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過去の弾劾に向けた動きと現大統領の周辺環境

ポイント
・大統領の弾劾の動きについては、従来のように合衆国憲法第2条第4節によるものよりは、25条第4節の条文が適用され、副大統領主導で行われる可能性が高いのではないか。
・特別検察官が任命されたことで次々に内部情報がリークされる動きが落ち着く可能性があり、金融市場でもリスク回避が強まるのは中国の共産党大会が終わって以降か?



過去の大統領の弾劾に向けた動きの経緯について

 ドナルド・トランプ大統領が弾劾されるとしたら(実際にはリチャード・ニクソン大統領のように、それが決定的になる前に自ら辞任する可能性が高いが)、一般的にいわれているのは合衆国憲法第2条第4節の条文に基づくものだ。そこでは「大統領、副大統領および連邦政府職員は、反逆罪、収賄罪または他の重大犯罪および非法行為によって訴追され、かつ有罪判決を受けた場合はその職を免ぜられる」と規定されている。
 これから特別検察官に指名されたロバート・モラー元連邦捜査局(FBI)長官による捜査で、トランプ大統領がジェームズ・コミー前FBI長官にマイケル・フリン前大統領補佐官に対する疑惑の操作を打ち切るように求めたとされる疑惑が「司法妨害」に当たると認定されれば、それに該当することになる。その場合、下院で出席議員の過半数の賛成により弾劾に向けた発議が成され、上院で3分の2以上の賛成をもって正式に弾劾されることになる。
 かつて、1867年にアンドルー・ジョンソン大統領が上院で1票差でそれを免れたことがある。ニクソン大統領は74年に下院で弾劾に向けた発議が可決され、上院で採決が行われる前に辞任した。最近では98年末から99年にかけて、不倫疑惑に問われたビル・クリントン大統領が下院で弾劾決議を受けながら、上院では大差で否決されている。

 今回のトランプ大統領の場合、モラー特別検察官が独立した立場で懸命に捜査をしても、違法性にかかわる証拠を集めるのは困難かもしれない。それよりは、筆者はまだ過去に事例がないとはいえ、合衆国憲法修正25条第4節が適用される可能性が高いと見ている。
 そこでは、副大統領や各行政部の長官が上下両院の議長に対し、大統領がその職務上の権限と義務を遂行することができないと文書で申し立てをすれば、副大統領が大統領代理として大統領職の権限と義務を遂行するものとされている。大統領が上下両院の議長にそれに対する異議を申し出れば上記の申し立てはいったん却下されるが、それでも4日以内に再びその申し立てをすれば、議会が開会中であれば48時間以内に、閉会中なら21日以内に会議が招集され、上下両院で3分の2以上の賛成をもって大統領の権限が正式に停止されることになる。
 この場合、副大統領は正式に大統領に昇格するわけではなく、あくまでも「大統領代理」という地位に就くだけだが、実質的には昇格することになるのはいうまでもないことだ。


リスク回避が再燃するとしたら共産党大会の終了後か?

 トランプ政権を構成している閣僚には、今回のロシアゲートでも関与が疑われているジェフ・セッションズ司法長官のように、大統領の“肝いり”で使命されているのもいるが、その多くの人選はマイク・ペンス副大統領が担っていたという。ペンス副大統領はリチャード・チェイニー元副大統領がジャレッド・クシュナー上級顧問を介して推薦されたことでその地位に就いているだけに、共和党系新保守主義(ネオコン)派やさらには米ロックフェラー財閥の意向を受けた副大統領の動きが重要なカギを握っているのではないか。
 ペンス副大統領は日本側では日米経済対話でともに両国のトップを務めるなど、麻生太郎副首相兼財務相と密接な関係があるようだ。それはかつて、チェイニー副大統領(当時)が小泉純一郎政権の後を受けた第一次政権の際の安倍晋三首相を、その背後の宗教勢力との関係から嫌ったとされている。その直後から第一次安倍政権の閣僚の政治スキャンダルが相次いだものだが、そうしたことと関係しているかもしれない。
 だとすれば、トランプ大統領が弾劾されるかもしくは辞任すると、安倍首相の立場も危うくなるかもしれないが・・・・。

 いずれにせよ、これまでは米政府内部から次々に内部情報がリークされてきたが、特別検察官の設置と指名が決まったことで、そうした動きがひとまず収まる可能性がある。それとともに金融市場では落ち着きを取り戻してリスク選好の動きが再燃し、また連邦準備理事会(FRB)の利上げやバランスシート縮小への動きに関心が移ることでドル高が進みやすくなっておかしくない。
 トランプ政権への不信感によるリスク回避の動きが再燃するとしたら、中国で共産党大会が終わり、習近平国家主席が専制権力体制を確立して以降になるのではないか。


 週末となる明日は。この問題の背後で暗躍している米国の諸勢力や二大財閥の思惑や利害について考察することにします。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。