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北朝鮮問題での制裁発動で攻める米国と守勢に立つ中国

ポイント
・北朝鮮向けの原油の供給や経済支援は中国に代わりロシアが請け負っているが、米国の制裁の対象が中国だけに向けられていてロシアについては野放しにされている意味を考えるべきだ。
・米国はトランプ政権が成立した当初から北朝鮮と取引関係のある中国の銀行をブラックリストに載せて米金融システムから遮断すると脅し、貿易面でも通商法301条を適用する姿勢を示して、国際システムからの中国の追放に向けて動いてきた。
・中国は経済状況が脆弱であり、米国から制裁をかけられると金融危機の発生はじめ極めて深刻な打撃を受けざるを得ないため、米国の強要を呑まざるを得ない立場に置かれている。
・米国の世界覇権は最盛期を過ぎてこれから減衰していくことが避けられないが、現時点ではまだまだ比較相対的に強靭な状態にある。
・11月の米中首脳会談や12月20日以降の国連の制裁決議の履行状況の検証の最中に北朝鮮がICBM級ミサイルを発射すれば、米国は新国際システムの構築に向けて独自に中国への制裁を打ち出しやすくなるはずだ。



制裁措置をちらつかせて中国を脅す米国の姿勢

 そもそも、北朝鮮の貿易は以前には中国向けが9割ほどを占めており、原油についてもほぼ全量に近い水準を同国が供給していたものだ。しかし、中国は最近では米国の圧力に押されて供給を絞り、貿易面でも同国の銀行が北朝鮮との取引の停止に動いていることから、以前に比べると中国の存在感はかなり低下している。
 代わってロシアが北朝鮮向けの原油の供給を増やして穴埋めをしており、また万景峰(マンギョンボン)号もウラジオストックに寄港して生活物資を手当てしている。にもかかわらず、米国の制裁の対象が不思議と中国だけに向けられていてロシアについては野放しにされているのはどうしてなのかを考えるべきだ。

 これまで当欄で述べてきたように、米国では今年1月にドナルド・トランプ政権が成立した当初から北朝鮮と取引関係のある銀行を“ブラックリスト”に載せて中国側に突き付け、その銀行を米金融システムから遮断すると脅してきた。その中には、預金量では日本のメガバンクを上回る規模を誇る四大銀行の一角も含まれていたという。
 実際に6月29日には丹東銀行に制裁措置を打ち出し、さらに9月11日に国連の制裁決議が決まったのを機に、それを本格的に他の銀行にも次々に適用する強硬な姿勢を打ち出すことで中国側に強力に圧力をかけてきた。

 またそうした銀行への制裁措置とは別に、貿易面でも通商法301条の適用に動く姿勢を見せることで中国側を攻撃してきた。
 ただ、その対象が単なる米国向け輸出品の不当廉売(ダンピング)行為ではなく、知的所有権の問題や進出企業に対する不当な技術供与の強要に絞ってきたことに意味がある。中国が米国を中心とする自由主義的・資本主義的な経済ステムとはまったく異質な経済・社会構造や統治形態であることを浮き彫りにさせ、同国やその衛星国を国際通商システムから追放して新たなシステムを構築していくには好都合であるからだ。
 そこに北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)級のミサイルを発射すれば、米国が中国に対して強硬な制裁措置を打ち出しやすくなるのはいうまでもないことだ。


米国の要求を受け入れざるを得ない中国の立場

 中国がこうした米国の姿勢に極めて大きな脅威を感じ、震え上がったであろうことは想像に難くない。銀行が米金融システムから排除されれば米銀と取引ができず、資産を凍結されてしまう。ドル資金も調達できなくなることで、政府が外貨準備を取り崩して供給しなければその銀行は破綻せざるを得ず、それが連鎖的に拡大していけば金融危機に陥る危険性が出てくる。
 また米国から一方的に対米輸出に高率な制裁関税をかけられれば、マクロ経済的に深刻な打撃を受けざるを得ない。いずれも社会不安が高まり、共産党による統治体制すら存亡の危機に陥る危険性が拭えない。

 米国から“無理難題”を押し付けられるのが容易に予想できたにもかかわらず、中国側から要請する形で4月6~7日にフロリダ州のトランプ大統領の別荘で米中首脳会談が行われたのはこのためである。
 また、9月11日に国連で制裁決議が決まったのを受けて、その後の19日のトランプ大統領の国連での演説を控えて中国側が懸命に国内の銀行に北朝鮮と取引関係のある口座を停止していき、さらに国連の制裁決議もしっかり履行していることを内外に示してそれを積極的に宣伝しているのも、こうした事情があるわけだ。


米国の世界覇権はまだ盤石な状態だが・・・・

 こうした一連の動きは、まさに米国の脅しに中国が屈服したことを示すものにほかならない。それはいかに中国経済が国内総生産(GDP)の規模で世界第2位にまで上昇しても(同国の経済統計はかなり“水増し”されており、本当はまだ日本を抜いていないはずだが)、米国の“さじ加減一つ”で崩壊の危険性すら高まるほど脆弱なものであるかを示すものだ。
 そしてそれは、一方では基軸通貨ドルの信用と「世界の需要基地」としての米国の存在が依然として強靭な状態にあることも示唆している。

 08年のリーマン・ショックによる米国発の巨大な金融危機が起こったのを機にコンドラチェフ・サイクルが底入れしたと同時に、その上位サイクルであるヘゲモニー・サイクルも天井を打って下降局面に移行した。それにより米国の世界覇権の勢いはこれから徐々に減衰していくことが予想されるが、それでもまだ下降局面が始まったばかりの段階であり、まだまだ米国の“超大国”としての力は強いものがある。


実際に通商法301条の発動や銀行への制裁措置を打ち出すことに

 コンドラチェフ・サイクルの上昇局面を特徴づける米ロックフェラー財閥主導による「新冷戦」時代に向かうにあたり、中国を国際システムから追い出して米国を中心にその同盟国や有志国から構成される新システムに移行させることが不可欠であることは、これまで当欄で何度も指摘してきたことだ。
 11月にトランプ大統領が訪中して習近平国家主席と首脳会談を行っている最中に北朝鮮がミサイル発射に踏み切れば、これまでの中国の制裁措置が北朝鮮の“暴走”を止めるには何ら役立たなかったことが明らかになることで、少なくとも米国は中国側の同意を得なくても同国を攻撃する名分を得られることになる。またロシアも表立って北朝鮮に関与を強めていくことができるようになるはずだ。

 そして国連の制裁決議の履行状況を検証する12月20日を迎え、実際に検証したうえで完全に履行できていないことが明らかになれば、米国は中国に対して通商法301条の適用を発動したり、対象となる中国の銀行を米金融システムから排除する措置を打ち出すだろう。中国としては米国に制裁を発動されるのは何としても避けたいはずだが、北朝鮮との取引を全面的に停止するのは不可能であり、“あら捜し”をすれば何らかの形で“ボロが出る”はずだ。
 それに先立つ11月の首脳会談の最中に、トランプ大統領が習近平主席に対して中国が違反行為を続けている証拠を突き付けることで、制裁措置の発動が1カ月超ほど早まることもあり得る。また首脳会談で制裁措置を打ち出すことができなくても、トランプ大統領は国連の制裁決議の90日後を迎えるのを控えて、“脅し”とも言い得るような何らかの警告を発していくことだろう。


 週末の明日はこの続きとして、この付録的なものを述べることにします。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。