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米国は基軸通貨ドルの信用に自信を深める

ポイント
・米国が意図的に新興国通貨危機を引き起こすような政策が打ち出せるようになったのは、リーマン・ショックとギリシャ危機を経て、基軸通貨ドルに対する信用を強めたからだ。
・米国に信用危機が波及しそうになっても、基軸通貨を直接創造できるFRBが問題のある銀行に迅速に資金供給に動けばそれを遮断できることを再認識したことが非常に重要だ。



米ドルの基軸通貨としての信用が見直される

 米連邦準備理事会(FRB)はじめ米政策当局が作為的に新興国危機を引き起こすような政策を推進できるのは、米ドルが基軸通貨であるからであるのはいうまでもないことだ。ただここで特筆すべきなのは、近年では米権力者層や政策当局、金融資本家勢が一段と基軸通貨としてのドルに対する信用への自信を強めていることだ。
 リーマン・ショックの際には米国がその震源地となって1930年代の「大恐慌」以来となる巨大な金融危機に見舞われたことで、多くの米国の金融機関が危機的な状況に陥った。しかし、実際に経営破綻に陥ったのは合併による「実質破綻」の件も含めて、リーマン・ブラザーズはじめ投資銀行に限定されたものだ。大手商業銀行も財務内容が極限的に悪化して危機的な状況に陥ったところがあったが、破綻せずに生き残ったのはFRBが「最後の貸し手」となって迅速にドル資金を供給したことで、資金繰りが麻痺せずに済んだからだ。
 これに対し、欧州や新興国の銀行は業績がそれほど悪くなかったにもかかわらず、短期金融市場が機能不全状態に陥ったことでドル資金を入手することができなくなり、存続の危機に陥るところが後を絶たなかったものだ。
 こうした状況を受けて、この巨大な金融危機は米国で起こったにもかかわらず、金融市場関係者の間では改めて米ドルの基軸通貨としての信用が見直されることになり、一般的な認識とは正反対の現象が生じたものだ。


迅速に資金供給に動けば危機を抑え込めると自信を深める

 こうした米国勢によるドルに対する自信は、その後のギリシャ危機を受けてよけいに高まることになった。
 当時、ギリシャを筆頭に財政状態が脆弱なユーロ圏の南欧諸国の国債市況が崩落し、そうした国債を多く保有していた欧州の銀行勢の財務内容の悪化が懸念されたなかで、そうした銀行勢がドル資金を調達することが困難になったことで金融危機が引き起こされる恐れが高まった。これを受けてFRBが他の先進国・地域の中央銀行に対するドル・スワップ協定を拡充し、欧州中央銀行(ECB)を介して迅速にドル資金を供給する制度的な枠組みを構築すると、危機的な雰囲気に一気に後退してダウは400ドル以上も上昇したものだ。

 さらにギリシャ国債が「選択的債務不履行(デフォルト)(SD)」に陥った際に、米系ヘッジファンド群を率いていた米シティ・グループが暗躍したことでその危機を乗り切った経緯がある。銀行に債権放棄を呑ませるにあたり、米系投機筋勢が欧州の銀行勢からギリシャ国債を買い集めて欧州連合(EU)側の欧州委員会と裏交渉し、これを額面での評価で米国債と交換することで折り合いをつけたわけだ。
 それにより米系投機筋勢は“ぼろ儲け”した一方で、欧州側も金融危機を引き起こさずにギリシャ問題を軟着陸させることに成功したといえる。

 いずれにせよ大事なことは、リーマン・ショックにより米国勢は基軸通貨ドルの信用性を再認識し、その後のギリシャ問題の解決を巡りその認識を一段と深めたことだ。米国で銀行不安のようなことが起こりそうになっても、その問題のある銀行に迅速にFRBが資金供給に動けば危機を収束させることができると自信を強めることになった。
 実際にごく最近でも、習近平国家主席主導で積極的に対外膨張路線を繰り広げる中国を“懲らしめる”にあたり、昨年の年初にスタンレー・フィッシャーFRB副議長が「今年4回利上げをするとの見方は妥当」と発言したことで、投機筋軍団に“ゴーサイン”を出して「中国売り」を仕掛けた経緯がある。米国内でもシェール関連企業が発行したハイイールド社債の問題があったにもかかわらず、こうした政策を強行することができたのは、中国はじめ新興国不安が米国にも波及しそうになっても、問題のある銀行に迅速に資金供給することで危機を遮断できる自信があるからにほかならない。
 まさに自国通貨が基軸通貨であるからこそできるものだ。


 週末の明日はこの続きとして最後の締めの文章を掲載します。
 米国が世界覇権を維持していく観点から、より中心的なテーマに迫って考察します。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。