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資本取引の自由化の阻止に向けて中国の立場が強まる

ポイント
・米国はこれまで、北朝鮮問題を利用して通商、資本取引の自由化に取り組むように圧力をかけてきたが、中国は最近、自由化を明確に拒絶する姿勢に転じたことがうかがわれる。
・それを受けて、米国側は米中対話の直前に昏睡状態に陥った学生を帰国させるなどして反北朝鮮感情を煽ることで、再び中国に対してこの問題で圧力を強める姿勢に転じつつある。
・ただ、米国としては空母の多くをペルシャ湾に向かわせるなど、既に中東に軸足を移しているため、中国としては軍事的な圧力を受けていないことが拒絶姿勢に背景にありそうだ。
・米国でも親イスラエル派等は「熱戦」を中東で起こそうとしており、大手金融資本系も来夏以降に「中国売り」を仕掛けようとしているので当面は中国問題への深入りを嫌っている。



中国が米国の要求を明確に拒絶する姿勢に

 現在の米国と中国との関係や、それが国際情勢に及ぼす影響を考察するうえで大事なことは、資本流出規制や人民元の管理強化に見られるように、中国側が資本取引の自由化に大きくブレーキをかける姿勢に転じたことだ。中国政府はこれまで、人民元相場の崩落を防ぎながら、中国国内で米国の格付け会社や金融機関が参入するのを少しずつ認めてきたが、人民元相場の変動を“表だって”阻止する姿勢を鮮明にすると、もはやこれ以上の自由化を拒絶したと受け止められておかしくないからだ。
 米国では中国との提携をひとまず諦めた欧州ロスチャイルド財閥系が米ロックフェラー財閥系と提携することでドナルド・トランプ政権が成立した経緯があるが、それは中国に圧力をかけて人民元相場を崩落させながら市場開放に向けて、なかんずく資本取引の自由化を受け入れさせることで、中国の国有銀行や著名な国有企業を買収していくためである。トランプ大統領がその地位に擁立されたのも、その“異端児”としての強烈な個性を放つ保護主義的な性格が中国に圧力を強めるうえで好都合だったからだ。

 米国が中国に圧力を強めるにあたり、当初はトランプ大統領が中国製品に45%の関税をかけることを提唱したり、台湾問題を利用して「一つの中国」に固執しない姿勢を示すことで中国側を牽制した。その後、親イスラエル右派や共和党系新保守主義(ネオコン)派が操っている北朝鮮を利用して軍事的な緊張を高めたうえで、中国に原油の供給の停止をはじめ北朝鮮に対して抜本的な対処を求めることで、それを水面下での資本取引面を含む通商問題と結びつけることで中国側に譲歩を強いるように仕向けてきた。
 こうした米国側の圧力は5月11日に予定よりかなり早く「100日計画」がまとめられたことでひとまず成果を収めたが、中国側はこれ以上の譲歩を明確に拒絶したといえる。


米中対話をめぐる両大国の攻防

 このように考えると、先週21日にワシントンで開催された米中外交・安全保障対話で、北朝鮮が今月8日を最後にミサイルを発射していないにもかかわらず、米国側がこの問題の解決に向けてより強力に行動するように中国側に求めた真因がうかがい知れる。トランプ大統領もツイッターで、少し以前までは習近平国家主席をしきりに“おだて殺し”にしていたのが、ここにきてさらに努力を求めるコメントを発するようになっている。
 その背景には北朝鮮に拉致・拘束されていた大学生が19日に昏睡状態で帰国し、その直後に死亡したこともあったとされる。しかし、この大学生は13日に帰国したが、そうしたことをすれば北朝鮮としては拷問によって身体障害を起こした疑惑が高まることで米国から反発を受けてしまい、中国側との協議で強力な圧力をかけるように要求することが容易に予想できたにもかかわらず、それにより一段と苦しい状況に追い込まれかねないのにこうした行動に出るのもおかしな話である。北朝鮮は米ネオコン派に操られていることを考えると、この動きは中国側に圧力を強めるために米国側が仕組んだものとしか言いようがない。

 ところが、中国側はこうした米国側の要求に対し、国連安全保障理事会の決議事項はしっかり履行しており、そもそも北朝鮮問題を解決するカギは中国にはないとして明確に拒絶したとされる。確かに中国としては北朝鮮の現体制を崩壊させることができないので米国側の要求を拒んでおかしくないが、それを米中対話の席上や水面下での交渉だけでなく、翌日には外務省スポークスマンが公式に発言したあたり、以前に比べると中国側がより強い姿勢で出ていることがうかがわれる。


中国が強硬な姿勢に出ている背景について

 おそらく、その背後には一つには今秋の共産党大会を控えて、米国側もロックフェラー、ロスチャイルド両財閥も、また軍需産業系も習主席が専制権力体制を確立してその永続化を実現することを望んでいるなかで、中国経済の混乱を引き起こしかねない人民元相場の崩落を阻止するうえで、そのために導入した政策を強硬に反対することはできないといった“読み”が中国側にあるのだろう。
 またもう一つは、米軍需産業系や親イスラエル右派、共和党系ネオコン派としては、極東で繰り広げるのはあくまでも「冷戦」に過ぎず、「熱戦」は中東で引き起こそうとしているなかで、北朝鮮を牽制するために日本海に展開していた航空母艦の多くが今ではイランを封鎖するためにペルシャ湾に向かっていることもあると思われる。米国と北朝鮮の軍事的な対立が遠のいており、中国としてはもはやそれほど圧力を受けていないからだ。実際、最近では北朝鮮のミサイル発射が遠のいていること自体が、米国としては同国を利用して中国に圧力を強める手段が失われていることを意味しているといって過言ではない。
 またもう一つ付け加えるなら、韓国で親北朝鮮的な姿勢を見せている文在寅(ムン・ジェイン)政権が成立し、北朝鮮に対する日米韓の連携が乱れつつあるのも影響しているかもしれない。


米国側でもあまりに中国問題に深入りするのを嫌う勢力がいる

 もっとも、米国の軍需産業系としては中国との間で「新冷戦」構造を構築しようとしているなかで、米国の資本が買収その他であまりに大挙して中国に進出するとそれを構築しにくくなるためにそれを望んでいない。
 また大手金融資本の多くも以前、当欄で述べたように本格的に新興国危機が再燃するのは来年夏以降のことであり、本当の“勝負”はその時に到来することになる。それまでは、FRBが利上げやバランスシートの縮小に向けた措置を打ち出すことでドル高圧力が強まるなかで、中国当局が人民元相場を厳格に管理していけばそれだけ強力な元買い介入をせざるを得なくなることで外貨準備が減っていくため、「中国売り」を仕掛けるにはその方がむしろ好都合なのではないか。
 さらにいえば、親イスラエル右派や共和党系ネオコン派はイスラエルを防衛するにあたり、いつまでも中国や北朝鮮を相手に軍事力を展開するのではなく、そろそろ中東に軸足を移すことを欲しているはずだ。

 そうした意味では、中東では今月5日にサウジアラビアはじめ中東各国がカタールと国交の断絶に踏み切ったのに続き、先週21日にはサウジでサルマン現国王の子息であり、米共和党系ネオコン派の後押し(よりはっきり言えば操られて)で経済構造改革やイラン、カタールとの断交、イエメンでの軍事力の行使を主導してきたムハンマド副皇太子が皇太子に昇格したことが注目される。
 その一方で、イラク北部ではイスラム国(IS)が支配していたモスルが陥落寸前になっており、世界最強の軍隊といわれる「ペシュメルガ」を擁するクルド人の親米国家の建設に向けて、大きな障害が取り払われることになる。いずれ再び当欄でも中東の問題を採り上げる必要がありそうだ。


 今週はこれで終わりになります。いつも御拝読いただき、ありがとうございます。
 次週も週明け3日から掲載していくので、よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。