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李克強首相が主導権を握り米金融資本には好ましい状況に

ポイント
・中国では米国から金融攻撃を受けたことで習近平国家主席の権力基盤が動揺しているが、それは米国で「新冷戦」構造を構築しようとしている勢力には不都合である。
・李克強首相が主導権を握っていることで米国では今では金融資本が前面に出ているようであり、最近のシリアをめぐる米ロ対立の再燃もそうした事情が見え隠れしている。
・安倍政権としては防衛費のさらなる負担を求められるとはいえ、アジア共同体の構築を目指すうえでロシアとの関係を考えるとトランプ候補が勝利した方が望ましいはずだ。



米軍需産業や安倍政権に不都合な習近平の権力基盤の動揺

 今週、掲載してきた原稿の最後に、「新冷戦」時代で敵対することになる中国との関係も見る必要があるだろう。今回はごく簡単に要旨だけを述べることにする。
 これまで当欄で述べてきたことだが、中国では人類史上、未曾有の超巨大バブルが崩壊に向かい、国有企業の過剰生産能力≒国有銀行の不良債権の問題に対処していくにあたり、習近平国家主席は海外のインフラ需要を取り込んで対処していこうとした。
 そのためにかつて、江沢民政権下で故・鄧小平の意向を受けた朱鎔基首相(当時)が米国勢はじめ外資と提携して国有企業の分割民営化を推し進めたが、それと逆行する「国進民退」政策を推進した。基幹産業の国有企業をさらに統合することで、他の新興国でインフラ需要を獲得するにあたり、日米欧の有力大企業との受注競争で打ち勝つことを目指した。
 またそうした経済面だけでなく、イデオロギー面で「中華民族(帝国)の復興」を掲げることで、軍事面でも東シナ海や南シナ海で強硬に進出を繰り広げるなどして対外膨張路線を強行していった。

 こうした習主席の対外強硬路線は、米国で中国を相手に新冷戦構造を構築しようとしている勢力にとっては好都合である。極端な話として大きな観点で見れば、習主席を背後で操っている勢力と米国で石油・軍需産業が支持している勢力は、日本の安倍晋三首相の背後の勢力や北朝鮮の軍部も含めて、イスラエルや極東アジア地域に浸透している特異な宗教団体につらなるものだ。
 ただ、こうした習主席主導による「一帯一路」構想は、昨年8月11日の人民元切り下げを機に、また年明け以降の2回にわたり、FRBが利上げをちらつかせることで中国から資本流出を促しながら、米系投機筋が人民元相場や中国の株価を売り崩したことであえなく挫折してしまった。人民銀行がつねに強力に元買い介入を続けたことで外貨準備が激減してしまったため、海外のインフラ需要を受注するにあたり信用が著しく低下してしまったからだ。


李克強首相を支持する米金融資本が前面に出る

 その結果、中国では国内経済政策の主導権が構造改革の推進を主張している李克強首相に移ってしまった。
 李首相は巨大なバブル崩壊に対処していくにあたり、かつての朱元首相の路線に回帰して外資と提携しながら、“ゾンビ化”した国有企業の整理淘汰を進めるなど国有銀行の不良債権の償却を推進していこうとしている。それだけでなく、市場経済システムを導入して非効率で不透明な経済構造からの脱却を図ったり、1日に人民元が正式に国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)に採用されたなかで、資本取引の自由化も推進しようとしている。
 いうまでもなく、バブルが崩壊に向かっているなかでそうした政策を性急に推進すると信用収縮を促進させかねないので、そのあたりは米国側も了解しているようだが、いずれは抜本的にそれを進めることを求めているのはいうまでもないことだ。当然のことながら、米国ではこうした李首相の路線は歓迎すべきものである。

 習主席が打撃を受けて李首相に主導権が移ったなかで、つい最近、9月4~5日に杭州で開催された主要20ヵ国・地域(G20)首脳会議(サミット)では、習主席は自国で開催されていたにもかかわらず米欧勢の攻勢の前に“防戦一方”になってしまい、首脳宣言に構造改革の推進も盛り込まれてしまった。こうした状況を見る限り、米国ではヒラリー・クリントン前国務長官を支持している金融資本の意向が前面に出ていることがうかがわれる。
 もとより、ドナルド・トランプ候補を支持している外交問題評議会(CFR)系主導で、中東ではロシアにその地域の管理を任せることになり、特にシリアではそれによりバッシャール・アサド政権が存続することが決まったはずである。にもかかわらず、ここにきて同国の情勢をめぐり再び米国とロシアの対立が強まってきた背景には、そうした事情があると考えれば得心がいくだろう。


安倍政権にも大きな影響が・・・・

 米国でクリントン前国務長官とトランプ候補のどちらが11月8日の大統領選挙で勝利するか、すなわちどちらがその背後で支えている勢力が主導権を握るかは、いうまでもなく日本の安倍政権の今後の政策運営にも非常に大きな影響をもたらすものだ。
 どちらの候補者が勝利しても新保守主義(ネオコン)派が主導権を握ることで、中国を相手に新冷戦構造が構築されていくことは変わらない。ただ、安倍首相はその特異な背後勢力を介してロシアのウラジーミル・プーチン大統領とも親しい関係にあり、本来的に日米関係を強化していくとともに、宗教を否定する唯物論的な共産党一党独裁体制下の中国を除外したうえで、アジア地域でも共同体的な経済圏を構築していくことに関心があると見られる。
 そうした意味では、安倍首相としては大統領選挙でクリントン前国務長官が勝利するよりは、防衛費のさらなる負担を求められるとはいえ、トランプ候補が次期大統領に就任した方が望ましいといえる。今ではトランプ候補の支持に回っているCFR系につらなる国務省官僚群が擁立している小池百合子・東京都知事と安倍首相が裏側で接近しているのも、そうした事情があるようだ。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。