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習近平による専制権力体制の確立と国有企業改革の推進

ポイント
・10月の共産党大会の開催に向けてまだ予断を許さないが、現在のところ、新政治局常務委員の顔ぶれは習近平派が4人と過半数を占め、共青団系が3人とそれに続きそうだ。
・孫政才の失脚もあって江沢民派は壊滅状態になりそうであり、先の北載河会議では習近平が胡錦濤と提携して江沢民や曽慶紅に打撃を与えたことが推察される。
・江沢民派は国有企業の多くの利権を握っているだけに、これからその改革が推進されていくことで腐敗や利権が炙り出されていき、習近平に奪い取られていきそうだ。



次期政治局常務委員の顔ぶれについて

 読売新聞が“すっぱ抜いて”24日付で1面に掲載された中国の次期政治局常務委員の顔ぶれでは、まだ最終決定ではないとはいえ、習近平国家主席の系列が4人と過半数を占め、胡錦濤前国家主席が率いる共産主義青年団(共青団)系が3人となった。江沢民元国家主席の系列は、“若手のホープ”だった孫政才前重慶市党委員会書記が失脚させられたことで、そこにまったく入れなかった。
 習近平主席の系列は自身が序列1位で留任するのに加え、5位に韓正上海市党委員会書記、6位に栗戦書中央弁公庁主任がそれぞれ政治局員から昇格し、7位に陳敏爾重慶市党委員会書記が中央委員から2段階特進するとされている。焦点となっていた王岐山中央規律検査委員会書記が慣例を破って留任しなくても、習主席の系列が過半数を占めるもようだ。これに対し、共青団系は序列2位で李克強首相が留任するのに加え、新たに汪洋副首相と胡春華広東省党委員会書記が政治局員から昇格して3人を占める。
 習近平主席の系列は自身以外の3人が新たな常務委員のうち下位の序列に甘んじることになるが、それでも栗戦書主任が次期中央規律検査委員会書記に、陳敏爾書記が次期中央精神文明建設指導委員会主任と、強権力を維持していくうえで不可欠な治安やイデオロギー部門を統括する役職を確保することになりそうだ。
 ただし、これはまだ最終決定ではなく、焦点となっている定年延長問題をはらむ王岐山書記の留任や、2階級特進の是非をめぐり陳敏爾書記の就任が実現するか、予断を許さない面がある。10月18日の共産党大会や、それに先立つ11日の第18期中央委員会第7回全体会議の開催を控えて、習近平主席の「共産党主席」への就任や自身の共産党思想への採用の可否をめぐり、まだまだ激しい駆け引きや政治権力闘争が繰り広げられそうだ。


江沢民派が握っている巨大な利権を奪い取ろうとしている習近平

 上記の新たな政治局常務委員の顔ぶれでまず注目すべきなのは、孫政才前書紀を失脚させたことで江沢民元主席の勢力が完全に“消滅”している一方で、共青団系が3人を占めており、過半数には届かないもののそれなりの勢力を維持していることだ。先の北載河会議では習近平主席が胡錦濤前主席と提携して江元主席や曽慶紅元国家副主席を完全に追い詰めて事実上、失脚させたことがうかがわれる。
 どうしてこうした勢力配分になったのかというと、一つにはおそらく、かなりの部分が“面従腹背”によると思われるが、共青団系が習主席に対して完全にその強権力を受け入れて従う姿勢を見せていたことだ。また、共青団系にはもとより自由化、市場経済化への志向が強いなかで、以前から支援していた欧州ロスチャイルド財閥はじめ欧米の資本の意向が働いた可能性がある。
 ただそれ以上に重要なのが、共青団系はあまり利権を握っていないのに対して江沢民元主席の系列は今でも国有企業を中心に巨大な利権を握っており、その利権を習近平主席が奪い取ろうとしていることだ。


国有企業の整理淘汰の推進で国有企業の腐敗や利権が炙り出されていく

 かつて、90年代の江沢民政権下で、朱鎔基首相(当時)は最高実力者だった鄧小平の後ろ盾を得て国有企業を分割民営化していき、硬直化した国有企業にメスを入れて民間企業による競争意識を芽生えさせて活性化させようとした。ところが、それにより払い下げられた株式を集めるなどで江元主席に近い勢力が中心になって大量に取得していったことで、巨大な利権と腐敗の構図が慢性化し一段と強くなっていった。
 現在の習近平主席は「国進民退」と呼ばれるように、基幹的な大型国有企業を合併させてさらに巨大化させながらその集約を推進している。その背景には、一つには「一帯一路」構想を推進していくにあたり、他の新興国からインフラ建設を受注していくには欧米や日本の先進国・地域の大型企業と競争することになるが、規模の利便性を追求することでそれに打ち勝つには有利になることが指摘されている。ただそれだけでなく、国有企業の整理淘汰を推し進めることで江沢民元主席の系列による利権や腐敗が炙り出されていき、そうした利権を習主席が奪い取るのに好都合であることにも留意する必要がある。

 これまで、習近平主席は今秋に5年に一度の共産党大会の開催を控えて“安全運転”に終始し、経済状態に悪影響がもたらされることがないように国有企業の改革を先送りしてきた。欧米の権力者層もそれを容認してきたのであり、米連邦準備理事会(FRB)もそれに協力して追加利上げに向けた姿勢を後退させてきた。
 ところが、実際に専制権力者としての地位を手に入れてしまえば、習近平主席は今度は一転して国有企業の整理淘汰を活発に推し進め、その利権を奪い取ろうとするだろう。いうまでもなく、それにより生じる不良債権処理ビジネスはブラックストーン・グループがほぼ一手に受注していくのだろう。またFRBも積極的に利上げを推進していくことで、習主席が国有企業改革を推進していきやすい環境の設定に協力していくことになるのではないか。


 今週はこれで終わりです。
 来週もいつも通り4日の月曜日から掲載していくので、よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
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