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影響力を取り戻した米大手金融資本とFRB

ポイント
・今回のFOMCの政策決定の背後には、トランプ政権が動揺しているように新イスラエル左派系の巻き返しから金融資本系が復活し、FRBが自由度を握ったことがあるようだ。
・米大手金融資本としては日銀が超強力な量的緩和策を継続したままFRBが金融政策の正常化に向かえば米銀の資産が膨らまずに「米国独り勝ち」を現出できるので最も望ましい。
・今秋の中国の共産党大会や来年のサウジの国営石油会社のIPO実現までは株高傾向を維持し、その後信用収縮が強まれば軍需産業系としても軍需を創出するのに望ましくなる。



トランプ政権の動揺でFRBの政策姿勢にも変化

 前回、述べた環境の変化は米連邦準備理事会(FRB)の金融政策姿勢にも影響を与えているはずだ。親ロシア的で反欧州連合(EU)的な極右勢力に対して反ロシア的で親イスラエル左派系の親EU的な勢力がそれなりに挽回したということは、金融資本(ウォール街)がそれだけ影響力を回復し、FRBも金融政策運営においてそれだけ大きなフリーハンドを得ることになったと考えられるからだ。
 それでも、バラク・オバマ前政権の頃に比べると親イスラエル右派や共和党系新保守主義(ネオコン)派が影響力を強めているのも事実である。それは最近、サウジアラビアが他の中東諸国とともにこうした勢力の後押しを受けてカタールとの国交断絶に踏み切ったり、サウジ国内でもムハンマド副皇太子が皇太子に昇格するなど、イラン包囲網を着々と強めているのに見て取れる。
 しかし少なくとも、ドナルド・トランプ政権が発足した当時は大統領の側近の「オルタナ右翼」であるスティーブン・バノン首席戦略官・上級顧問が大きな影響力を行使したが、その当時と比べると政権本来の主流勢力が大きく後退しているのは明らかである。

 トランプ政権でバノン戦略官が影響力を弱め、さらに最近ではロシアゲート問題で大統領周辺自体も動揺するとともに、FRB執行部が以前のようにタカ派的な姿勢を見せるようになったのには大きな関係があるはずだ。FRBが積極的にバランスシートの縮小への動きを見せるようになったのは、前回述べたように銀行の利害が密接に関係しているが、それもトランプ政権が動揺したからこそ実現しているものだ。


米大手金融資本にとって最も望ましい状況

 裏側で財務省やFRBと連携して国際金融市場で展開の主導権を握り、実質的に動かしている米国の大手金融資本の勢力にとって最も望ましいのは、当面はFRBが「緩やかに」利上げを推進して資金を米国に還流させる一方で、日本銀行(日銀)には超強力な量的緩和策を継続させることで自国の株高傾向をもたらすことだ。またFRBがバランスシートを縮小していけば長期金利に適度に上昇圧力がかかることで、そうした面からも銀行にとっては望ましいわけだ。
 FRBが緩和的な政策を続けると米国でもバブルが膨らんでしまい、それが崩壊すると米国の銀行の資産も傷んでしまう。それよりはFRBだけが金融政策の正常化に向かった方がそうした弊害を回避できるだけでなく、中国を筆頭に新興国から資金流出を加速させて危機的な状況に追い込むことで、「米国独り勝ち」状態を現出することができる。

 かつて、13年5月22日にベン・バーナンキFRB議長(当時)が量的緩和策の縮小に言及し、6月19日にはその具体的なスケジュールを示したことで「フラジャイル・ファイブ」と呼ばれた国々を中心に新興国危機が誘発され、またシャドーバンキング(影の銀行)問題をはじめとして中国不安もたびたび引き起こされたのが想起される。
 それこそが、まさに世界中の主要国の中央銀行の金融政策を実質的に統轄しているグループ・オブ・サーティ(G30)から派遣されて、FRB執行部で主導権を握っているスタンレー・フィッシャー副議長の“本領発揮”といったところだろう。
 そのうえで、新興国危機が米国にも波及して信用不安が連鎖する段階になったら、今度は大手資本としては一転して株価を売り崩せば良いのである。


「新冷戦」体制の構築や「熱戦」の展開に向けて

 以前、当欄では、今秋には中国では5年に一度となる幹部人事が決まる共産党大会の開催を控えており、また来年中にはサウジも国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)を控えているなかで、それまではFRBに利上げやバランスシートの縮小をさせながら、リスク選好による株高傾向を維持する路線であることを明らかにした。
 米権力者層は多国籍企業によるグローバル生産体制が機能しなくなってきたなかで、将来的にはそれに代わる経済成長戦略として大規模な軍需を創出させようとしている。極東で中国を相手に「新冷戦」体制を構築するにあたり、強権的な性格が強い習近平国家主席が専制権力体制を握ってそれを永続化することが望ましいからだ。また中東で「熱戦」を繰り広げるにあたり、圧倒的な原油の輸出大国として日本と並ぶ米国の中核的な「属国」であるサウジの経済構造改革を支援する必要があることも指摘できる。

 そして所期の目的が達成された時点で、今度はサウジに一転して原油を増産させることで原油相場を崩落させ、それにより経済・財政事情が脆弱な産油国を債務不履行(デフォルト)に陥らせることで新興国危機を引き起こし、世界的に信用不安を強めれば良いのである。
 そうすれば経済成長の落ち込みへの対処として軍需の創出の必要性が指摘されるだけでなく、多くの新興国が疲弊することで“混沌(カオス)”のような状態に陥り、中東で熱戦を展開しやすくなる。また中国でも危機的な状況から社会不安が強まり、それを抑え込むために習政権が一段と強権姿勢を強めることで、米軍需産業系としても新冷戦体制に持ち込みやすくなるわけだ。


 今週は先週のFOMCの政策決定について述べてきましたが、週末となる明日は歴史的な潮流もまじえて、その背後の黒幕や、次期FRB議長の人事を巡る動きについても考察します。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。