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まずいカードを切った中国と欧州系財閥の思惑

ポイント
・米国は通商問題に北朝鮮問題を絡めて圧力を強めており、中国側が原油の供給の削減に言及しながら海外送金規制の緩和を決めたのは、水面下での交渉が進展したものだろう。
・ただ、足元では人民元安圧力の後退から規制緩和に動けたが、これからFRBが利上げやバランスシート縮小を決めることでドル高圧力が強まると中国側は苦しい状況に。



水面下での交渉を巡り注目される二つの出来事

 さしあたり以前、当欄では北朝鮮の姿勢が、水面下での市場開放を巡る米国と中国との交渉の進展具合の“バロメーター”になると指摘した。
 そこで先週、注目すべき二つの重要なことが見られた。一つは中国から共産党機関紙の人民日報系の環球時報が連日にわたり、北朝鮮が核実験を強行すれば原油の供給を停止することを主張していることだ。実際に核実験が強行されれば米国は武力行使をちらつかせた強い姿勢で出てくるのが目に見えているので、それなら機先を制して自らそうした姿勢に出ようというものなのだろう。
 そこでもう一つ注目されるのが、中国政府は資本流出圧力に抗して昨年末に人民元の海外送金規制を強めたが、これを北京と上海で廃止したことだ。米国が為替操作や資本取引規制に対して批判を強めているなかで、実務面でも企業の海外送金が停滞していることで事業活動にも悪影響を及ぼしている。
 そうしたなかで、最近ではドル高圧力の減退とともに人民元相場の売り圧力も弱まり、それによる人民銀行の元買い介入も必要なくなったことで外貨準備が微増傾向に転じていることから、中国を代表する二大都市に限定して海外送金規制の緩和に動いたといえる。

 いうまでもなく、米ドナルド・トランプ政権が中国に対して通商問題に北朝鮮問題を絡めることで圧力をかけていたので、この二つの件はリンクしている。
 中国側としては北朝鮮で体制を崩壊させるわけにいかないが、かといって通商面や資本取引面での問題で大幅に譲歩するのも避けたいところであるため、体制が崩壊しない程度に原油の供給の削減に応じることで、通商面や資本取引面では限定的な譲歩にとどめようというものだ。
 こうした動きが表面的に出ているということは、それなりに水面下での米中間での交渉で進展があったということなのだろう。


再びドル高・人民元安圧力が強まると中国側にはマズイ状況に

 とはいえ、今ではドル安圧力が減退していることで海外送金の緩和措置を打ち出すことができたが、問題なのはこうした状態がいつまでも続くわけではないことだ。
 スタンレー・フィッシャー副議長が主導権を握っている米連邦準備理事会(FRB)執行部は年内に3回もの利上げを決める姿勢を崩しておらず、それに加えて年末頃からバランスシートの縮小を開始する意向も示している。それによりドル高圧力から人民元安圧力が再燃する可能性が高まらざるを得ない。
 それにより中国側が再び海外送金規制を強めて資本流出圧力に対処すれば、米国から相当な批判を浴びることを覚悟する必要がある。そうした米国側の批判を受け入れられないとすれば、今回、中国側はまずい“カード”を切ってしまったことになる。

 どうして今回、中国側がそうしたカードを切ったのかというと、欧州ロスチャイルド財閥の系列が資本取引の自由化を強硬に求めていることから、ある程度は“戦利品”を持たせる必要があったのだろう。欧州系財閥側も今回はこのあたりでひとまず中国側と妥協しても、いずれ再びドル高圧力を強めて人民元安問題を引き起こし、それによりさらなる資本取引の自由化を迫る意図があるのは十分に推測されるところだ。
 そうした動きは、短期的には中国で流動性のひっ迫から中小銀行の連鎖破綻が続出することが懸念されている5月を乗り切れば、再び出てきておかしくない。あるいはより長期的に見れば、今秋の共産党大会で習近平国家主席が意図した通り共産党総書記の地位をあと1期5年もの延長を勝ち取れば、米ロックフェラー財閥や軍需産業系としてもひとまず中国を必要以上に追い詰めるのを回避する必要がなくなるので、本格的なドル高・人民元安圧力が高まる場面が到来するのかもしれない。


 今週はこれで最後になります。
 次回はまた週明け1日月曜日から掲載していきます。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
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