記事一覧

習近平主席の権力強大化とその背後の米系財閥

ポイント
・欧州系財閥はトランプ大統領の保護主義的な姿勢や北朝鮮問題を利用し、さらには銀行を米金融システムから遮断すると“脅し”をかけることで中国に圧力を強めている。
・米系財閥は習近平主席を取り込んでおり、主席が強権的な姿勢を強まれば強めるほど“悪者扱い”して「新冷戦」体制に持ち込むには好都合である。
・今秋の共産党大会の開催を前に習近平主席は自身の権力基盤の強化に動いているが、共青団系を抑え込むには自身が「共産党主席」の地位に就くことが不可欠かもしれない。
・孫政才・前重慶市党委員会書記が陥れられたことで江沢民元主席の系列が完全に力を失ったようであり、習主席としては今度は共青団系をいかに抑えるかが焦点に。



欧州系財閥の中国に対する思惑と戦略

 今、欧州ロスチャイルド系財閥はドナルド・トランプ大統領の保護主義的な姿勢や、北朝鮮問題も利用して最近では同国と密接に取引している丹東銀行を米金融システムから遮断し、それを他の銀行にも拡大させるとして“脅し”をかけている。それにより人民元の市場化を完全に実現させてさらに大きく市況を崩落させたうえで、国際会計制度を導入させて資本取引の自由化を実現させることで、国有銀行や代表的な国有企業を次々に買収していこうとしている。そうすることで中国そのものを“乗っ取った”うえで、ユーラシア大陸で巨大な経済圏を構築しようとしている。
 そこで、欧州財閥系でゴールドマン・サックスにも近い“ハゲタカ”出身のウィルバー・ロス商務長官が通商問題で圧力を強め、ゴールドマン出身のスティーブン・ムニューシン財務長官が北朝鮮と取引している中国の銀行を次々にドル取引から締め出しに動いており、さらに元ゴールドマン社長兼最高財務責任者(COO)のゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長が経済政策全般を統括して中国に圧力を強めている。


習近平主席を取り込んでいる米系財閥の思惑

 これに対し、ブラックストーン・グループのスティーブン・シュワルツマン最高経営責任者(CEO)を介して米系財閥が取り込んでいる習近平国家主席は、現時点で鉄鋼産業に代表される国有企業の改革や国有銀行の不良債権処理に取り組むのに消極的ある。今秋の共産党大会を控えて政治的、経済的、社会的に動揺することを避けようとするのは当然だが、なにより現時点ですぐにそれに動けば欧州系財閥の思惑通りになるので、自身の背後に控えている米系財閥の利害に反するからだ。

 とはいえ、国有企業や国有銀行の幹部の多くは江沢民元国家主席の系列に近い人脈で構成されているため、習近平主席としてはいずれかの時点で抜本的な整理淘汰に踏み切る必要がある。党大会で自身が専制権力体制を確立してからそれに踏み出せば、それに反対する勢力を難なく抑え込むことができ、また社会的に動揺が強まってもそれを強権的に制圧することができる。
 それにより国際的に悪評が強まれば、本当は裏側で習近平主席とつながっている米系財閥や軍需産業系が、中国を「悪の帝国」と呼んで「新冷戦」体制を構築していくうえでも好都合である。また習近平主席の権力基盤が盤石な状態になれば、国有銀行の整理淘汰や国有銀行の不良債権処理に伴うビジネスはブラックストーン・グループはじめ米系財閥の系列がそのかなりの部分を担うことができる。


自身の最高権力者の地位への延長や終身化が不可欠か

 今週の共産党大会の開催を控え、さらには間もなく秘密裏に開かれる引退した大物政治家が集まる北載河会議を前にして、習近平主席は最近、蔡奇・北京市長を北京市党委員会書記に昇格させ、さらに重慶市党委員会書記に陳敏爾・貴州省党委員会書記を就けることに成功した。重要な都市のトップの地位に自身に近い人物が就いたことで、この両氏は党大会で確実に政治局員に就任することになる。
 とはいえ、習近平主席としては両氏を政治局常務委員に送り込むことができない以上、絶対権力を握るには自身が共産党総書記の任期の延長に成功するか、より強力なのはかつての毛沢東主席のように終身的に最高権力者にとどまることができる「共産党主席」のポストを復活させてその地位に就くことだ。


上海閥は壊滅か、習近平主席の権力が強大化したのか?

 ただ今回の主要都市のトップの人事で注目されるのはかつて、上海閥の若手のホープとされた孫政才・重慶市党委員会書記が失脚したことだ。この人物は昨年の北載河会議では共産主義青年団(共青団)系の胡春華・広東省党委員会書記とともに、“次世代組”としてはこの2人だけが呼ばれたことで事実上、今秋の党大会で政治局常務委員に昇進することが“内定”していたはずだった。
 にもかかわらず今回、そのうちの1人が失脚したことは、江沢民元国家主席の権力基盤が極めて弱体化していることや、習近平主席がかつての国家主席経験者の権力者を抑え込むほど強大化したということを意味する。いうまでもなく、それはその背後に控えている米系財閥が勝利したことを意味する。

 ただし、もう1人の胡春華党委員会書記を抑え込まないと、次期政治局常務委員には李克強首相が留任するのをはじめ李源潮副主席や胡書記、さらには汪洋副首相も昇格する可能性があることで、共青団系がかなり占めることになる。このため、習近平主席が米系財閥の後押しを受けてこれからこの勢力をどのように抑え込むかが大きな注目点の一つになりそうだ。


 今週はこれで終わりになります。
 来週はまた週明け24日(月)から掲載していくので、よろしくお願いします。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

17894176

Author:17894176
永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。