記事一覧

習近平がその地位に就き権力基盤を強化する背景

ポイント
・胡錦濤前政権期に後継の国家主席、共産党総書記を巡り、江沢民元主席の系列は陳良宇・上海市党委員会書記(当時)を就けようとしたが、騙し打ちにあって陥れられた。
・その結果、江沢民系は共青団系の李克強現首相をその地位に就けるのを阻止するため、李長春、張徳江両氏が推す習近平現主席の擁立に相乗りせざるを得なかった。
・習近平主席の背後の勢力は「一帯一路」構想に見られるように親イスラエル系や極東の特異な宗教勢力につらなるところがあり、その強権的な性格で人民解放軍幹部も抑え込んだ。
・習近平主席が政敵を打倒するうえで反腐敗運動を繰り広げるにあたり、協力している王岐山・中央規律検査委員会書記は金融畑を歩んできただけに米系財閥とのつながりがある。
・反腐敗運動では大物政治家を対象とする「虎刈り」では利権を貪ってきた江沢民系が多く、中小物目当ての「蝿叩き」で共青団系が多いのは権力闘争による性格が強いことを物語る。



上海閥の次期国家主席候補を騙し打ちにした勢力

 ここで話は胡錦濤前政権の1期目の末期に遡る。
 当時、07年11月の共産党大会の開催に向けて、胡錦濤前国家主席の後継の国家主席や共産党総書記に事実上、誰が内定するかが重要な焦点になっていた。胡錦濤前主席が当然のことながら共産主義青年団(共青団)系の“後輩”の李克強首相(当時は遼寧省党委員会書記)を推したのに対し、江沢民元国家主席や曽慶紅元国家副主席は上海閥直系の陳良宇・上海市党委員会書記(当時)をそこに就けようと画策していた。
 結局、陳良宇元書記は汚職で摘発され、胡錦濤前主席に近い呉官正・中央規律検査委員会書記(当時)や李源潮現国家副主席(当時は江蘇省党委員会書記)が差し向けた軍勢に捕縛されて失脚していった。

 この政変はいうまでもなく共青団系によるものだったが、“影の主役”が中南海で「反胡錦濤の急先鋒」と呼ばれながら、この時には胡錦濤前主席に陳良宇元書紀を失脚させるように“吹聴”したとされる李長春・党中央精神文明建設指導委員会主任(当時)と、その“盟友”とされる張徳江・全国人民代表大会(全人代)委員長(当時は広東省党委員会書記)だった。
 この両者はそれ以前には江沢民元主席や曽慶紅元副主席に接近していたことから上海閥の系列だと見なされがちだが、本当は異なる系列だ。当時、張徳江委員長は共青団系が上海市に攻め込んできたら援軍を差し向けるという“密約”を交わしていたようだが、それをせずに陳良宇元書紀を“見殺し”にしている。


習近平国家主席誕生の背景とその性格

 後継者を失った江沢民元主席の系列は、それでもどうしても共青団系の李克強現首相が後継の国家主席、党総書記に就くことだけは阻止しなければならなかったため、李長春前主任や特に張徳江委員長が推した習近平現国家主席に「仕方なく」乗らざるを得なかった。それにより、07年11月の党大会では両者がともに政治局常務委員に昇格したが、習近平主席の序列が李克強首相より上位に就いたことで事実上、後継の主席や総書記に内定した経緯がある。
 習近平主席はかつて、曽慶紅元副主席が引き上げて出世した経緯もあるが、国家主席に押し上げたのはあくまでも張徳江委員長の工作活動によるところが大きかったという。

 すなわち、習近平主席は張徳江委員長の背後の勢力である親イスラエル過激派や極東での特異な宗教勢力に連なるところが大きいのであり、「一帯一路」構想も戦前の日本の「大東亜共栄圏」構想に、またその専制的・強権的な性格もファシズム(ナチズムと言い換えても良いだろう)的な要素が強いということだ。無神論的で唯物論的な極左的共産主義(マルクス主義)と唯一絶対神を崇拝する極右的な民族主義が混同しているのは一見、奇妙に思えるが、排他的で無謬性が強い性格であるのは共通している。
 習近平主席は李長春前主任が西洋的な民主制度の導入を退けて最初に唱えた「中華民族の復興」というイデオロギーをさらに推し進めて“教条主義化”し、それにより自身の“神格化”を試みている。それこそはまさにかつて、アドルフ・ヒトラーが唱えた「ゲルマン民族(アーリア人)至上主義」に通じるところがある。


国際金融畑を歩んだことで米国とつながる王岐山書記

 習近平主席は権力基盤を強化していくにあたり、反腐敗・汚職運動での取り締まりを強化することで徐々に専制権力体制を強化していったが、それに協力して強力に推進役を果たしたのが王岐山・現中央規律検査委員会書記だった。この王岐山書記は胡錦濤前政権下で通商・金融担当副首相として先進国の経済金融政策担当者と渡り合ってきたが、それ以前の80年代後半から国際展開している国有銀行の経営畑を歩んできただけに、こうした通貨・金融マフィアたちと深いつながりがある。
 03年前半に重症急性呼吸器症候群(SARS)が蔓延した際に、江沢民元主席ら上海閥が逃げ出した一方で、胡錦濤前主席や温家宝前首相、呉儀元副首相がとどまったことで胡錦濤前主席が江沢民元主席に対して権力基盤を強化したことがあった。当時、その混乱を鎮めるために急遽、王岐山書記が北京市党委員会副書記に就任してすぐに市長も兼任してその“陣頭指揮”に当たり、見事に沈静化させることに成功したことで「消化隊長」「火消し役」などと呼ばれたものだ。

 ただこのSARSというのは、後天性免疫不全症候群(エイズ)と同様に遺伝子操作を駆使して生み出された米国の細菌兵器だとされている。それを当時の中国で感染被害を拡大させたのは、ジョージ・W・ブッシュ政権で主導権を握っていたリチャード・チェイニー副大統領(いずれも当時)が、江沢民元主席の勢力の弱体化を意図して作為的に蔓延させたものだという。胡錦濤前主席や温家宝前首相が逃亡せずにその地にとどまったのは米国側から密かに感染しないことを知らされていたためといったことが言われているが、王岐山書記が当時、陣頭指揮を執るために送り込まれたのも、米国側の意向を受けたものであるということだ。
 だとすれば、反腐敗運動を取り締まる“尖兵役”を担って習近平主席が権力基盤を強めるのに王岐山書記が協力しているのも、米国側の意向が強く働いていると見るのが自然だろう。


権力闘争の性格が強い反腐敗運動

 反腐敗運動では大物政治家を対象とする「虎刈り」から、中小物政治家や役人を対象とする「蝿叩き」に至るまで広範囲に行われた。
 このうち虎刈りについては劉志軍元鉄道相に始まり、周永康前中央政法委員会書記に代表されるように江沢民元主席の系列が多く、郭伯雄、徐才厚両中央軍事委員会副主席といった人民解放軍トップの2人も江沢民元主席に近い人脈だ。江沢民元主席が自身が引退した後も隠然と権力を握り続けてきただけに、その系列の人脈が共産党や行政機関の高官の地位に就いて利権を貪ってきたのだから当然である。
 ただ蝿叩きについては、腐敗や汚職とは最も縁が遠いといわれていたにもかかわらず、共青団系が多く狙われてきた。習近平指導部が推進してきた反腐敗運動は自身の権力闘争よりは、民心の離反を防ぐことがその目的だったといった指摘が見受けられるが、少なくとも共青団系が集中的に狙われてきたところを見ると、権力闘争による性格が強いのも事実である。

 例えば、江沢民元主席の権力基盤が習近平現主席に完全に屈服していくうえで大きなカギを握ったのが、14年12月以降、王岐山書記が率いる中央規律検査委員会が江沢民元主席の子息である江綿恒氏の不正にメスを入れる姿勢を示したことだったとされる。江綿恒氏やその子息の江志成氏がゴールドマンの後押しで香港に投資会社を創設した際に米系財閥直系のブラックストーン・グループが深く関与していたようだが、その同グループが機密情報を暴露したことが、検査委員会が江沢民元主席を追い詰めるうえで大きな役割を担ったという。いかにも権力闘争そのものであるのはいうまでもないものだ。
 おそらく、習近平主席はかつての毛沢東主席やソ連のヨシフ・スターリン書記長、ドイツのヒトラー総統がそうであったように、主に一般民衆への対策は情報統制や宣伝工作、それに実際に抵抗運動が強まれば徹底的に弾圧することで抑え込もうとしているのではないか。


 週末の明日も昨日からの続きを掲載します。
 習近平国家主席を巡り、より足元の情勢や権力闘争に焦点を当てて考察します。
 よろしくお願いします。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

17894176

Author:17894176
永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。