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中国はじめ極東に対する米国の各勢力の利害を考察する

ポイント
・米国で今回の北朝鮮問題で最も強硬なのが欧州系財閥の系列であり、この問題を利用して資本取引の自由化を含む大幅な市場開放を求めている。
・その背景には、この欧州系財閥は中国が天文学的な債務を抱えている実態が明らかになったことで同国との提携を諦め、米系財閥と提携する路線に方針転換したことがある。
・米系財閥は習近平国家主席を地取り込んでいることもあってそれより融和的であり、あまりに中国を追い詰めて現政権が動揺すると不都合な事態になるのでそれを望んでいない。
・軍需産業や親イスラエル派もそれと同様であり、特に後者はあまりに米国の安全保障政策が極東に傾くとイスラエル防衛のために中東での戦力が軽減されるので望んでいない。



最も中国に対して強硬な姿勢を見せている欧州系財閥

 そもそも、ドナルド・トランプ政権を構成している勢力のうち、最も中国に対して市場開放を強要しているのは欧州ロスチャイルド財閥の系列だ。
 この財閥はかつて、米ロックフェラー財閥の世界覇権に対抗して「一帯一路」構想を唱えていた習近平国家主席が統治している中国と提携し、同国の豊富な外貨準備を利用してユーラシア大陸でインフラ開発を推進し、巨大な経済圏を構築しようという遠大な構想を立てていた。中国主導で設立されたアジアインフラ投資銀行(AIIB)に米国の反対を押し切って英国に出資させ、それにより“雪崩を打って”他の欧州諸国にもそこに参加させた背景には、このロスチャイルド財閥の意向があったわけだ。
 ところが、やがて中国は人類史上、未曾有の天文学的な規模の債務を抱えていることが明らかになるにつれて、この欧州系財閥は同国との提携を諦め、米ロックフェラー財閥と提携する路線に方針転換した。その時点で米国は日本とともに、人民元が国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨への採用を巡り、それに賛成する姿勢に転じた経緯がある。
 それにより、この欧州系財閥は中国に対して強硬に市場開放を求め、特に資本取引の自由化を実現させることで同国からの資本流出をさらに加速させながら、同国の国有銀行や代表的な国有企業を破格の安値で次々に買収していく路線に転換したわけだ。米国の世界覇権が永久に続くわけがなく、いずれ中国にその地位を譲る時が到来すると見込まれているなかで、長期的な観点から米ロックフェラー財閥に対して優位な地位に立とうとしたといえる。

 実際、この欧州ロスチャイルド財閥からトランプ政権に入閣している“ハゲタカ”出身のウィルバー・ロス商務長官が、中国に対して極めて強硬な姿勢を見せているのはこのためだ。
 トランプ政権の通商関係の閣僚としては、大統領は当初、自身が尊敬している“筋金入り”の保護貿易主義者であるピーター・ナバロ・カリフォルニア大学教授を、商務長官と米通商代表部(USTR)を統括する通商問題の“最高司令塔”となる国家通商会議の委員長に就けようとして失敗した。そのあたりの経緯は、最近になって“筋金入りの白人至上主義者”の「オルタナ右翼」であるスティーブン・バノン首席戦略官・上級顧問が国家安全保障会議(NSC)の常任委員をはずされ、さらには更迭もささやかれるなど影響力を大きく後退させているのと通じるところがある。
 また、ロバート・ライトハウザーUSTR代表もまだ議会で承認を得ておらず、正式にその地位に就いていない。そうしたなかで、ロス商務長官だけが正式にその地位に就いているのは、そこにロスチャイルド財閥の影響がうかがわれるといえるだろう。


中国に対してより融和的な米系巨大財閥

 これに対し、米ロックフェラー財閥は欧州ロスチャイルド財閥ほど中国に対して強硬な姿勢を示しておらず、それに比べると融和的である。
 それは一つには、この米系財閥直系のハゲタカであるブラックストーン・グループのスティーブン・シュワルツマン最高経営責任者(CEO)が習国家主席を完全に取り込んでいることがある。最高権力者を取り込んでいる以上、慌てて不良債権処理を推し進める必要はないのであり、むしろ急激にそれを推進することで中国の現政権が動揺するとかえって不都合な事態になってしまう。

 二つ目は、米国では中間層の没落から従来のように世界の「一大需要基地」としての役割を担うのが難しくなり、また多国籍企業も以前のようにグローバル生産体制を機能させることで高収益を上げることができなくなっているなかで、この米系財閥は巨大な軍需を創出することで世界経済を浮揚させようとしていることがある。
 それにより中国との間で「新冷戦」構造を構築していくにあたり、習国家主席が専制権力体制を強化し、その永続化を達成させるのが好都合である。そのためにも、中国で急進的に不良債権処理を推進させることで現政権が動揺するのは好ましくないのである。


あまりに米軍の重心が極東方面に傾くのは好ましく思われない

 またこうした巨大な財閥とは別に、軍需産業やシオニストに代表される親イスラエル派の利害も考察する必要があるだろう。
 軍需産業としてはいうまでもなく「平和の時代」が続くことは“天敵”なのであり、戦乱その他混沌(カオス)とした状態が続くことが望ましいはずだ。それは実際に戦争状態が起こるだけにとどまらず、大国同士で軍拡競争が繰り広げられても構わないといえる。
 この軍需産業は米欧どちらの巨大財閥も抱えているが、米国が世界覇権国としての地位を維持しているのは石油産業とともに強大な軍事力に負うところが大きいことから、米ロックフェラー財閥の方がよりその色彩が強い。
 ただ、いうまでもなく軍需産業にとっては、ロックフェラー財閥の意向を受けたその時々の政権の性格に左右される。バラク・オバマ前政権をはじめ、以前にはジミー・カーター政権やリチャード・ニクソン政権のような緊縮財政政策を推進した政権下では「受難の時代」を迎えることになる。

 トランプ現政権で大統領の娘婿のジャレッド・クシュナー上級顧問を送り込んでいるユダヤ教徒の親イスラエル派の最大の関心事は、イスラエルを防衛するために米軍を中東に引きずり込むことである。そのためには、その中東で紛争を多発させて戦乱が起こりやすい状態にする必要がある。
 そのため、親イスラエル派と軍需産業は利害が一致することが多く、同じような系列と見なされることが多い。

 ただ考えなければならないのは、中国や北朝鮮といった極東方面についての利害関係には微妙なところがあることだ。基本的に親イスラエル派は中国に敵意を抱いているが、それは同国がイランやシリアに核開発技術を教授したことで、イスラエルを危機的な状況に陥れたことに対する“憎悪”によるところが大きいようだ。
 ただし、米国の外交・安全保障政策の関心があまりに極東方面に向かうと、米軍の戦力がその方面に集中的に向かうことで中東方面が削がれて手薄になってしまうので、あまり快く思わない傾向がある。実際、あまりに極東問題に米国の外交・安全保障政策の重心が傾くと、中国や北朝鮮に対して融和的な姿勢を見せたり、財政再建路線を重視して国防費の削減を主張している勢力とも一時的に結びつくことがある。
 実際、90年代のビル・クリントン政権下で北朝鮮の核開発問題が高まり、武力行使の可能性がささやかれた際に、実質的に外交問題評議会(CFR)系を率いていたズビグニュー・ブレジンスキー元大統領補佐官の“傀儡”であるカーター元大統領や、親イスラエル左派のマデレーン・オルブライト国務長官(当時)が事態の打開に向けて北朝鮮を訪れたのはこのためだ。


 今週の最後となる明日も昨日からの連載の続きを掲載します。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
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