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ロシアを利用する米系財閥とそれに脅威を感じる欧州勢

ポイント
・米朝間で軍事衝突の危険性が高まるなかで中ロ両大国は自国軍を北朝鮮との国境に向かわせたが、北朝鮮側はロシア軍だけを自国内に引き入れ、そのロシア軍に牽制されて人民解放軍は国境で身動きが取れずにいる。
・米系財閥主導の米国はロシアとともに北朝鮮を統治していこうとしているが、そのためには先に北朝鮮に攻撃をさせて米軍が空爆する形で軍事衝突を引き起こす必要がある。
・米国がロシアと提携すれば安全保障面で欧州にとってはかなりの脅威になるが、オリガルヒを撃滅してきたように欧州系財閥にとってもプーチン政権は脅威である。
・朝鮮半島北部は世界最大のウラン鉱石の埋蔵量を誇っており、これをロシアとともに米系財閥が手に入れれば核武装面で世界的な軍拡競争で優位に立つと同時に、エネルギー産業面でも石油産業主導の米系財閥は原発産業の優位性を欧州系財閥から奪い取ることが出来る。日本の核武装に道を開く可能性も。



ロシア軍が北朝鮮国内に進駐し中国軍は国境沿いに足止めに

 注目されるのは、今回の北朝鮮問題をめぐりロシア軍が同国内に進駐しているのに対し、中国の人民解放軍が中朝国境で“足止め”になっていることだ。ドナルド・トランプ政権下の米国と北朝鮮との関係が険悪化していき軍事衝突の危険性が増してきたなかで、中ロ両大国はともに難民が自国内に流入するのを阻止するために北朝鮮の国境沿いに自国軍を展開させた。ただ、北朝鮮はロシア軍だけを自国内に引き入れたのに対して中国軍には今でもそれが認められていない。
 以前、米国は金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長本人を殺害する「斬首作戦」に踏み切るといったことがいわれていたが、本当はそれを考えていたのは中国の方であったのだから、北朝鮮側が中国軍を自国内に入るのを認めなかったのは当然だ。ただ、金委員長や朝鮮人民軍が親イスラエル派や共和党系新保守主義(ネオコン)派に操られていることを考えれば、それも当然であるといえよう。
 むしろ、ロシア軍は米軍の代わりに中国軍が朝鮮半島に進軍して主導権を握ることを阻止する役割を担っているとさえいえるだろう。

 第二次世界大戦が終わって米国とソ連との間で冷戦構造が構築されて以来、朝鮮半島は両勢力の緩衝地帯の役割を担ってきたが、特に北朝鮮は中国が米国の影響力が浸透するのを阻止する重要な地帯だった。だからこそ中国は北朝鮮の体制を崩壊させることができず、北朝鮮がミサイル発射や核実験といった中国が嫌がることを繰り返し実施しても、それでも中国は北朝鮮を支援し続けてきた。
 そうした北朝鮮に対し、米国は韓国に併合させることで朝鮮半島を統一させ、半島の北部にまで米軍が進駐することなく、代わりにロシア軍に進駐させることで実質的に米国も同国とともに統治していこうというものだ。それによりこれから構築されていく中国との「新冷戦」構造においては、もとより軍事力や経済・金融面で米国がかなり有利な状況ではあるが、体制が崩壊しなくても実質的に北朝鮮が米国側の陣営に握られることで、一段と中国に対して優位な状況に立つことができることになる。


いったんヤラセ的な軍事衝突が起こる可能性も

 ただそのためには、米国と北朝鮮との間でいったん軍事的な衝突が起きる必要がある。これまで、当欄では米国と北朝鮮との間の軍事的な緊張は多分に“ヤラセ”としての性格が強いので実際には衝突は起こらないと述べてきたが、むしろ“ヤラセ”の衝突を引き起こす必要があるというわけだ。衝突が起これば北朝鮮軍の兵士がほぼ飢餓状態で機能不全状態にあることが明らかになり、名実ともにロシア軍に治安の維持を依存しなければならない状態を現出できるからだ。
 北朝鮮側が先に攻撃を仕掛け、それを米軍側が応戦する形で空爆に限定して反撃すれば、中国としては必ず中立的な立場を守らなければならなくなり、いっさい手出しができなくなる。おそらく、今月21日以降の大規模な米韓合同軍事演習の実施か、特に9月9日の北朝鮮での建国69周年を機に6回目の核実験が行われるなど、今秋の共産党大会の開催を控えて中国側が身動きが取れない間に、「真珠湾攻撃」のような形で北朝鮮側に先に攻撃をさせるのではないか。


ロシアの台頭は欧州には強烈な脅威に

 米国とロシアが提携することになったのは、いうまでもなく欧州としては安全保障面だけでなく、欧州ロスチャイルド財閥としても非常に脅威であり、まさに悪夢にほかならない。
 安全保障面では米国が北大西洋条約機構(NATO)からの脱退をほのめかしていることで欧州が危機感を覚えており、今のところ米国側は欧州諸国に対してさらなる国防費の拠出による分担の増加を求めているが、将来的には実際に離脱を考えているようだ。それにより欧州は近代以来の念願である東方に影響力を拡大させることができる一方で、米国も以前に比べると世界覇権国としての地位を維持するだけの国力が衰えているなかで、欧州面での地域負担を軽減することが出来る。

 またロシアが強大化することは欧州系財閥にとってもかなりの脅威であり、実際に近代以来、同国の南下をいかに食い止めるかが当時の世界覇権国である英国のグローバル戦略の主要な関心事だったものだ。例えば西方の小アジア方面では、「瀕死の病人」といわれたオスマン帝国を支援して露土戦争やクリミア戦争に介入していったものだ。
 また極東でもロシアの南下政策を阻止するため、徳川幕藩体制下の日本を開国させて自分たちの傀儡である近代国家としての明治政府を樹立させ、そのうえで日露戦争で日本を支援してロシアを敗北させたものだ。当時、日本政府が戦費を調達するにあたり、ロンドンで国債を発行できたのはロスチャイルド商会が支援したためであり、また欧州系財閥であるニューヨークのクーン・ローブ商会も積極的に融資をしたものだ。欧州系財閥にとって、ロシアはまさに“究極の敵”とでも言い得る存在なのである。


もとより反欧州系財閥の性格が強いプーチン政権

 もとよりウラジーミル・プーチン政権は、90年代にボリス・エリツィン政権が欧州系財閥主導で米ロックフェラー財閥が相乗りしていた欧米金融資本に乗っ取られて身動きが取れなくなり、機能不全状態と化したなかで、99年12月31日にロシア国家の再生を託されて実権を奪い取った経緯がある。
 このため、プーチン政権の初期の政策的な関心は、払い下げられた国家資産を多く集めて取得していき、欧州系財閥と深い関係を築くことで一段と富裕化した「オリガルヒ」と呼ばれた新興財閥勢力をいかに“叩き潰す”かにあったといって過言ではない。エリツィン政権末期に実権を握ったボリス・ベレゾフスキーを追放したのをはじめ、最も反政権的な姿勢を示したユコスの「石油王」ミハイル・ホドルコフスキーを陥れたのはそのためだ。
 プーチン大統領は個人的にドイツのアンゲラ・メルケル首相と良好な関係にあるとはいえ、欧州系財閥とは敵対関係にあった。そのため、歴史の大きな転換期を迎えたなかで米系財閥と提携する姿勢を打ち出したのは、ある意味では当然だったといえるかもしれない。


世界最大のウラン鉱石の埋蔵量を誇る地域をめぐる争奪戦

 もう一つ指摘できるのは、朝鮮半島北部はウラン鉱石の埋蔵量が世界最大であることがいわれていることだ。バラク・オバマ前政権末期にロシアが核兵器削減条約の交渉を拒否したのは、米国の次期政権下でこの地域を領有していこうという目論見が当時からあったからかもしれない。また米国側でも、トランプ大統領が核兵器の増強を宣言したことも、このことと関係しているかもしれない。
 だとすれば、おそらく将来的には韓国をはじめ、日本やさらには台湾も核武装が米国から認められていき、それにより米国としては自国が戦費の負担を軽減しながら周辺国の核武装化を利用することで中国を威嚇していくことができる。
 それ以上に重要なのが、米系財閥が石油を中心に化石燃料で主導権を握っているのに対し、原子力発電の分野ではもとより欧州系財閥が主導権を握っていたが、11年3月11日に東日本大震災の発生とともに東京電力福島原子力発電所の事故が起こったのを機に、各地の原発が稼働を停止したことで打撃を受けている。今後、世界最大の埋蔵量を誇る地域をロシアとともに米系財閥が握っていけば、この分野の主導権を欧州系財閥から奪い取ることができる。

 日本では安倍晋三政権が米国から“お墨付き”を得たことで、“堂々と”ロシアのプーチン大統領と個人的に交渉できるようになり、日本の財界がユーラシア大陸に進出していくのを後押ししようとしている(首相自身は本音では北方領土の返還にはあまり関心がないようだが)。ただ、政府は停止している原発の再稼働を後押ししているが、これから北朝鮮国内のウラン鉱石が大規模に生産されるようになり、安価で出回るにつれて原発の利権を首相官邸に近い筋が握っていくのだろう。日本の核武装が認められればなおさらそうした傾向が強まるはずであり、またそのためにも平和憲法の改正を実現させたいところだろう。


 今週はこれで終わりです。
 来週もこれまでと同様に週明け21日(月)から掲載していくので、よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。