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「100日計画」策定に向けて・・・・欧州系財閥の目論見と誤算

ポイント
・今回、公表された「100日計画」は米中首脳会談の際に策定が決まったものだが、1カ月強でまとめられたのは「一帯一路」国際会議の開催等に間に合わせた可能性がありそうだ。
・欧州系財閥は習近平国家主席が提唱していた「一帯一路」構想に相乗りして米系財閥に対抗しようとしたが、二つの理由からそれを断念せざるを得なかった。
・欧州系財閥は巨大な経済圏を構築するにあたり、中国の巨額な外貨準備をその信用基盤にしようとしたが、人民元はローカルな新興国通貨でしかなかったことがその一因だ。
・もう一つの理由は、市場経済が導入されていない中国経済が天文学的な債務を抱えている実態が明らかになったことであり、それにより欧州系財閥の目論見がいったん頓挫した。
・そこで欧州系財閥は米系財閥と提携し、人民元相場を崩落させ、中国に資本取引の自由化を受け入れさせて、国有銀行や代表的な国有企業を買収していく路線に転換したようだ。
・両財閥が提携したことで成立したのがトランプ政権であり、その陣営に偏狭なナショナリストを抱えていることが中国に圧力をかけるのに好都合だと判断されたことがある。



「100日」と謳いながら1カ月強でまとまった計画

 フランスに続いて先週は9日に韓国で大統領選挙が行われ、予想通り「ともに民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表が圧勝して新大統領に就任した。それ以外にも、先週は9日にジェームズ・コミー連邦捜査局(FBI)長官の解任が発表されたり、11日には米国と中国との間での貿易不均衡の是正に向けた「100日計画」の合意内容が公表された。14~15日に中国・北京で「一帯一路」国際会議が開催されたこともあり、将来的な中国の経済発展にやや注目が集まっている。
 そこで今回は、これまで当欄で述べてきたことと重複する部分も出てくるが、「100日計画」の合意内容とその意義、さらに週末にはFBI長官の解任の件も含めて今後の米国の政治情勢についても簡単に考察していく。

 この「100日計画」は4月6~7日に開催された米中首脳会談で策定が決まったものであり、その名称の通り100日をメドに公式な計画を練ることが計画されていたはずだった。
 にもかかわらず、首脳会談からわずか1カ月強でまとめられた背景には、「一帯一路」国際会議の開催に合わせた面が強いと思われる。さらにいえば、韓国で新大統領が誕生し、また19日にはイランで大統領選挙が行われることも微妙に関係している可能性がある。

 まず今回の「100日計画」での主な合意内容としては、中国側が牛海綿状脳症(BSE)問題で停止していた米国産牛肉の輸入を再開することが象徴的に採り上げられる音が多い。ただ最も重要なのは、米国の金融機関に格付けや電子決済、債券引き受け業務を開放することだ。
 これまで、米国側は表面的に差し迫った安全保障問題である北朝鮮問題を利用して“恫喝”し、さらにドナルド・トランプ大統領が習近平国家主席を“おだて殺し”にすることで水面下の交渉で中国側に対して強硬に要求してきたことで、表面的な合意内容とは裏腹に実際にはかなり突っ込んだ合意が成されていておかしくない。
 またそれとともに、米国側が中国側が推し進める「一帯一路」構想の重要性を認識することを表明し、実際に日本側とともにそこに代表団を派遣していることも重要である。


ひとまず欧州系財閥の目論見が頓挫

 ここからはこれまで当欄で述べてきたことと重複するが、重要なことであり、また論理的に展開していくうえで必要なのでもう一度述べることにする。
 当初、習国家主席主導で中国が提唱していた“現代版シルクロード構想”とでもいうべき「一帯一路」構想に前向きに反応したのは欧州ロスチャイルド財閥系だった(より正確にいえば、この思想の源流は同財閥系の基本理念から来ており、日本の安倍晋三首相とも関係が深く、その影響を受けた習国家主席の背後勢力がそれを取り入れて理論化したものだ)。そうすることでユーラシア大陸に巨大な経済圏を構築して主導権を握ることで、米ロックフェラー財閥系による世界覇権に対抗しようとしたわけだ。
 この構想を具現化した国際機関であるアジアインフラ投資銀行(AIIB)にデヴィッド・キャメロン政権下の英国に資本参加をさせたのを皮切りに、“雪崩を打って”他の欧州諸国にもこれに追随させたのはこのためだ。

 この構想を推進していくにあたり、欧州側の銀行勢が融資をするだけでなく、中国の巨額な外貨準備をその最大の信用基盤にする目論見だった。中国の通貨である人民元はまだ国際的には満足に交換可能通貨と見なされていない状況だったので、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨に加えることで、国際通貨としての信用を得させようとしたわけだ。
 しかし、そこには二つの誤算があり、そこを米国側につかれたことでこの欧州系財閥の目論見はひとまず頓挫することになった。


人民元がローカル通貨だった悲劇

 それは、一つには中国はいかに巨額な外貨準備を誇っていたとはいえ、その通貨の人民元は新興国通貨でしかなかったことだ。世界中で通用する基軸通貨はあくまでも覇権国である米国の中央銀行である連邦準備理事会(FRB)が発行するドルだけであり、また準備資産として認められているのも米財務省が発行している米国債だけである。いかに中国は巨額な外貨準備を抱えていても、所詮、その信用は米ドルや米国債の信用によって裏付けられているものでしかないのである。
 これはFRBが量的緩和策の縮小開始や終了に、さらには利上げに向けて動くことで、中国が何度となく資本流出から信用不安に見舞われてきたのを見ればわかることだ。中国が習国家主席主導で強引に対外膨張路線を推進しようとした際には、FRBが意図的に強力に利上げに向けた姿勢を打ち出して、信用収縮を誘発させる“金融攻撃”を仕掛けたこともあったほどだ。


構造的に天文学的な規模の債務を抱えている中国経済

 二つ目は、中国は表向き、“ダントツ”の首位である日本に次いで世界第2位の資産超過国でありながら、実際には隠れた簿外債務が天文学的な規模に達していることが明らかになってきたことだ。
 中国では本当の意味で市場経済が導入されておらず、共産党幹部が就任している国有企業はじめ多くの企業経営者の感覚は“親方日の丸”とでもいうべきものであり、市場経済国での採算や収益を重視した経営理念が働きにくい。技術革新を磨いたり創造性を働かせて新規分野を切り開くことで、消費者に受け入れられるような製品を開発する意欲に乏しく、原材料コストにも“無頓着”である。
 このため膨大な“在庫の山”を抱え込みやすく、また「資源爆食」といった現象も生じてしまうのである。

 中国経済は高度経済成長を続けていた当時から、本当は代表的な国有企業は赤字体質だったようだが、それを海外資金を調達して売り上げに回すという巨大な“粉飾”を繰り広げることで誤魔化していた。人民元相場が上がり続けていた際には、調達した資金の返済コストが時間が経てば経つほど軽減していったのでそうした“インチキ”が通用したが、下落傾向に転じると一転して厳しい苦境に立って今日に至っている。
 中国の当局が外国為替市場で強力な介入により人民元相場を買い支え、また資本流出規制を強化するなどして必死に人民元相場の崩落を防いでいるのは、「一帯一路」構想はじめ海外事業を繰り広げるうえでの信用の喪失や国家の威信の低落を食い止める以上に、こうした債務が“雪だるま式”に増えるのを防ぐためである。

 中国が今、どの程度の規模の債務を抱えているか定かではないが、米マッキンゼー国際研究所が15年2月に公表した報告書では、その規模が対国内総生産(GDP)比282%に達しているとされていた。
 その後、バブル崩壊への対処や景気下支えのために人民銀行が金融緩和策を推進し、それにより創造されたマネーが沿海部の都市部の不動産市場に向かって再びバブルが膨れ上がったことから、今ではその比率はさらに巨大な数値に跳ね上がっているはずである。


欧州系財閥の方針転換

 欧州ロスチャイルド財閥はそうした中国経済の実態を認識するにつれて、ひとまずその中国と提携するのを諦めて、本来の敵である米ロックフェラー財閥と連携することにした。そうすることで、中国に対して通商問題で攻撃を仕掛けて、特に資本取引の自由化を受け入れさせることで、資本流出を促して人民元相場を崩落させたうえで、国有銀行や代表的な国有企業を買収していく路線に転換した。
 米国の世界覇権がいつまでも続くわけがなく、いずれは中国にそれを明け渡すと見込まれるなかで、長期的な観点から米ロックフェラー財閥より優位な地位に立つ戦略に切り替えたわけだ。そして両財閥の“同床異夢”による提携関係が成立した段階で、米国は日本とともに人民元のSDR入りに賛成の姿勢に転じた。
 また16年中の米大統領選挙でも、欧州ロスチャイルド財閥系はゴールドマン・サックスを介してトランプ現大統領を支援していたのに対し、米ロックフェラー財閥系は当初はヒラリー・クリントン元国務長官を推していたが、この提携関係が成立したことでトランプ現大統領に一本化することになった。トランプ現大統領がその陣営に中低所得者層の白人に支持されている偏狭なナショナリストを抱えていることが、中国に圧力をかけるうえで好都合であると判断されたからだ。

 トランプ大統領は大統領選挙戦中には中国からの輸入に対して45%の関税をかけることを提唱し、11月8日の大統領選挙に勝利してからも習国家主席を無視して台湾の蔡英文総統と電話協議をし、「一つの中国」の原則に縛られない姿勢を示した。さらに核開発やミサイル問題がくすぶっている北朝鮮に対して軍事攻撃も辞さない姿勢を示すことで、中国に対して絶対に体制の崩壊だけはさせられないことを承知のうえで、原油の供給の削減や停止に動くように強要してきた。
 実際、中国側は石炭の輸入を停止しただけでなく、原油の供給も削減したようであり、北朝鮮が核実験に踏み切れば国境を封鎖すると通告したという。それでも、体制の崩壊につながる供給の停止といった抜本的な対策にまでは踏み込めなかったため、水面下での通商交渉ではそれなりに譲歩せざるを得なかった。


 明日はこの続きを掲載します。
 週末の明後日はFBI長官の解任劇について考察します。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。