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米系財閥が主導権を握りドル安誘導に転換を図る公算も

ポイント
・米トランプ政権で主導権が米系財閥に移り、中国を相手に「新冷戦」体制の構築に進むなかで、北朝鮮問題は地政学的、戦略的な観点から対処していくことになる。
・ただ、それにより防衛費が大幅に増額されていくことになり、日本側に多くのファイナンスを依存するとしても債務残高の膨張への対処が大きな課題になる。
・フィッシャーFRB副議長主導のFRBは緩やかな利上げを志向したが、債務削減のためにドル安誘導政策への転換の可能性も出てきており、どちらの政策もその背景には米ドルへの信用が高まって自身に溢れていることがある。
・レーガン政権の時には「双子の赤字」の膨張からプラザ合意によりドル不安に陥ったが、それを防ぐためにも早めのドル安政策でソフトランディングを図ることが検討されている。



主導権は欧州系から米系財閥へ

 これまで当欄で述べてきたように、最近ではドナルド・トランプ政権での主導権が欧州ロスチャイルド財閥から米ロックフェラー財閥に移行したようだ。
 この米系財閥は既に中国の最高権力者である習近平国家主席を取り込んで操っているなかで、この習主席に終身的な専制権力体制による強大な権力を握らせたうえで、その同国を「悪の帝国」に仕立てて「新冷戦」体制を構築しようとしている。それにより、旧冷戦体制が終焉した90年代に、情報通信(IT)産業の興隆ともあいまって成立した多国籍企業主導によるグローバル生産体制が今ではうまく機能しなくなっているなかで、それに代わる世界経済成長の牽引役として強大な軍需主導の成長路線を推進しようとしている。
 そうした米系財閥の路線からは、北朝鮮問題は中国と軍事的に対峙していくにあたり、地政学的、戦略的に米国に有利になる状況になることを意図して対処されることになり、必要に応じて条件が合えば軍事攻撃の可能性も排除しないことになる。8月8日にトランプ大統領が「炎と怒り」発言をしたのを機に米国と北朝鮮の対立が激化していったのは、米系財閥が主導権を握ることになったことをうかがわせる何よりの証左である。


防衛費の大幅な増額で資金のファイナンスが重要に

 ただ、米トランプ政権がバラク・オバマ前政権による防衛費の圧縮を主眼とする政策を抜本的に転換して積極的に増額していき、軍需主導による経済成長路線に舵を切ることになれば、当然のことながら歳出拡大分の財政資金をどのようにファイナンスするかが大きな課題になる。
 米国の政府部門の総債務残高は公表されているだけで20兆ドル程度に達しているが、そこには州や郡といった地方政府の債務が十分に計上されておらず、実際にはこれよりはるかに多いのは間違いない。実際、デヴィッド・ウォーカー元会計検査院長は、本当は債務総額は65兆ドルにも達していると発言しているほどだ。米国は政府部門に民間部門も合わせた債務総額も世界で群を抜いており、公的部門の債務が突出して多いとはいえ、民間部門の貯蓄がそれをはるかに上回っている世界最大の債権大国である日本とは事情が異なる。
 そうした米国の巨額な支出の多くは安倍晋三首相とトランプ大統領による個人的な関係に象徴的に示されているように、「日米マネタイゼーション」により日本の機関投資家や、状況により政府(財務省)もドル買い介入を行ったり、場合によっては日本銀行(日銀)も米国債を買い入れることでファイナンスに協力していくとしても、米国の政府部門の債務残高は一段と大きく膨れ上がらざるを得ない。


米ドルの信用への自身に満ち溢れている金融市場関係者や米政策当局者

 日本のように政府が発行した国債のほとんどを国内投資家が保有している国では、政府部門の債務を軽減させるには、政府が支払う名目金利の上昇を抑え込んだうえでインフレ率を引き上げることだ。しかし、これは現在の日本経済がなかなかデフレ状態から脱することができないのに見られるように、対外的に貯蓄が負債を上回る資産超過国においてはかなり難しいことだ。
 これに対し、米国のように国債の多くが海外投資家が所有しているような対外純債務国ではドル安に誘導するだけで済む話である。実際に米国は1971年8月15日のニクソン・ショックにより金との兌換が停止されて以来、ドル相場を大幅に引き下げることで対外債務を削減してきたものだ。
 “一昔前”ならドル安誘導を推進すれば「ドル危機」に陥ることが懸念されたものだが、リーマン・ショックによる米国発の巨大な金融危機とその後のギリシャ危機を経て基軸通貨としての米ドルの信用が再確立された状態にあるため、金融市場関係者やそれを政策的に操ろうとしている政策当局者、さらにその背後に暗躍している米権力者層の間では、幸いなことにそうした危機意識が薄く自身に満ち溢れている。だからこそ、米連邦準備理事会(FRB)による利上げやバランスシートの縮小の推進や、さらにはその反対にドル安誘導政策も推進していけるわけだ。


フィッシャー副議長は自主的、戦略的に退任していく

 いずれにせよ、スタンレー・フィッシャー副議長はFRBに利上げやバランスシートの縮小を推進させることで、金融政策を正常化させる目的でグループ・オブ・サーティ(G30)から送り込まれてきたため、米権力者層の意向がドル安誘導を推進させる方向に舵を切ったなかで、その職を放れることになって当然である。金融規制の緩和の是非を巡りトランプ政権と対立が深まったり、スティーブン・ムニューシン財務長官やゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長といったゴールドマン・サックス系が占めている経済閣僚との軋轢を指摘する向きもいるが、確かにそうした面も考えられなくはないとはいえ、少なくともそれらは主流な理由ではないはずだ。フィッシャー副議長はあくまでもその職を辞任せざるを得なくなったのではなく、戦略的に自主的に辞めていくということだ。


ソフトランディングを図るために早めにドル安誘導へ

 米国は70年代以降、たびたびドル安誘導をしてきたなかで、共和党系新保守主義(ネオコン)派が主導権を握り、国防費を膨張させたという意味で現在のトランプ政権と似たような性格の政権としては、80年代のロナルド・レーガン政権が挙げられる。
 当時はそれにより財政収支と経常収支の「双子の赤字」が累増していき、米国は世界最大の債権国から一気に最大の債務国に転落したなかで、85年9月22日のプラザ合意によりドル相場が大幅に切り下げられた。ただ、当時はそれによりドル危機の様相を呈するようになったことで、87年2月22日にはルーブル合意によりそれ以上のドル安を防ぐことになり、日銀は対米協力の観点から超金融緩和策を長期化させたことでその後のバブル経済がもたらされてしまった。
 現在のトランプ政権では「双子の赤字」を極限にまで拡大させてからドル安誘導に踏み切ると大きな衝撃を受けてしまうので、それを防ぐために今のうちにドル安誘導に転換することでソフトランディングを図ろうというものだ。ただいうまでもなく、日銀は対米協調によりデフレ脱却が達成できていないことを名分に、現行の“キチガイじみた”異次元の量的・質的緩和策を継続していく一方で、他の主要国・地域の中央銀行には自国・地域通貨の高め誘導をさせることで、米国がドル安誘導していく負担の軽減が求められることになる。


 明日もこの続きとして、ドル安誘導のターゲットとしてのユーロを管轄しているECBと人民元への影響について考えます。
 週末の明後日は3日に北朝鮮が核実験に踏み切った背景や各国の思惑について考察します。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。