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米国は北朝鮮問題を利用して国際体制システムの変換を目指す

ポイント
・米国は当初提示した厳格な提案に比べると国連での決議をめぐりかなり譲歩したように見えるが、中国も賛成に回る全会一致で決まったところに意味がある。
・米国は段階的に厳しい制裁措置を決めていくことで北朝鮮を兵糧攻めにし、先に手を出させることで空爆のみで反撃していけば、中国としては絶対に手を出せないことになる。
・今回の制裁決議のもう一つの狙いは国連が機能していないことを示すことで、「新冷戦」時代に向けて、中国を追放するなどそれに適合するような国際体制システムを構築することだ。
・日本はそれにより国際的な地位が上がることになり、政治面や外交・安全保障面で世界的に重要性を増すとともに米国から独立していくことになりそうだ。




米国の目的は国連が機能していないことを示すこと

 結局、北朝鮮に対する制裁案は11日に国連安保理で全会一致で決まった。しかし、そこでは原油の同国に対する輸出は現在の水準にとどめ、石油製品についても年間200万バレルに制限し、さらには金正恩(キム・ジョンウン)委員長に対する制裁も取り払われるなど、繊維製品の全面的な輸入禁止を除いて当初の米国案からはかなり後退したものになった。
 交渉事においては出来る限り望ましい結果を引き出すために、当初は相手に対して強硬な要求をしてその後の交渉で“落としどころ”を探るのは“常套手段”とでも言い得るものだ。とはいえ、それにしても一見したところ、今回の国連決議では米国側がかなり譲歩したような印象を拭えないものだ。
 もっとも、米国側も中国が絶対に北朝鮮の現体制を崩壊させるわけにいかず、当初の要求がまったく受け入れられるはずがないのは最初から理解していたはずだ。結論からいえば、米国にとってはこの制裁決議は中国も賛成に回ることで、全会一致で決まるところに意味があったといえる。なぜなら、結論から先に言えば、米国は国連が機能していないことを内外に示すことをその目的としているからだ。

 そもそも、北朝鮮で「先軍政治」により主導権を握っている朝鮮人民軍を操っているのは米国の親イスラエル的な共和党系新保守主義(ネオコン)派であり、たびたびミサイルを発射して核実験を行うこと自体が“自作自演”“ヤラセ”によるものだ。このため、いくら国連が厳しい制裁を決議しても、そのたびに北朝鮮に反発させてミサイル発射や核実験を行わせることができる。
 また中国としても、北朝鮮の現体制を崩壊させるわけにいかないだけでなく、最近では同国にパイプラインで送っている大慶産の原油がロウソクの原料であるパラフィンを多く含んでおり、いったん輸送を停止すると送油管の中が凝固してしまい、輸出を再開することが困難になることも指摘されている。
 このため、今回決まった制裁案ですら中国がしっかり履行できるか難しいところがあり、米国は実際に履行されていない証拠をつかむとそれを突き付けてくるだろう。


北朝鮮を兵糧攻めにして先に手を出させることが一つの目的

 それにより、米国としては望ましい二つの結果を引き出すことができる。
 一つはより厳しい制裁を決めていくことで“兵糧攻め”にし、北朝鮮の暴発を誘って先に手を出させ、それに米国側が在韓米軍を動かさずに空爆だけで対処していけば、中国としてはいっさい手を出せないことになる。実際の占領統治は既に進駐しているロシア軍に任せれば良いわけだ。
 米国は中国を「悪の帝国」に仕立てて「新冷戦」構造を構築しようとしているが、米中二大国の緩衝地帯である朝鮮半島北部をめぐり、米国は軍事的、外交的、戦略的に好都合な状態にさせようとしている。そしてそれを、10月18日から始まる5年に一度となる幹部人事が決まる共産党大会の開催を控えて、中国側が積極的に外交活動を繰り広げることができない間に、できる限り有利な状態にさせていこうとしている。


中国が加盟していない国際体制システムの構築がもう一つの目的

 そしてもう一つは、国連が機能していないことを内外に知らしめることで、国際体制システムを変革していく足がかりをつかむことができることだ。実際、今回の国連での制裁決議の決定を前に、ドナルド・トランプ大統領自身が国連が十分に機能していないことを主張している通りだ。
 その背景には、米系財閥主導の米国は中国を相手に「新冷戦」構造を構築しようとしているが、それに伴って国際体制もそれに適合するように変革していこうとしていることがある。特に通商面では、従来の非資本主義的、自由主義的な経済、通商体制である中国を国際通商体制の枠組みに引き入れることを主眼とした世界貿易機関(WTO)体制を瓦解させ、米国を中心に同盟国や有志国との間で新たな国際通商体制を締結することで、中国やその衛星国をそこから追い出そうとしている。そうすることで、敵対していくことになる中国に対して貿易を制限し、軍事技術その他、戦略的に重要なものは自由に取引ができないような枠組みを構築しようとしている。
 米国は丹東銀行に続き、北朝鮮と取引関係のある他の複数の銀行も米金融システムから遮断することを検討しているが、その中には四大銀行の名前すら挙がっているという。以前、欧州系財閥が主導権を握っている際には通商面で中国に圧力をかけることがその主目的だったが、米系財閥に主導権が移っている今では、むしろ中国を米国中心の経済・金融・通商体制から追放していく意味合いの方が強いと見るべきだろう。

 また政治的、軍事的な面でも、米国は国連に代わって米国主導で中国の加盟を認めない国際的なシステムの構築を模索しているようだ。旧冷戦時代にはソ連はもとより、同じ社会主義大国として西側の自由主義的で資本主義的な体制とは異なるシステムを採用していた中国も国連に加盟していた。しかし、当時に比べると米国の国力や覇権国としての威信が動揺しているなかで、米国がこれまで通り主導権を維持していくには、敵対国を排除することで、自らの意向を受け入れる国だけを加盟させておくことが必要になっていくのだろう。


日本は国際的な地位の向上とともに独立していくことに

 米国主導で国連が改革されたり、異なる何らかの国際機構が打ち立てられていけば、米国は当然のことながら日本を常任理事国か、それに該当するような地位に引き上げようとするだろう。それにより日本は政治面や外交・安全保障面で世界における重要性を増すとともに、米国から独立していく方向に踏み出していくのだろう。それが日本にとって幸か不幸か、現時点では判断しかねるが、ヘゲモニー・サイクルが下降に向かい、米国の世界覇権が動揺していく状況においては当然の動きである。

 第二次世界大戦の戦勝国にして現在では衰えているような国の間では、日本は第二次大戦の結果を尊重すべきだといった要求が散見される。ロシアでは欧州や中国の江沢民元国家主席の系列に近く、それゆえに反日的な傾向が強いドミトリー・メドベージェフ首相やその系列の外務官僚がこうした発言をすることが多い。
 これに対し、米国は少なくともこうした主張には相手にしないだけでなく、ロシア国内でもウラジーミル・プーチン大統領はいまだかつてこうした発言をしておらず、明らかにそのような勢力とは一線を画している。ロシアの要人の間でも、系列やその基盤とするものの相違がくっきりと表れているものだ。


 今週はこれで終わりになります。
 来週もこれまでと同様に25日月曜日から掲載していくのでよろしくお願いします。
 北朝鮮情勢をめぐり米国との間で緊張状態が一段と高まっており、またFOMCの結果を受けて金融市況も流れが変わりつつあるので、来週もしっかり考察していきたいと思います。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。