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日銀が支える米ドル基軸通貨の信用

ポイント
・足元ではドル安圧力が根強い状態だが、ドル・円相場は1年サイクルが底入れしていることや、ファンダメンタルズ面からそろそろ本来の上昇局面に回帰しておかしくない。
・日銀は先週の金融政策決定会合で現行の超強力な金融緩和策をまだしばらく続けることを宣言したが、GDP見通しを引き上げたのは追加緩和策見送りの名分のためだ。
・米権力者層や政策当局は作為的に新興国危機やリセッションによる戦争を引き起こそうとしているが、それは米ドルの基軸通貨としての信用への自信がその基盤になっている。
・そうした米ドルの自信は日銀が超強力な緩和策を維持していることがその前提になっており、それにより新興国を疲弊させていくのは90年代後半にも見られた現象だ。



これ以上の円高・ドル安は想定していない

 ドル・円相場は6月14日の1ドル=108円84銭の安値から、米連邦公開市場委員会(FOMC)での超タカ派的な政策決定を機に上昇していったが、7月11日の114円47銭をピークに、翌12日のジャネット・イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言を機に下落傾向に転じている。
 ただ中期的な観点でいえば、英国の欧州連合からの離脱(ブレグジット)が決まった際の昨年6月24日の99円の安値を起点に始まった1年サイクルが、今年4月17日の108円13銭か、もしくは6月14日の安値で終わって底入れしていると思われるので、これ以上、下げていく展開は予想していない。そろそろ本来の上昇傾向に回帰していくのではないか。

 ファンダメンタルズ面では明らかに円安・ドル高に有利な状況だ。19~20日の日本銀行(日銀)の金融政策決定会合の際に公表された展望リポートでは、CPIの見通しが17年度の1.4%から1.1%に、18年度も1.7%から1.5%に引き下げられたことで、少なくともこれまでの“キチガイじみた”超強力な金融緩和策がまだしばらく続けることが実質的に「宣言」されたといえる。
 ただ、同時に実質国内総生産(GDP)成長率の見通しがそれぞれ1.6%から1.8%、1.3%から1.4%に引き上げられたのは、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」や、日銀がこれまで推進してきた超金融緩和策の成果を誇示するためだけではない。これまで、CPIの見通しを引き下げた際にはさらなる強力な緩和策を決めたものだが、今回は追加緩和策の決定を見送るにあたり、その名分が必要だったからだ。


米ドルの信用への自信が戦略的なFRBの政策運営をもたらす

 これまで当欄で指摘しているように、米権力者層はFRBにバランスシートの縮小を経済情勢とは無関係に粛々と推進させながら、同時並行的に「緩やかに」利上げも進めさせることで、作為的に新興国危機を引き起こそうとしている。そうすることで比較相対的に「米国一人勝ち」状態を現出していきながら、同時に米国経済を景気後退(リセッション)に陥らせることで、米国が世界覇権国としての地位を維持するのに不可欠な戦争を引き起こして最強の軍事力を維持していく必要があるからだ。
 ただ米国がそうした政策を推進できるのは、あくまでも米ドルが基軸通貨としての信用を維持していることがその基盤になっている。だからこそ、新興国市場から米金融市場に資金還流が進むことで米国が受ける痛手は比較的軽微なもので済むのである。また米金融システムが危機的な状況に陥っても、問題のある金融機関に迅速に流動性を供給することで危機を脱することができるという、権力者層や金融資本家勢、政策当局の間での自信になって表れている。


日銀の超強力な金融緩和策が米ドルへの信用の担保に

 ただし、いかにドルに対する自信を強めているとはいっても、それはあくまでもドルが基軸通貨としての信用を維持し続けることがその大前提なのであり、それを“担保”しているのが日銀の“常軌を逸する”ほどの超強力な金融緩和策なのである。
 90年代に当時のビル・クリントン政権下でロバート・ルービン、ローレンス・サマーズ両財務長官がグローバリズム戦略とともにドル高政策を推進することで、97年7月のアジア通貨危機から始まり翌98年8月のロシア危機に至るまで新興国を疲弊させながら、米国だけが繁栄する状態を現出することができた。その背景には、日本を金融危機に陥るほど経済・金融情勢を悪化させることで、日銀が強力な量的緩和策を続けていたことがその基盤になっていたものだ。

 今後、FRBが金融政策の正常化に向かう一方で日銀には現行の緩和策を続けさせておきながら、実際に新興国通貨危機が起こってそれが米国にも波及しそうな段階になれば、日銀にヘリコプターマネー(ヘリマネ)政策や、場合によっては外債購入も含めた追加緩和策に踏み込むことが既に“内定”しているといって過言ではない。
 それこそが、FRB執行部で主導権を握っているスタンレー・フィッシャー副議長が最高幹部に名前を連ねており、また日銀の黒田東彦総裁の後見人である行天豊雄元大蔵省財務官も所属しているグループ・オブ・サーティ(G30)の意向にほかならない。


 明日はこの続きとして、以前と現在とでの支配的な経済・金融政策の論調を比較しながら、最近では日米両政権が陥れられている背景について考えます。
 明後日以降の週末2日間はCBが来年初からテーパリングに動くことが実質的に内定していますが、その背後のドイツとの関係、さらには米国をもまじえた戦略と裏事情について考えます。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。