外ではどの項目もタカ派的な内容になった。前記のように失業率は前月や事前予想を0.2ポイントも下回ったが、労働参加率が63.0%と前月と変わっていないのでかなり強気な内容といえる。
 それ以外にも最近、市場で注目度の高い平均時給の伸びも前年同月比2.7%と前月と変わっていないとはいえ、趨勢としては確実に高まってきている。
 さらに、完全失業者に経済的理由によるパート労働者や働く意欲があるのに求職をやめた人も加えた広義の失業率とされる不完全雇用率(U6失業率)は、8.9%と前月から0.3ポイントも低下している。半年以上にわたる長期失業者も168万7,000人と前月から11万4,000人も減り、経済的理由でのパート勤務も553万3,000人と同17万1,000人も減少している。米国の労働環境が抱えている構造的な問題も確実に和らいできていることを端的に示しているといえよう。


 明日以降の3日間は週末の米中首脳会談とそこに至る連日の地政学的リスクを関連付けて考察していきます。
 よろしくお願いします。
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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
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