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同床異夢の米欧二大財閥とトランプ大統領の命運

ポイント
・欧州系財閥は中国に通商問題で圧力を強めるうえで好都合なのでトランプ大統領を擁立し、それと提携した米系財閥は金融業で不利な状態になったが石油資本が恩恵を受ける。
・所期の目的を達成したことで欧州系財閥としてはトランプ大統領は用済みになり、また親イスラエル派としてもいつまでも北朝鮮問題に関わっていられない状況に。
・米系財閥は軍需産業系を後押しして極東では「新冷戦」体制を、通商面では中国を除外した新体制の構築を望んでいるので、あまり中国に融和的な姿勢を見せるのを望んでいない。



米欧二大財閥の基本的な思惑

 これまで当欄で指摘したが、どうしてドナルド・トランプ米大統領が追い込まれるようになったのかについて、依然として北朝鮮が不穏な動きを続けていることも含めて、少し補足説明をしておく必要があるだろう。
 トランプ政権は欧州ロスチャイルド財閥が「一帯一路」構想を提唱していた習近平国家主席主導の中国と提携することを諦めて、ひとまず米ロックフェラー財閥と提携することにしたことで成立した経緯がある。ロスチャイルド財閥はそうすることで、中国に対して人民元相場を崩落させながら、市場開放や特に資本取引の自由化を受け入れさせることで、将来的に国有銀行や代表的な国有企業を買収していく路線に切り替えたわけだ。
 ゴールドマン・サックスを介してトランプ政権を成立させたのは、大統領の陣営を形成していた中低所得者層の白人に支持されていた偏狭なナショナリストたちが、中国に対して圧力を強めるうえで好都合だったからだ。
 こうしたことについては、これまで当欄で述べてきたので、あまり詳しく触れないことにする。

 一方で米ロックフェラー財閥としては、中国沿海部はじめ新興国の生産工場で人件費が上昇し、米国でもリーマン・ショックによる巨大な金融危機に見舞われて以降、中間層の没落の顕在化による潜在的な家計の購買力の低下から多国籍企業が収益基盤を弱体化させていたなかで、それに代わる成長基盤として軍需の創出を画策していた。そこで当初はヒラリー・クリントン元国務長官を支持し、民主党系新保守主義(ネオコン)派主導で国防費を増額し、また公共インフラ事業も打ち出そうとした。
 しかし、トランプ政権の成立に乗り換え、共和党系ネオコン派主導でそうした戦略を強化していくことになったことで、民主党系ネオコン派政権より一段と好戦的な性格になった。また公共インフラ事業という本来的に民主党政権が好む政策をそのまま踏襲させながら、減税や規制緩和の推進という共和党政権ならではの政策がそこに加わることになった。
 それにより大きな恩恵を得ることになったのが軍需産業と石油資本――それも世界最大のメジャーであるエクソンモービルだ。米ロックフェラー財閥としてはクリントン民主党ネオコン派政権が成立しなかったことでシティ・グループが不利な状態になった一方で、原油価格が低迷しているにもかかわらず、トランプ政権に国務長官を輩出しているこの世界最大の石油資本に強力な追い風が吹いている。


いつまでも北朝鮮問題に関わってはいられない

 この米欧二大巨大財閥の提携により成立したトランプ政権が所期の目的を達成するにあたり、まず着手したのが中国に圧力を強めることだったのであり、それを達成するための手段として北朝鮮問題を緊迫化させた。北朝鮮で主導権を握っている朝鮮人民軍を操っているのが親イスラエル右派や共和党系ネオコン派であり、これまでミサイル技術の向上や核開発を後押ししてきたのがドナルド・ラムズフェルド元米国防長官が深く関与しているスイスの巨大軍需企業なのだから、この問題は“自作自演(ヤラセ)”であったわけだ。
 トランプ大統領は水面下での通商交渉で中国に圧力を強めるため、習国家主席を“おだて殺し”にしながら北朝鮮に対して軍事攻撃も辞さない姿勢を示した。ただ、最初から攻撃するつもりがなかったのは、19日にジェームズ・マティス国防長官が「北朝鮮問題を巡るいかなる軍事的な解決も想像を絶する規模での悲劇を引き起こす」ので、「米政府は外交的な解決の模索に向けて日中韓などと協力して取り組む」と述べている通りだ。

 こうした米国側の中国に対する戦略が奏功して「100日計画」がまとまり、米金融機関が中国に進出していき、さらに将来的には国有銀行や有力な国有企業を買収していく方向性が示された時点で、少なくとも欧州ロスチャイルド財閥としてはトランプ大統領は“用済み”になったのだろう。ここにきて、ロシアゲートはじめトランプ大統領の周辺で“醜聞”が出てくるようになったのは、こうした状況の変化があると考えられる。
 また偏狭なナショナリスト勢が勢力を後退させた後、トランプ政権で主導権を握っている親イスラエル右派としても、いつまでもアジア極東に兵力を割いているわけにいかない。イスラエルやサウジアラビアを援護してイランを攻撃するなど中東で「熱戦」を繰り広げていくにあたり、いつまでも北朝鮮問題に関わっているわけにいかないわけだ。


通商関係に見る欧米二大財閥の思惑の相違

 とはいえ、軍需産業系としては本来、中東で「熱戦」を繰り広げていくと同時にアジア極東では中国を相手に「新冷戦」構造を構築しようとしており、それは米ロックフェラー財閥によって支持されているはずだ。こうした勢力としては、欧州ロスチャイルド財閥が中国に進出し、さらにはユーラシア大陸に巨大な経済圏を構築しようとしているなかで、少なくとも表面的にであれ、あまりに同国と良好な関係になることは望ましくない。
 中国・北京で各国の首脳が招待されて習国家主席が盛大に「一帯一路」国際会議を開催していた最中に、北朝鮮が高度2,000キロメートルを優に超えるミサイルを撃ち上げた背景には、こうした事情があるわけだ。

 そうした欧米二大財閥の思惑の相違は、中国を中心とする世界的な通商関係においても見受けられる。欧州ロスチャイルド財閥としては、中国という巨大な市場に参入することが担保され、さらに将来的に中国経済の内部に深く進出して“乗っ取っていく”方向性が示されたことで、ユーラシア大陸を中心とするグローバルな通商体制を構築していくのが望ましい。
 これに対し、中国を相手に「新冷戦」を構築しようとしている勢力としては、従来の世界貿易機関(WTO)体制が多国籍企業の収益基盤の弱体化とともに機能しなくなりつつあるなかで、中国やそれに付随している“衛星国”を除外したうえで、同盟国や有志国との間で米国を中核とする新体制を構築することを目論んでいる。マイク・ペンス副大統領主導で日米経済対話の開催を提唱しておきながら、日本に対して米国を除く太平洋諸国11カ国で環太平洋経済連携協定(TPP)の発足に動くように指示しているのはこのためだ。
 それにより中国がそこに参入してくるのを阻止したうえで、太平洋諸国の中で圧倒的な経済力を誇る日米両国間の交渉により合意されたものを事実上の統一基準として、他の太平洋諸国にも適用していくのを迫っていこうというわけだ。


中東訪問が弾劾回避への試金石に

 トランプ大統領は今週25日にベルギーで開催される北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に、その翌26~27日にイタリア・タオルミナで開催される先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)に出席するのに応じて、就任後、初の外遊として中東やバチカンを訪れた。
 最初の訪問先のサウジでは早速、同国のサルマン国王と会談して1,100億ドル規模の兵器の売却を決めた。それによりサウジを支援する姿勢を示してイランの軍事力に対処していく姿勢を鮮明に打ち出すとともに、国内の軍事産業への“セールスマン役”を見事にこなした。
 さらにイスラエルやパレスチナ自治政府を訪問したが、そこでは一部では中東和平に向けて抜本的な対策を打ち出すとの見方が出ていたが、そこまで踏み込んだことは示されなかった。ただ、トランプ大統領としては自身の保身のためにも親イスラエル勢力に受け入れられる姿勢を示すうえで、実際にベンヤミン・ネタニヤフ首相との会談では「二国家共存」の原則にとらわれない姿勢や、米大使館をエルサレムに移すことについて言及した可能性がある。
 欧州ロスチャイルド財閥から“用済み”と見なされても、親イスラエル派や軍需産業から好意的と受け止められれば弾劾されたり辞任する必要がなくなり、“首がつながる”かもしれない。


 今週はこれで終わりになります。
 来週はこれまでと同様に週明け29日(月)から掲載していく予定でおりますので、よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
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