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足元と将来的な環境から見る北朝鮮問題の本質

ポイント
・北朝鮮問題は同国の軍を操り、米トランプ政権で主導権を握っている勢力による“自作自演”“ヤラセ”であり、その裏側の交渉で中国を通商問題で追い詰めるのがその狙いだ。
・現実問題として考えても、空母カール・ビンソンの不可解な動きに加え、実際に米軍が攻撃すると北朝鮮側が反撃してソウルは“火の海”になる恐れがあり、あり得ないといえる。
・米国は極東ではこれから中国との間で「新冷戦」構造を構築しようとしているので実際に戦闘が起こることはなく、また緩衝地帯としての朝鮮半島北部の役割も重要であり続ける。



北朝鮮問題は自作自演、ヤラセ

 次に、これまで当欄でしばしば採り上げてきたが、情勢が緊迫化していることもあり、先週に起こったことに新しい要素を加えたうえで北朝鮮問題を簡単に考察する。
 これまで、当欄では北朝鮮で主導権を握っており、相次ぐミサイル発射や核実験を強行している軍は親イスラエル右派や共和党系新保守主義(ネオコン)派に操られており、この勢力が今では米国でもドナルド・トランプ政権で主導権を握っているので、この問題はいわば“自作自演”“ヤラセ”による性格が強いことを指摘してきた。そのうえで、トランプ政権は中国側が体制の崩壊は絶対に受け入れられないことを承知のうえで、その中国に対して北朝鮮向けの原油の供給の削減・停止を強要し、それを外交取引の手段に利用することで、その裏側では通商問題で大幅な譲歩を求めていることを指摘した。
 そもそも、米国は中東では「対テロ戦争」を拡大し、さらにはイランの核開発問題を再燃させることで中東で「熱戦」を引き起こそうとしている一方で、極東アジアでは中国を相手に「新冷戦」構造を構築しようとしているが、それは実際に戦闘行為に出ないことを意味している。北朝鮮問題というのは、あくまでもトランプ政権が掲げている「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」により中国を追い詰めているなかで、その取引材料に使っているに過ぎないのである。

 そのうえで、以前の当欄では米国の各勢力の中国に対する戦略や姿勢の相違、その圧力の濃淡の差異について指摘した。
 最も強硬なのがトランプ政権の閣僚に通商交渉を担当することになるウィルバー・ロス商務長官を送り込んでいる欧州ロスチャイルド財閥の系列であり、中国に対して単なる通商問題での市場開放にとどまらず、資本取引の自由化まで要求している。そうすることで中国から資本流出を加速させて人民元相場を崩落させたうえで、国有銀行や代表的な国有企業を次々に買収しようとしている。
 これに対し、米ロックフェラー財閥は習近平国家主席を取り込んでいるので、あまりに中国を追い詰めることで経済情勢が悪化し、社会不安が高まることで現政権が動揺する事態を望んでいない。また中国を相手に「新冷戦」構造に持ち込むことを意図しているが、そのためには習国家主席が専制権力体制を強め、それが長期化することが望ましいことからなおさらであり、いうまでもなくこのことは軍需産業の利害と一致する。
 さらには、イスラエルを防衛するために米軍を中東に引きずり込もうとしている親イスラエル派としても、極東で地政学リスクがあまりに高まることで米国の安全保障政策の重心が偏り過ぎてしまい、中東方面が削がれて軽微になることを望んでいない。
 こうしたことはこれまで述べてきたことだが、非常に重要なことであり、何度指摘してもし過ぎることはないだろう。


北朝鮮への軍事攻撃は常識的にもあり得ない

 そもそも、米国はあくまでも北朝鮮情勢を緊迫化させて地政学リスクを煽っただけで、実際には攻撃するつもりがないことは、原子力空母カール・ビンソンがすぐに朝鮮半島に向かわず、インド洋で豪州の海軍と演習をしていたことに端的に表れている。
 ただここではそれだけでなく、もう少し補足説明をしておく。そもそも、仮に米軍が北朝鮮を攻撃するとすれば、ミサイルを発射していたり核実験を行っている場所が複数にまたがっているだけに、おそらくピンポイントでは済まずにかなり大規模な爆撃の実施が必要になるだろう。
 しかも、シリアのバッシャール・アサド政権軍にミサイルを撃ち込んでも反撃されることなく、またされても米軍や米国の重要な同盟国が反撃に遭って直接的に被害を受けることも考えられなかった。ところが実際に北朝鮮を攻撃すると、同国軍は韓国を攻撃できる迫撃砲を数千門もそろえているといわれているだけに、おそらくソウルは“火の海”と化してしまうだろう。

 また、金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長を標的にする「斬首作戦」といったこともいわれているが、これまで金委員長やその周辺は核実験を行う際に地下奥深くに掘り進んだ施設に避難していただけに、実際に米軍が攻撃するとそこに逃げ込むだろう。これまで複数の場所で核実験が行われていたことから、そうした非難場所がいくつもあると考えられるため、金委員長を探し出すのは困難である。
 それにより戦闘が長期化すれば、それだけ北朝鮮側からの反撃も強くまた長期にわたるので、韓国が受ける被害もそれだけ大きなものにならざるを得ない。朝鮮戦争が戦われた1950年代初頭とは異なり、もはや韓国は経済的にかなり発展しているので、そうした大きな犠牲を払ってまで米軍が攻撃を強行することは、常識的に考えてもあり得ないことだ。
(ただし、今回の北朝鮮を巡る緊張状態はヤラセによるものであり、また金委員長も今では“影武者”に置き換わっている可能性が高いので、こうしたことを考えても無意味なことではあるが、あくまでも常識的な観点でオーソドックスに考えたものである)


衝突を避けるためにも緩衝地帯が必要な状態に

 そもそも、どうして朝鮮半島が南北に分断されたのかというと、それまで植民地として統治していた日本が第二次世界大戦で敗れてその統治権を放棄したなかで、ヨシフ・スターリン書記長統治下のソ連が極東で南進政策を推進し、満州や朝鮮半島に進出してきたのに対し、米国がそれを封じようとしたからだ。この時、米国は中国での国共内戦で腐敗・堕落した中華民国の蒋介石総統率いる国民党政府を見限り、毛沢東率いる共産党軍を支援して中華人民共和国の建国を後押ししたが、その際に満州もその中国に編入させることでソ連の極東方面での動きを封じている。
 その後、米国とソ連との二大国の間で東西冷戦構造が激化していくが、朝鮮半島は極東におけるその重要な「緩衝地帯」として機能してきた。あくまでも「冷戦」というのは実際に大規模な戦闘行為が起こることなく、双方で軍拡競争を行いながら相手に対して優位な地位に立とうとし、それにより経済的に疲弊した状態に持ち込むことで、長期的な観点から相手が“自壊”していくことで最終的に勝利を得るものだ。
 米国やソ連といった大国同士で実際に激しい戦争が起これば地球そのものが“破壊”されてしまうので、「熱戦」ではなく「冷戦」にならざるを得ないのである。そのためには、両大国の軍が直接的に対峙していると、何らかの不測の事態から衝突が起こってしまい、それが連鎖的に波及して全面戦争に発展しかねないことから緩衝地帯が是非とも必要なのである。

 だとすれば、これから米国と中国との間で「新冷戦」構造が構築されていけば、以前と同じように朝鮮半島には緩衝地帯の存在が不可欠であるため、少なくともこの体制が終わるまでは半島の統一は望めないことになる。半島の人たちは歴史的な観点や同一民族に対する親近感から統一されることを願っているのだろうが(ただ、若年層の間では統一のコストを抱え込むことで経済・社会情勢が悪化してしまい、自分たちの生活水準が低下するのを恐れてそれを望まなくなっている人たちが増えているともいわれるが)、それはどうしても無理な話なのである。
 また今ではシリア問題もあって表面的に米国とロシアが対立しているが、中国との間で新冷戦構造がしっかり構築されていくと米国は再びロシアと提携していこうとするだろう。そうなると中国とロシアの軍勢が直接対峙するのを避けるためにも、緩衝地帯としてモンゴルの存在が重要になっていくのかもしれない。


 今週最後の掲載となる明日はこの続きを扱います。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
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