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買われ過ぎのユーロに代わりFRBの政策姿勢を織り込む局面に

ポイント
・ECBが9月にテーパリングを決めることをはやしてユーロ高が進んだが、それは非現実的であり、踏みが一気に出たことでユーロ高のピークを速めた可能性がある。
・市場ではFRBの政策姿勢をなかなか織り込まないが、利上げについてはともかく、バランスシートの縮小は“機械的”に進めることが実質的に「宣言」されている。



ECBの9月テーパリング開始をはやしてユーロは買われ過ぎ

 先週27日のマリオ・ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁の発言が量的緩和策の縮小(テーパリング)を示唆したものと受け止められた。しかし、この発言はユーロ圏の景気回復の広がりや、デフレ圧力からインフレ圧力に転換している現状を指摘したものであり、金融政策には直接的に触れていない。
 市場ではそれまで、値頃感から売り込む動きが見られ、それによりユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.12ドルを下回る水準での推移が続いていたが、この発言がテーパリングの開始を意図したものと受け止めて(よりはっきり言えば、そうしたことを作為的に喧伝して)米系投機筋が買い煽ったことで、一気に踏み(売り持ちの損切りによる解消)が出たことで高騰していった。
 ただし、それにより市場ではECBは9月7日の理事会でテーパリングの開始を決めるとの観測が出ているが、これはあまりに行き過ぎた認識だと言わざるを得ない。

 実際には、ECBは既に毎月600億ユーロの資産を買い入れる政策を年末まで続けることを決めており、この方針自体は変わりようがないものだ。9月の理事会では、年明けからテーパリングを開始することを決めるとして、せいぜいそれに向けた指針(フォワードガイダンス)の修正を決めるに過ぎない。ドラギ総裁やヴィトル・コンスタンシオ副総裁の“お膝元”であるイタリアやポルトガルでは銀行不安がくすぶり続けており、それすら順調に決めることができるか定かではない。
 だとすれば、市場では早晩、行き過ぎたユーロ高の修正局面が到来せざるを得ないだろう。むしろ今回、踏みが一気に出たことで、ユーロ高がピークを迎える可能性が高まったのではないか。


FRBは機械的にバランスシート縮小を進めることを宣言

 ECBのテーパリングの開始が一通り織り込まれれば、今度は米連邦準備理事会(FRB)の金融政策が織り込まれる番である。
 FRBは先月13~14日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)で、年内にあと1回、来年は3回利上げを実施するとの見通しを示した。またバランスシートの縮小開始を年内に開始して、1年後には縮小の規模を毎月500億ドルのペースに拡大していくとのスケジュールを示している。しかも、そのスケジュールでは「経済情勢に配慮して・・・・」といったような文言が盛り込まれなかったので、“機械的”にスケジュールで示された縮小ペースを拡大していくことを実質的に「宣言」したといって過言ではない。
 実際、ややハト派寄りの中間派であるフィラデルフィア連銀のパトリック・ハーカー総裁ですら、「インフレ動向が目標値から離れれば金利見通しを再考する必要があるかもしれない」としながらも、「バランスシートの縮小を年内に開始した後にはスケジュール通りに緩やかにそのペースを拡大していくべき」と述べている通りである。

 ところが、市場では一向にFRBの政策姿勢を織り込もうとせず、特にバランスシートの縮小についてはスケジュール通りにそのペースを拡大していけないとの見方には根強いものがあるが、甚だ見当違いの認識であるといわざるを得ない。
 このFOMCの政策決定についてはこれまで、立て続けに集中的に採り上げたが、市場の支配的な認識があまりに非現実的であり、また米権力者層の意向や米国の世界覇権国としての維持・管理体制の原則を考察するうえで非常に重要なことなので、明日以降、これからそれについて大事なことを述べることにする。先日のFOMCでの政策決定に端を発する今後のFRBの金融政策を連続して頻繁に採り上げるのは“しつこい”と思われるかもしれないが、米国の本質を理解するうえで非常に大切なことなのでご容赦いただきたい。


 明日以降、上記のようにFRBの金融政策の本当の意味を考察することで、米国が世界覇権を維持、管理していくうえでの本質を指摘していきます。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。