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米国によるパリ協定からの離脱の本当の意味

ポイント
・トランプ大統領は選挙戦中の公約を守ってパリ協定からの離脱を表明したが、米国で石炭産業の規模は採るに足りないものであり、実際に大きな利益を得るのは巨大な石油資本だ。
・米国は欧州中心の世界システムを瓦解させて米国中心に作り替えるにあたり、“異端”な大統領に暴れさせているが、このパリ協定からの離脱の件もその一環といえる。
・これまで、米系財閥は自分たちの寡占化した利益を守るために環境問題を盛んに推進していたが、今では反対に利益を追求するためにその分野での規制緩和を提唱している。



パリ協定からの離脱の黒幕は米系石油資本

 最後に、先週1日にはドナルド・トランプ米大統領が地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」からの離脱を正式に発表したが、それがグローバル規模で大きな衝撃をもたらしているので、このことについて言及する。
 トランプ大統領は「米国第一(アメリカ・ファースト)」の観点から米国に不利益をもたらし、他国に有利になるので不公平であることを離脱の理由としている。トランプ大統領が中低所得者層の白人を支持基盤としていたなかで、大統領選挙戦中に炭鉱労働者の雇用を維持するために公約に掲げていたものを実行に移したものだ。

 もっとも、米国で石炭産業はそれほど規模が大きいわけではなく、実際にそれにより大きな利益がもたらされるのがエクソンモービルを中心とする石油産業である。環境規制の緩和が進むことで米国内でシェール産業が一段と興隆していき、また将来的にアラスカ産の原油の採掘や輸出に道を開くことになるからだ。
 米ロックフェラー財閥系は昨年の大統領選挙では当初、民主党のヒラリー・クリントン元国務長官を推しており、欧州ロスチャイルド財閥系と提携するにあたりトランプ現大統領に乗り換えたが、その意図の一つがここにあったといえる。

 米権力者層は欧州中心の付加価値税を基盤とする課税システムや、通商システムでも世界貿易機関(WTO)体制を瓦解して米国中心のシステムに再構築していくにあたり、トランプ大統領の“異端的”な言動を利用して“暴れさせている”が、今回のパリ協定からの離脱の動きもその一環ということができる。
 欧州勢に加えて、親欧州的な共産主義青年団(共青団)系出身の李克強首相主導の中国も米国の姿勢を批判し、パリ協定の枠組みの維持を主張しているのは、そうした米国の意図をしっかり見抜いているからであり、また国際石油業界でエクソンが一段と群を抜く影響力を強めるのを阻止するためである。


米系財閥の正体が露骨に表れる

 もっとも、環境問題はもとより欧州勢より米ロックフェラー財閥が熱心に提唱していたものだ。それは例えば、米国内では湿地帯の自然を守るために、またそうした地域に居住していることが多い少数の原住民であるインディアンの生活様式や文化、風習を守るためといったことがその名分とされていた。ただ、その本当の理由はそうしたところに油田が多く存在したからであり、大手石油資本の寡占化を守るうえで独立系の石油業者に採掘をさせないためだ。

 また放射能汚染の恐怖を必要以上に煽って反原子力発電運動を展開していたのは、原発産業はもとよりゼネラル・エレクトリック(GE)はじめ欧州ロスチャイルド財閥系が強かったなかで、重油を燃料とする火力発電の比重を高めることで石油産業の利益を後押しするという隠された意図があった。
 そうしたロックフェラー財閥系が、偏狭なナショナリストを陣営に抱えているトランプ大統領を利用して環境規制に反する姿勢を鮮明にしたのはなんとも皮肉であり、正体を露骨に表したということがいえるだろう。


 今週はこれで終わりになります。
 来週はまた週明け12日の月曜日から掲載していくので、よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
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