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ECBの金融政策を巡る各勢力の思惑

ポイント
・ドイツ政府がECBの金融政策への批判を強めているのに対し、ドラギ総裁はじめECB執行部は南欧出身者で占められているため、両者の対立が強くなっている。
・以前には米国はドイツの健全財政政策を批判していたが、トランプ米政権が成立して以来、ECBの金融政策への批判をめぐり“奇妙な”提携関係が成立している。
・8日のECB理事会では現行の量的緩和策の縮小が決まるといった見方まで出ていたが、これはいかにも行き過ぎであり、当面はユーロ高修正局面入りも。



ECB執行部とドイツ側との対立が激化

 欧州中央銀行(ECB)の金融政策については、22日のアンゲラ・メルケル首相に続いて翌23日にはウォルフガング・ショイブレ財務相も同様の発言をしており、イェンス・バイトマン総裁はじめドイツ連銀(ブンデスバンク)関係者以上に政府関係者がタカ派的でECBの金融政策を批判する発言を繰り広げている。
 これに対し、ECB執行部ではマリオ・ドラギ総裁がイタリア出身、ヴィトル・コンスタンシオ副総裁がポルトガル出身、ブノワ・クーレ専務理事がフランス出身と、財政状態が脆弱で経済情勢が慢性的に悪化している南欧出身者で占められている。ドイツ枠で執行部入りしているペーター・プラート専務理事もドイツ連銀関係者ではないだけにハト派的な性格が強く、いずれも現行の政策を肯定してその継続を主張している向きで占められている。
 ユーロ圏の経済状態が最悪期を過ぎて徐々に回復しつつあり、先日のフランスの大統領選挙をはじめ反欧州連合(EU)的な動きも沈静化しつつあるのを背景に、現行の政策の継続性に対する議論が活発になりつつあるなかで、両者の対立が今後、一段と激化する可能性がある。


米独間で奇妙な提携関係が成立

 注目されるのは、最近では米国がECBの金融政策を批判することで、ドイツ側と“奇妙な”協調関係が成立していることだ。
 米国側ではバラク・オバマ前政権の後半期には、グローバル経済が不安定な状態にあり、米国だけでそれを牽引するのは不可能であるとして、他の主要国にも金融政策だけでなく積極的な財政政策に踏み出すように求めていた。特に中国を抜いて世界最大の貿易黒字国になりながら健全財政政策を続けていたドイツに対しては、主要経済大国の責務を果たしていないとして批判の矛先を向けることが多く、主要7カ国・地域(G7)や主要20ヵ国・地域(G20)のような国際会議ではたびたび対立することが多かったものだ。

 ところが、現在のドナルド・トランプ米政権は米国に貿易赤字をもたらしている相手国を批判するにあたり、緩和的な金融政策により当該国の通貨が低水準で推移していることもその対象にしており、ドイツが対米貿易黒字を積み上げている一因はECBの金融政策にあると主張している。またドイツ政府側も、もとよりECBの政策を批判していたなかで、米国側による対米貿易黒字に対する批判をかわすにも好都合であるため、最近ではよけいにその調子を強めている。


そろそろユーロ高に行き過ぎ感も

 こうした状況を背景に、来週8日に開催される理事会では現行の量的緩和策の縮小が決まるといった見方まで出ているが、これはいかにも行き過ぎであると言わざるを得ない。現行の政策では、毎月600億ユーロもの国債その他の資産の買い入れを年末まで続けることが既に決まっている。この理事会ではそれ以降の政策を巡る指針(フォワードガイダンス)を変えるかどうかを議論するに過ぎず、ドラギ総裁はじめ執行部はそれすらも消極的な姿勢を崩していない。
 同日には英国で総選挙が行われることや、イタリアやポルトガルの銀行問題もまったく解消されていない。7月にはギリシャ国債の償還を控えており、ドイツを中心とするEU側と国際通貨基金(IMF)との交渉がまとまらないと同国向け融資を決めることができず、完全な債務不履行(デフォルト)に陥ることが現実味を帯びてくる。そろそろユーロ高の行き過ぎ感が出てきておかしくない。


 明日、明後日は先週、公表されたFOMC議事録が、市場では実際の内容よりハト派的に受け止められた背景について考察します。
 週末は加計学園の問題を巡る官邸と官僚勢力との対立について、巷間で言われているのとは異なる観点で考えていきます。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。