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超タカ派的な政策決定にもかかわらず能天気な市場

ポイント
・米国ではインフレ率が上昇せず株価も割高な状態にあり、リセッション懸念も根強いなかで、FRBは利上げやバランスシートの縮小を推進していけないとの見方が支配的だ。
・ただし、FRBはバランスシートの縮小は粛々と推進していくことを「宣言」しており、日銀に超強力な量的緩和策を継続させながら資金還流で株高傾向を維持しようとしている。
・市場ではFRBが想定通りに金融政策を推進していけないことを前提に動いており、想定通りに動けば米長期金利が一気に上昇してドル高が大きく進む可能性が高まる。



FRBの想定通りの金融政策を推進していけないとの見方が支配的

 以前、当欄で述べたように、13~14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では超タカ派的な金融政策が決まったが、市場の反応はいかにも“能天気”である。
 労働市場はほぼ完全雇用の状態ではあっても一向にインフレ率が上昇してくる兆しがないだけでなく、米主要企業の収益環境が悪く、株価はかなり割高な状態にある。リーマン・ショックにより大きく落ち込んで底入れして以来、米国経済は現在までで8年間も景気拡大が続いているなかで、現在では景気指標も強弱まちまちの内容になっており、そろそろ景気後退(リセッション)に陥るとの懸念には根強いものがある。
 こうしたなかで来年末にかけてさらに4回利上げを推進していき、年内に米連邦準備理事会(FRB)のバランスシートの縮小を開始して1年後にはそのペースを毎月500億ドルに拡大していけば、株価がクラッシュして信用収縮が強まり、景気も“オーバーキル”を引き起こす懸念が高まる。このため、FRBは想定通りに利上げやバランスシートの縮小を推進していけないとの見方が支配的である。


FRBはスケジュール通りに粛々と推進することを「宣言」

 ただし、今後の追加利上げの見通しについてはともかく、声明文でバランスシートの縮小措置のスケジュールを示すにあたり、「今後の経済情勢により・・・・」との文言が挿入されなかった。これは経済情勢や金融市場の動向にかかわらず、スケジュール通りに“粛々と”バランスシートの縮小策を徐々に拡大していく路線を推進していくことを「宣言」したことにほかならない。
 それでも市場では、想定通りに進めるのを断念せざるを得なくなるとの見方には根強いものがある。これまで当欄で述べてきたように、特に米権力者層は来年中に予定されているサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)が実現するまでは、また少なくとも今秋に中国で共産党大会が開催されるまでは株高傾向を持続させようとしている。
 ただし、米政策当局やその背後の権力者層は、FRBに金融緩和策を推進させたままでは米国内に住宅その他の資産価格や自動車その他のローン残高が一段と膨らんでしまい、そのバブルが崩壊すると大きな痛手を受けてしまう。そこで日本銀行(日銀)に超強力な量的緩和策を継続させることで「資金供給基地」としての“安全弁”を確保したうえで、FRBが金融政策の正常化に向かうことにより、主に米国に資金還流させることで株高傾向を維持していこうというわけである。


ハト派的な展開が織り込まれタカ派的ならサプライズに

 いずれにせよ、外国為替市場や米債券市場ではFRBが14日に示した利上げやバランスシートの縮小に向けたスケジュール通りに動くことができず、いずれ挫折することを前提にして動いているので、実際にその通りになっても一段と米長期金利が低下してドル安が進む公算は低い。むしろ、ある程度でもFRB執行部の思惑通りに進むと米債券市場では一気に踏みが出て長期金利が高騰し、外為市場でもドルの売り持ちの損切りが急速に進むことでドル高がかなり進行する可能性が高まることになる。
 米権力者層の“神通力”はそれほど脆弱なものではないというのが筆者の認識である。(ただユーロ・ドル相場については、年明けには欧州中央銀行(ECB)が量的緩和策の縮小(テーパリング)に動くと見込まれるので、FOMCでのドル高要因を織り込むともう一度ユーロ高に振れる場面があっておかしくないが)。


 明日はFOMCで今回の政策決定を決めるにあたり、ハト派寄りの中間派を抱き込むうえでのFRB執行部による“奇策”について述べます。
 明後日以降の週末2日間は、中国が資本取引の自由化を拒否する姿勢に変わるなど、最近の対米強硬姿勢について考察します。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。