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WTO体制を無視し新国際通商体制の構築を目指す米系財閥

ポイント
・米国側が中国に圧力を強めるにあたり、通商法301条の適用を検討しているが、他の銀行にも制裁を広げると連鎖的に金融危機が起こりかねないことがその背景にあるようだ。
・この制度を適用するとWTO違反になるが、米国は「新冷戦」構造に移行していくにあたり新体制への移行を欲しており、この体制を存続させる気はないようだ。



通商法301条の適用を検討している背景について

 米ドナルド・トランプ政権は中国に対して圧力を加えるにあたり、最近ではロバート・ライトハウザー米通商代表部(USTR)代表が通商法301条の適用を念頭に、中国の貿易慣行の調査を検討していることを明らかにした。
 この通商法は米国側による一方的な調査の結果、貿易相手国が不公正な貿易をしていると判断すれば、自国の産業を保護するために関税の引き上げや相手国に輸出自主規制を呑ませるといった貿易制限を導入することが出来ることになっている。80年代のロナルド・レーガン政権期に日米貿易摩擦が高まった際には、米国側はこの制度を適用すると“脅し”をかけることで日本側から譲歩を勝ち取ろうとしたものだ。
 トランプ大統領は昨年の大統領選挙戦中に中国製品に45%の関税をかけることを提唱していたが、この制度を適用するということは、中国に対して圧力を強めるにあたり当時の路線に回帰することになる。
 ライトハウザー代表は中国側による不公正慣行の対象として、鉄鋼に代表されるダンピング(不当廉売)が疑われる輸出品だけでなく知的財産権の問題も視野に入れるとしている。このため、適用されれば「クロ」判定になり、中国側は極めて高率の関税を課される公算が高い。

 いうまでもなく、米国側がこうした措置の導入に踏み切ることに対しては、トランプ政権の外部にとどまらず、内部からも反対する意見が根強いはずだ。
 にもかかわらず、米国側がこうした措置に踏み切ることを検討しているのは、欧州ロスチャイルド財閥主導で中国に対して圧力を強めるにあたり、丹東銀行以外の中国の銀行に米金融システムから遮断する措置を拡大させることには慎重にならざるを得ないからだ。他の銀行にも拡大させていくと多くの銀行がドル資金を調達できなくなって連鎖的に次々に破綻していく可能性があるが、そうなると中国だけにとどまらず、世界的に危機が波及する恐れが出てくるからだ。
 特に米国側の最大のターゲットは四大銀行の一角である中国銀行であるようだが、日本のメガバンクを大きく上回るほどの預金量の規模を誇っているだけに、世界の金融システムや経済情勢に極めて深刻な事態を引き起こしかねない。そこで、世界貿易機関(WTO)ルールに明確に違反していることから封印しているはずの通商法301条の適用を検討しているのだろう。


新冷戦体制に適合的な国際通商体制の構築を目指す

 もっとも、この通商法を適用することについては、欧州系財閥主導による中国に対する強硬路線に反対し、習近平政権に米国側の要求を全面的に拒絶させている米ロックフェラー財閥としても、本音では同調することを望んで後押ししている面もあるようだ。米系財閥は軍需産業主導で中国を相手に「新冷戦」構造を構築しようとしているが、そのためには中国やその“衛星国”を世界通商・貿易システムから排除しなければならないからだ。
 そもそも、現行のWTO体制というのは東西冷戦が終わり、同時並行的に情報技術(IT)革命が進んだこともあって多国籍企業がグローバル生産体制を構築するにあたり、新たに市場経済圏の仲間入りをした旧社会主義諸国や途上国を欧米勢のルールで統合するために制定されたものであり、特に中国をそこに引き入れることを主眼としていたものだ。ところが今ではグローバル生産体制が機能しなくなり、代わって軍需主導で経済成長路線を追求しようとしているなかでは、それに適合するような国際システムに代えていかなければならない。
 そこで保護主義的な性格が強いトランプ大統領を“暴れさせる”ことで既存の秩序を“破壊”させ、そのうえで同盟国や有志国と二国間で通商協定を結ぶことでそれを重層的に発展させていき、それを新たな国際通商体制にしていこうというわけだ。

 かつて、第二次世界大戦が終わった直後にはソ連やその衛星国である東欧諸国も国際通貨・通商体制に加盟していたが、その後米国はそれらの国々が離脱していくように仕向けていった。そのうえで、同盟国や属国群と個別に交渉していき、それを重層的に拡大していくことで成立した国際通商体制が「関税と貿易に関する一般協定(ガット)」体制である。
 一方で、離脱していったソ連は衛星国群と閉鎖的な「経済相互援助会議(コメコン)」を結ばざるを得なくなった。それにより世界情勢は米国を中心とする自由主義・資本主義国家群と、ソ連を盟主とする社会主義国家群との間で巨大な対立軸が生み出され、発展していった。
 これまで、ユダヤ人の金貸し業者や金細工業者はカルビン派のプロテスタントを育成し発展させることで、キリスト教世界でカトリック教会との間で巨大な対立軸を構築して以来、つねに世界情勢をそうした状態に陥るように編成してきた。それにより戦争が起こりやすくなったり軍拡競争をするようになることで「死の商人」的な営利活動をしたり、当事国が戦費を賄うために債務を累増させるのに応じて巨大な債権者になることでその国を操ってきた。
 今、欧州系財閥は中国そのものを“乗っ取る”ことを目論んでいるのに対し、米系財閥は「悪の帝国」に仕立てることを考えており、両財閥は“同床異夢”的な関係にある。それでも、長期的に米国に代わって世界覇権国になることが見込まれる中国を利用し、操ろうとしていることは共通している。
 私たちは米国中心の世界システムがこのまま続くかどうかといったことや、中国が覇権を奪い取るか否かといった単純な視点で見るのではなく、より内部に潜んでいる巨大な真理に目を向ける必要がある。


 今週はこれで終わりになります。
 来週もこれまで通り、週明け14日月曜日から掲載していくので、よろしくお願いします。
 北朝鮮問題が緊迫しており、米国との間で衝突の危険性が高まっていますが、筆者なりの分析をしていきたいと思います。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。