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従来のFRBの政策姿勢が好都合だった欧州系財閥

ポイント
・G30から送り込まれてFRB執行部で主導権を握っていたフィッシャー副議長が辞表を提出したのは非常に重要なことであり、FRBの金融政策が変わる可能性を秘めている。
・フィッシャー副議長主導でFRBが金融政策の正常化を目指していた目的は、資産価格高騰の抑制や新興大国を衰亡させて米国優位の状況を招来させること、米国の対外債務の帳消し等がある。
・欧州系財閥は中国を追い詰めて人民元安を推し進め、将来的に国有銀行や国有企業の買収を目論んでいるので、FRBの政策姿勢は誠に都合が良いものだった。
・欧州系財閥は通商問題で圧力を強めるうえで北朝鮮問題を“手段”として利用していたのであり、この系列が主導権を握っている限り武力行使はあり得ないものだった。
・欧州系財閥と米系財閥直系のフィッシャー副議長が主導権を握っているFRBの金融政策の利害が一致していたのは偶然の産物であり、状況が異なれば一致しなくなって当然だ。



フィッシャー副議長が辞表を提出した背景とは?

 先週末の円高・ドル安の要因としては北朝鮮問題による地政学的リスクや米国ではハリケーンの問題が指摘されているが、中長期的なトレンドの変化をとらえるという観点から最も象徴的で非常に重要なのが、スタンレー・フィッシャー米連邦準備理事会(FRB)副議長が辞表を提出したことだ。その理由は表向き個人的なものとされているが、実際にはフィッシャー副議長は金融規制重視派であり、ドナルド・トランプ政権が推し進める自由化政策と相容れないことが指摘されている。
 しかし、そうしたことが本当に辞表を提出した一因であるとしても、フィッシャー副議長は世界の主要国の中央銀行の金融政策を実質的に統括しているとされるグループ・オブ・サーティ(G30)の最高幹部の一員としてFRBに送り込まれてきた経緯がある。表面的にはジャネット・イエレン議長を押し立ててFRB執行部の主導権を握り、FRBのバランスシートの縮小や緩やかな利上げの推進により金融政策の正常化を推し進めてきた。
 そのフィッシャー副議長が来年6月までの任期を残して、10月13日前後をメドに退任することになったことは、FRBの金融政策が抜本的に変わる可能性がある。さらには、その背後の米権力者層の意向が変わったり、何らかの権力闘争による権力基盤の変化があった可能性を考えないわけにいかない。


金融政策の正常化路線を推進していた際のFRBの目論見

 これまで、FRBが経済情勢には関わらずに“機械的”にバランスシートを縮小していき、年3回のペースで利上げを推進していく姿勢を示していたのは、当欄で述べてきたように、一つは住宅や株価その他の資産価格の高騰を抑え込むためだ。コア個人消費支出(PCE)を対象とするインフレ率の2%という目標値の設定は、あくまでも表面的な議論に過ぎない。
 またそれ以外に”謀略的”な観点からは、対米資本還流を促進させることで作為的に新興国通貨不安を引き起こし、中国を筆頭に「BRICS(ブリックス)」と呼ばれた新興大国を衰亡させて米国優位の状況を到来させようとしていた面もある。またそれにより新興国勢に資金をドル建て資産に逃避させたうえで、株価を売り崩したり、米国経済に景気後退(リセッション)に陥る懸念が出てくるところでドル安にしていくことで、対外債務を帳消しにすることもできる。
 さらには、リセッションに陥らせることで戦争を引き起こしやすい環境にすることで、軍需産業が利益を上げられやすい状態にするとともに、米国が世界覇権を維持するうえで不可欠な世界最強の軍事力を保持し続ける効果も期待できるわけだ。


欧州系財閥には好都合だったそれまでのFRBの政策

 これを現在のトランプ政権を構成している勢力に当てはめると、この政権で少し以前まで外交政策で主導権を握っていた欧州ロスチャイルド財閥としては、こうしたFRBの政策姿勢は誠に都合が良いものだった。この政策姿勢を利用してドル高圧力を強め、人民元相場を崩落させることで中国の対外的な実質債務を増大させて中国政府を追い詰め、また将来的に国有銀行や代表的な国有企業を買収していくには極めて好ましい環境になるからだ。
 中国勢は国有企業や民間企業がそろって慢性的に巨大な“粉飾”を繰り広げてきたことで膨大な対外債務を負っている。人民元相場が下がると実質債務が一段と飛躍的に増大してしまい、それこそ“借金で首が回らなくなる”状態になってしまうため、元安圧力が強まる局面では人民銀行が外貨準備を取り崩して必死に人民元を買い支えてきた。それだけに、人民元安圧力を強めることは中国に対して強力な圧迫要因になっていたわけだ。


欧州系財閥にとり北朝鮮問題は手段に過ぎないもの

 これまで何回も当欄で指摘しているように、この欧州系財閥は当初、習近平国家主席が唱えている「一帯一路」構想に相乗りし、中国の豊富な外貨準備を活用してインフラ建設を請け負っていき、ユーラシア大陸に巨大な経済圏を構築していこうとした。
 しかし、中国が天文学的な債務を抱えている実態が明らかになってきたことでひとまずそれを諦め、米ロックフェラー財閥と提携してトランプ政権を成立させ、同政権の保護主義的な姿勢を利用して中国に通商問題で圧力を強めることで、国際会計基準の導入や資本取引の自由化を受け入れさせようとしている。それにより、国有銀行や代表的な国有企業を次々に買収していき、中国そのものを“乗っ取った”うえでユーラシア経済圏の構築に向かおうというわけだ。
 そこでは、北朝鮮問題は中国が同国の現体制を崩壊させられないことを承知のうえで原油の供給の抜本的な停止を強要することで、水面下での通商交渉で所期の目的を達成するための“手段”に過ぎないものだった――つまり、この欧州系財閥が主導権を握っている限り、北朝鮮への武力行使は最初から想定されていなかったといえる。


FRBと欧州系財閥の利害が偶然に一致

 ただし、フィッシャー副議長は前イスラエル中央銀行総裁であり、前述のように主要国・地域の中央銀行の金融政策を実質的に統轄しているとされるグループ・オブ・サーティ(G30)の最高幹部の一員としてFRBに送り込まれてきた経緯がある。このG30で主導権を握っているのは欧州系財閥やそれとつながりのある米ゴールドマン・サックスではなく、世界最大の金融資本である米シティ・グループを直系の傘下に抱えている米ロックフェラー財閥だ。
 もとより主要国の中央銀行は、最も歴史の古い英中央銀行(イングランド銀行、BOE)を筆頭に米FRBや日本銀行(日銀)その他に至るまで、すべて本来的には欧州系財閥の系列だった。ところが、例えば米国ではFRB議長や副議長、理事、日本でも日銀総裁や副総裁、審議委員といった実際に金融政策を決めるうえで投票権を有する委員は、大統領や首相に指名されて議会で承認を得ることでその地位に就いているので、今では世界覇権を握っている米系財閥の影響を強く受けるようになっている。
 実際、フィッシャー副議長自身も国際通貨基金(IMF)の副専務理事を退任した後、シティ・グループに籍を置いていたことがある。そのフィッシャー副議長が主導権を握っているFRBの金融政策が欧州系財閥の利害に沿うものだとしても、それはあくまでも“偶然”一致しているに過ぎない。状況が異なれば利害が一致しなくなることは当然のことながらあり得ることだ。


 明日以降も今回、掲載した続きを掲載していきます。
 明日は今回、主導権を握ることになった米系財閥の利害から見たFRBの金融政策について、その現在の利害から考察していきます。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。