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仏大統領選挙の背後に米国での各勢力の主導権争い

ポイント
・仏大統領選挙では終盤になって“四つ巴”の争いになったが、結果は当初の予想通りの結果になり、市場もこれを大いに好感している。
・極右候補のルペン党首には米国では以前には親イスラエル派が支援していたが、トランプ政権でロシアとの関係の悪化からマクロン前経済相が有利な状況に。
・マクロン前経済相には米CFR系が支援していたがネオコン派はそれでは不都合なので、終盤にメランション党首やフィヨン元首相が支持率を伸ばしたのはこうした事情がある。



終盤で四つ巴で混沌とした状態になった仏大統領選挙

 市場では先週までの北朝鮮問題に加え、23日に行われたフランスでの1回目の大統領選挙が注目され、さらに26日にトランプ米大統領が公表する税制改革案の内容にも大きな関心が集まっている。
 このうち仏大統領選挙については、少し以前までは1回目の投票で極右政党である国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首と無所属(以前は社会党に所属)で中道派のエマニュエル・マクロン前経済産業デジタル相が上位2位以内を占め、5月7日に行われる決選投票でマクロン前経済相が勝利するとの見方が有力視されてきた。
 ところが、選挙戦の終盤になって中道右派の共和党の公認候補であるフランソワ・フィヨン元首相と、左翼政党として共産党とも連携している急進左派の左翼党のジャンリュック・メランション党首も盛り返して“四つ巴”の争いになっているとされた。

 欧州連合(EU)や金融市場関係者、欧州系多国籍企業が恐れたのは、反EUを掲げる極右主義的なルペン党首と左翼的なメランション党首が(ただし、ルペン党首が移民排斥を唱えているのに対し、メランション党首はこの問題については寛容である)1、2位を占めて決選投票に進むことだった。
 その意味では、おそらくこうした勢力にとって最も“マズイ”シナリオは、不祥事から出遅れていたフィヨン元首相が追い上げたことでマクロン前経済相の票を蚕食してしまい、親EU的な中道派の候補者が“共倒れ”になることだったのだろう。
 結局、こうした懸念は杞憂に終わり、1回目の投票では当初のシナリオ通りルペン党首とマクロン前経済相が勝ち上がった。しかも、マクロン前経済相の得票率が上回ったことから、5月7日に行われる決選投票ではルペン党首が勝利する可能性が極めて小さくなっている。市場もこれを交換し、この選挙結果を受けて世界的に株高が上昇しており、外為市場では円安やユーロ高が進んだ。
 ただ、今回の選挙については事後検証にはなるが、次の点を指摘する必要があるだろう。

 まず、大統領に就任したら英国の後を追ってEUからの離脱の是非を問う国民投票を実施することを提唱しているルペン党首にはロシアが支援していることが知られているが、以前には米国の親イスラエル右派もより強力に後押ししていたことだ。これは、昨年の大統領選挙でドナルド・トランプ候補にロシアに加え、「ラスベガスのカジノ王」と呼ばれており、米国の共和党だけでなく、イスラエルの保守政党にして長期政権を維持しているリクードに巨額の献金をしているシェルドン・アデルソン氏も支援していたのと同じようなものだ。


米ロ関係の行方が仏大統領選挙にも影響

 とはいえ、米国でトランプ政権が成立して間もなく、マイケル・フリン大統領補佐官(当時)が更迭され、さらには今月6日には化学兵器「サリン」を使用したことに対する“懲罰”の意味でシリアのバッシャール・アサド政権軍にミサイルを発射したこともあり、少なくとも表面的にはロシアとの関係が急速に悪化している。
 その背景には、一つにはバラク・オバマ前政権の政策を“180度”転換して核保有量を増やしていくことを目指すにあたり、表向きロシアと対立する必要があることが指摘できる。またもう一つが、これからイスラエルを防衛するためもあって中東に大戦火を引き起こし、そこに米軍も積極的に関与していくには、同様にロシアと反目していた方が有利であることも指摘できる。いうまでもなく、その背景には軍需産業や親イスラエル右派の意向があるわけだ。
 今回のフランスの大統領選挙を巡る情勢で大事なことは、以前にはルペン党首が有利な選挙戦を展開していたのが、米ロ関係が悪化したことでマクロン前経済相が優位な情勢になり、それがつい最近まで続いたことだ。ただいうまでもなく、それは親イスラエル右派や共和党系新保守主義(ネオコン)派にとっては都合が悪いものである。


米政権内部の主導権争いが仏大統領選挙戦にも影響

 次に指摘すべきなのは、最近まで当選することが有力視されてきたそのマクロン前経済相を米国側で支援していたのが、反イスラエル的で国防費の削減を主張する傾向が強い外交問題評議会(CFR)系や、それと提携している国務省官僚群の勢力であることだ。
 このことを説明するにあたり、前回12年の大統領選挙の状況から見る必要がある。そこではCFR系が社会党から出ていたフランソワ・オランド現大統領を支援していたが、選挙戦で共和党系ネオコン派に支持されてジョージ・W・ブッシュ政権と良好な関係にあった二コラ・サルコジ前大統領に勝利できたのは、米国では当時のオバマ政権下で財政再建を優先して国防費を大幅に削ってきたCFR系が主導権を握っていたことと大いに関係がある。
 ところが、現在ではオランド政権の支持率がかなり低調な状態にあるが、それはサルコジ前政権もそうだったように経済状態が低迷しているからだけではない。米国でオバマ前政権の後期にヒラリー・クリントン国務長官(当時)を中心とする民主党系ネオコン派が、そしてトランプ現政権では共和党系ネオコン派が主導権を握るようになったからだ。

 こうした情勢に対し、米CFR系はフランスでの大統領選挙を巡り、オランド現大統領の出身母体である社会党の対抗政党である共和党での予備選挙で、まず国務省官僚群につらなる中央情報局(CIA)の工作員がサルコジ前大統領の悪評を流して支持率が上がらないように画策したようだ。そして、それにより当選して共和党の公認候補に決まったフィヨン元首相に対しても、勤務実体がなかった夫人への不正給与疑惑を持ち出して批判的な報道を繰り広げることで打撃を与えた。
 その一方で、オランド政権の支持率が低迷した状態が続いたことから社会党から候補者を擁立するのを諦め、同党を離党していながら若さを“売り物”にして一定程度の人気を得ているマクロン前経済相に“白羽の矢”を立てて支援していたわけだ。

 このように考えると、以前にはルペン党首が有利に選挙戦を展開し、その後つい最近までマクロン前経済相が優位な状況が続いたなかで、投票日の直前にはフィヨン元首相も支持率を回復させて“四つ巴”の混戦状態になったのも、その背後事情はおおむね推測できるだろう。
 現在、米トランプ政権を介して主導権を握っている親イスラエル右派や共和党系ネオコン派としては、一時的にロシアと反目する必要があるとはいえ、CFR系が支援しているマクロン前経済相が当選するのはあまり望ましくないのである。選挙が行われる直前の20日にパリでテロ事件が引き起こされたのも、CFR系に支援されているマクロン前経済相の当選を妨害するために、親イスラエル派が扇動していたことは容易に推測できる。「イスラム国(IS)」は米国の巨大な財団が支援し、イスラエルが戦闘行動を指揮しているのだから、そうしたことは当然考えられてしかるべきである。


 明日はこの続きを掲載します。
 その後、週末2日間はもう一度、北朝鮮問題を採り上げます。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。