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米各勢力としても微妙な状況にある独仏両国

ポイント
・今回の仏大統領選挙では米トランプ政権で主導権を握っている勢力は表面的にロシアと対立する状態を続けるにあたり、やむを得ずマクロン候補に相乗りするしかなかった。
・米トランプ政権で主導権を握っている勢力としては、ドイツでもフランスと似た状況になっており、国防費の増額を拒否しているSPDが勢力を強めている。



ドイツでもある意味では似た状況に

 今回のフランスでの大統領選挙を巡る情勢を考察するにあたり、隣国にして欧州連合(EU)最大の中核国であるドイツでも9月24日に総選挙を控えているなかで、フランスと同じような状況になっている。
 親イスラエル右派や共和党系新保守主義(ネオコン)派はアンゲラ・メルケル政権を嫌っており、同政権への支持率が低迷しているのは一見、好ましいように見える。しかし、ドイツではそれにより反EU・反移民を掲げている右翼政党の「ドイツのための選択肢(AfD)」が支持率を伸ばしているとはいえ、フランスのように政権を獲得する可能性が出てくるまで勢力を拡大するには程遠い状態だ。むしろ、その結果としてメルケル首相の母体であるキリスト教民主同盟(CDU)より、連立を組んでいる二大政党の一角の社会民主党(SPD)の支持率がやや上回っているとの調査結果が出ている。
 実際、米ドナルド・トランプ政権が防衛費の公平な負担を求めているなかで、北大西洋条約機構(NATO)加盟国は国防費の支出を国内総生産(GDP)の2%以上にすることを目標に掲げている。メルケル首相は3月17日に行われた米独首脳会談で、通商問題では平行線をたどったものの、防衛費の負担の問題では24年までに目標とする2%に到達させることを宣言した。いかに望ましくない政策であっても、NATO加盟国の間で結ばれた国際合意はしっかり守るというわけだ。
 ところが、マルティン・シュルツ新SPD党首はこれを明確に拒絶しており、米国の要求に従わない姿勢を示している。これは、まさにCFR系が望んでいる構図にほかならない。


ロシアと対立しているなかでのEU解体は望ましくない

 ただ、話題を今回のフランスの大統領選挙に戻すと、親イスラエル右派や共和党系ネオコン派としては、今回の大統領選挙の1回目の投票を控えて、フランソワ・フィヨン元首相が当選すれば最も望ましいとはいえ、中道派の中ではそれでもまだエマニュエル・マクロン前経済産業デジタル相の方が支持率で上回っていただけに微妙なところがあった。あまりにフィヨン元首相を支援し過ぎて中道派の候補者が共倒れになると、極左派である左翼党のジャンリュック・メランション党首と争うことになる決選投票では、極右政党である国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首が当選する可能性が高まるからだ。
 親イスラエル右派や共和党系ネオコン派、及びその背後に控える軍需産業系は極東では表面的に北朝鮮問題が緊迫化しているとはいえ、基本的には中国と「新冷戦」構造を構築する一方で、中東で大規模な「熱戦」を引き起こそうとしているなかで、当面はロシアとは対立した状態を続けようとしている。そうした状況では、EUの中核国であるフランスで極右政権が成立し、欧州が分裂して弱体化していくのは望ましくないのである。
 その意味では今回、親EU的なマクロン前経済相が次期大統領に就任する可能性が高まったのは、現在の米トランプ政権で主導権を握っている好戦的な親イスラエル右派や共和党系ネオコン派としても、“消去法的”にやむを得ない選択だったのだろう。いずれにせよ、これにより米国の東方では表面的にロシアと対立した状態が続き、米トランプ政権による中東での強硬路線を後押しすることになりそうだ。足元で緊迫化している北朝鮮問題が一段落すれば、イランの核開発問題が再燃していくだろう。


 明日、明後日はもう一度、北朝鮮問題について考察します。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
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