記事一覧

李克強首相から習近平国家主席への主導権の交代が意味するもの

ポイント
・トランプ米政権を構成している米欧二大財閥や軍需産業系は習近平国家主席が専制権力体制を強化し永続化していくことを望んでいるが、本来的に同床異夢の関係にある。
・欧州系財閥やゴールドマンは中国で現政権が成立した当初は、西側流の民主主義体制や市場経済化を導入させていくうえで共青団出身の李克強首相を推していた。
・ゴールドマンは江沢民政権時代から「上海閥」に深く入り込み、胡錦濤前主席をも取り込んだが、習近平主席を米系財閥直系が取り込んだことでシティ系が中国で主導権を握った。



習近平主席を支援しつつも同床異夢の関係にある両財閥

 これまで当欄で述べてきたように、米国側は今秋の共産党大会で習近平国家主席が宣戦権力体制の確立とその永続化を決めるのを支援するために、株高傾向を続けて信用不安が強い状態にならないようにしている。それは、ドナルド・トランプ政権を構成している米ロックフェラー財閥系も欧州ロスチャイルド財閥系も、さらには軍需産業系も望んでいることだ。
 それは、米系財閥や軍需産業系としては中国との間で「新冷戦」構造を構築するうえで習近平主席の強権的な性格が好都合であることや、欧州系財閥としてもユーラシア大陸の巨大な経済圏を構築するうえで、主席が唱えている「一帯一路」構想が望ましいからだ。ただし、両者はともにトランプ政権を構成し、習近平主席を支援している点では同じでもその目的とするものが異なっており、“同床異夢”の関係にある。


欧州系財閥は当初は李克強首相を推していた

 欧州系財閥は当初、中国が保有している巨額な外貨準備を信用の基盤としてユーラシア大陸に数々のインフラ建設を推進して巨大な経済圏を構築していこうとした。人民元を国際通貨に格上げさせるために国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨に加えたり、英国のデヴィッド・キャメロン政権(当時)にアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加させるなどしてきた。
 ところが、中国が天文学的な債務を抱えていることが明らかになったことでひとまずそれを諦め、米系財閥と提携してトランプ政権を成立させた。そのうえで中低所得者層の白人を支持基盤とするトランプ大統領の保護主義的な姿勢を利用して中国を牽制させ、また北朝鮮問題を利用して軍事衝突の危険性を煽りながら原油の供給の停止といった同国への強力な制裁を要求しながら、水面下で人民元の完全市場化や国際会計制度の導入、資本取引の自由化を求めてきたのは、これまで当欄で述べてきたことだ。

 ただ欧州系財閥は、12年11月の共産党大会と翌13年3月の全国人民代表大会(全人代)で現在の指導部が決まった当初は李克強首相を推していた。これは李克強首相の出身母体である共産主義青年団(共青団)の系列が他の系列に比べると腐敗や汚職にまみれておらず、中国に西側流の民主主義体制に徐々に移行させながら市場経済体制を導入していくのに好都合だと見られていたからだ。なにより共青団系の“先輩”である胡錦濤前国家主席が、ゴールドマン・サックス元最高経営責任者(CEO)だったヘンリー・ポールソン元米財務長官と深くつながっていたことが大きかったといえる。
 ゴールドマンは以前には江沢民元国家主席の長男の江綿恒氏を取り込み、さらにその子息――すなわち江沢民元主席の孫の江志成氏がゴールドマンに在籍していたのに見られるように、90年代の江政権期には「上海閥」の系列と深いつながりがあった。ポールソン元長官はその出身の精華大学の卒業生の閨閥に取り入ることで胡錦濤前主席をも取り込むことに成功したものだ。
 胡錦濤前主席がその在任中に上海閥の勢力を排除できず、したがって江沢民元主席が隠然たる権力を保持し続けることができたのは、ゴールドマンの意向が“邪魔をした”からだといった話もあるほどだ。


習近平国家主席に主導権が移るとともに米金融機関の主役も交代へ

 いずれにせよ、中国で現政権が成立した当初、欧州系財閥が胡錦濤前主席の直系である李克強首相を押し立てて市場経済化を推進させようとしたのはこのためだ。当時、李克強首相主導の経済構造改革は日本の安倍晋三政権の経済政策の呼称である「アベノミクス」にちなんで「リコノミクス」と呼ばれたが、これを命名したのがゴールドマンと緊密な関係にあり、実質的にその子会社のような存在であるバークレイズ・キャピタルだった。
 ところが、後に習近平主席が権力を強めて李克強首相を圧倒して権力を自身に集中させていったが、それとともに経済政策の主導権も首相(国務院総理)を頂点とする国務院を抑えて、習近平主席直轄の中央財経指導小組が握るようになっていった。その背景には、習近平主席を米系財閥直系のブラックストーン・グループのスティーブン・シュワルツマンCEOが取り込んだことや、張徳江・全人代委員長が親イスラエル派や極東での特異な宗教勢力のネットワークにつらなる秘密警察部隊による工作活動を繰り広げたことで、人民解放軍の幹部の多くが主席を支持したことが大きかったようだ。
 習近平主席が権力基盤を強化していくとともに、中国で大きく事業展開している米金融機関の主役がゴールドマンから、米系財閥直系のシティ・グループの系列に代わったことも重要である。


 明日、明後日も今回の続きを掲載します。
 明日は習近平がこれまで、権力基盤を強化していく過程と米系財閥のつながり、現在の習近平体制を歴史的な観点から見た性格について検討していきます。
 よろしくお願いします。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

17894176

Author:17894176
永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。