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今回のシリア問題の黒幕と習近平を後押しする勢力

ポイント
・シリアでのサリン空爆はアサド政権軍の仕業とは考えにくく、ヌスラ戦線やISの背後にいるイスラエルや米民間軍事企業、巨大な米財団の“影”が見え隠れする。
・米軍がアサド政権軍の支配地域に懲罰的な空爆を行ったことで当然のことながら米ロ関係がかなり悪化しているが、本当は裏側では密接につながっている可能性が高い。
・米政権内部ではバノン首席戦略官がNSCの常任委員からはずれ、職業軍人やその背後の軍産複合体、共和党系ネオコン派といった好戦的な勢力の影響力がさらに強まっている。
・米国の巨大な財閥系は中東で「熱戦」を繰り広げる一方で極東では「新冷戦」構造を構築していくにあたり、中国では習近平国家主席による専制権力体制の長期化を望んでいる。



サリン空爆の実行犯とその黒幕は?

 さらに米国側が中国側に強烈な“カウンター”を見舞ったのが、首脳会談を行っている最中にシリアに空爆したことであり、それにより北朝鮮にも本当に攻撃するという強烈な“脅し”になったのは間違いない。
 ただ、この空爆はその2日前の4日にシリアで反アサド政権軍の支配地域が空爆された際に化学兵器「サリン」が使用されたが、米政権はそれはバッシャール・アサド政権軍が引き起こしたものとして踏み切ったとしている。しかし、アサド政権軍がそうした化学兵器を入手できるはずがなく、ロシア軍から供給された可能性もないとはいえないが、実際にそうした化学兵器をドナルド・ラムズフェルド元米国防長官が深く関与しているスイスの軍需企業からロシア軍が手に入れるのも難しいはずだ。
 またそうした技術面だけでなく動機面からも、米国では当初、親ロシア的な姿勢を見せていたドナルド・トランプ政権が成立したことでシリアではアサド政権の立場が強くなったにもかかわらず、その同政権側からあえて自分たちの立場が悪くなるようなことをするわけがない。

 実際、このサリンによる攻撃はアルカイダ系の「ヌスラ戦線」が「イスラム国(IS)」に売り渡すために倉庫に積まれたものが攻撃されたことで拡散したものであるという。その攻撃をしたのがアサド政権軍だとしても、サリンで被害を負わせることを目的とした攻撃であるとは考えられない。
 いうまでもなく、これらのスンニ派系イスラム原理主義的な戦闘勢力の背後には、イスラエルや米民間軍事企業、巨大な米国の財団が控えており、そこにはトルコの諜報機関も介在している。このため、そうした化学兵器がこれらの戦闘勢力に、さらには2月13日に金正恩(キム・ジョンウン)第一書記の異母兄の金正男(キム・ジョンナム)氏が殺害された際に「VX」が使用されたように、北朝鮮にも渡っていてもおかしなことではない。
 しかも、そうした疑惑の解明を待たずに、すぐに米軍が“懲罰的”な空爆に踏み切ったのも不可解である。どのように考えても、この間の一連の動きはイスラエルや米共和党系新保守主義(ネオコン)派、及びその背後に控えている軍産複合体による仕業としか思えない。


表面的な関係の悪化とは裏腹に実はつながっている米ロ両国

 今回の米軍によるシリアへのミサイル発射を受けて、当然のことながら表向きロシアが激しく反発している。米軍は今回の空爆にあたり、当初はロシアには事前に通告していないと報道されており、米ロ関係が決定的に悪化していくとの論調が主要な報道機関では支配的になっている。しかし、本当は米国側はウラジーミル・プーチン大統領本人には通告していたようであり、にもかかわらずロシア側(正確には大統領府)はシリアで空爆に対する必要な防御措置を取らなかった。
 そうしたあたり、米トランプ政権では2月13日にマイケル・フリン大統領補佐官(当時)が辞任するなど、親ロシア的な勢力が排除されたとされているが、実際には両国は裏側ではしっかりつながっている可能性が高い。実際、ロシア側は表向き米国に対して猛反発しながらも、セルゲイ・ラブロフ外相が「米ロ関係に取り返しのつかない悪影響を与えないことを期待する」と発言していることにそれがうかがわれる。
 それにより、米国との間で「対テロ」やISを攻撃するにあたり協調姿勢を模索しているが、そこで注目されるのが、シリアでのサリンによる空爆の前日3日にサンクトペテルブルクでISの犯行だとされている地下鉄テロ事件があったことだ。
 このように考えると、この事件が引き起こされた意義や背後事情をうかがい知ることができるだろう。


米政権ではネオコン派の影響力が一段と強まる

 イスラエルやそれにつらなるネオコン派にとって最も重要なことは、自国を守るために米軍を中東に引きずり込むことだ。さらには、米軍やイスラエルが支援しているサウジアラビアを中心とするスンニ派の勢力に対抗するシーア派大国のイランの現体制を打倒することだ。今後、シリアでアサド政権軍を支援しているイランの革命防衛隊の勢力が浮かび上がるにつれて、米国ではイランへの攻撃に向けた動きが現実味を帯びておかしくない。
 米トランプ政権では、「オルタナ右翼」のスティーブン・バノン首席戦略官・上級顧問が国家安全保障会議(NSC)の常任委員からはずされた。それにより、そのNSCでは職業軍人出身のハーバート・マクマスター大統領補佐官が、また政権内部ではレックス・ティラーソン国務長官やジェームズ・マティス国防長官ら主要閣僚を率いるマイク・ペンス副大統領が、さらにはホワイトハウスでは強固なユダヤ教徒であるジャレッド・クシュナー上級顧問の影響力が一段と強くなることが避けられない。
 職業軍人やその背後の軍産複合体、共和党系ネオコン派の影響力がさらに強まり、米トランプ政権は一段とグローバル的で好戦的な性格を強めていきそうだ。


習国家主席が長期的に専制支配体制を確立するのが望ましい勢力

 そこで米中首脳会談に話を戻すことにする。
 トランプ政権ではロスチャイルド財閥系の“ハゲタカ”だったウィルバー・ロス商務長官が、“究極的”には資本取引の自由化を追求していくにあたり、中国に対して通商問題で強硬な姿勢を見せている。
 これに対し、ロックフェラー財閥系は中国に対して融和的だが、それは同財閥直系のハゲタカであるブラックストーン・グループのスティーブン・シュワルツマン最高経営責任者(CEO)が習近平国家主席を取り込んでいるからだけではない。
 より重要なのは、米国を世界覇権国とさせているほどに圧倒的な優位を保っている石油産業や軍需産業にとっては、中東では従来通り「熱戦」を繰り広げる一方で、極東では中国と「新冷戦」構造を構築していくにあたり、習国家主席による専制支配体制が長期的に続く方が望ましいことだ。

 中国では特に今秋の共産党大会では5年に一度となる幹部人事が決まるなかで、習国家主席としては自身の直系の若手政治家を次期政治局常務委員に昇格させることが不可能であるだけに、難しい立場に立たされている。
 そこで昇格が有力視されている2人の次世代の政治家のうち、胡春華広東省党委員会書記の背後の共産主義青年団(共青団系)の勢力に対しては、李克強首相を脅して何度も自身を「核心」と呼ばせることで服従心を周囲に印象付けさせ、また常務委員に昇格するのが確実な李源潮国家副主席を何度となく攻撃した。さらには、胡書記の“先輩”である周強最高人民法院院長にも、それまで主張していた「司法権の独立」論を撤回させて「核心の下での司法制度」を表明させることで完全に服属したことを印象付けし、胡書記を追い詰めている。
 また「上海閥」から出ている次世代組の孫政才重慶市党委員会書記に対しても、その部下の何挺重慶市副市長を腐敗容疑で検挙することで打撃を与えようとしている。ただそれだけでなく、やはり大きな焦点は習国家主席が兼務している共産党総書記の地位をさらに1期5年延長することに成功するかどうかだ。


 今週はいつもより1回多く、明日もこの続きを掲載します。
 より為替相場に直接的に関係することについて考察していきます。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。