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一斉逮捕劇により米国とサウジ政府との一本化で中東大戦へ

ポイント
・サウジアラビアの“青二才”ムハンマド皇太子に大きな影響を及ぼしているのは米クシュナー上級顧問であり、いわば親イスラエル右派に操られている。
・ムハンマド皇太子が今回、汚職容疑で多数の王族や閣僚を一斉逮捕拘束したのは、中国で習近平国家主席がこれまでしてきたことと似ており、独裁国家の傀儡政権を操るにあたり、親イスラエル的なアジア極東の宗教勢力との関係がうかがわれる。
・これまで、サウジでは王族内の各勢力が米国のいろいろな勢力と結びついてISのようなテロ勢力を支援してきたが、今回の一斉逮捕劇でサウジ政府と米政府との関係が一本化されそうだ。
・親イスラエル右派勢力はサウジ中心のスンニ派連合とシーア派大国イランとの間で「中東大戦」を引き起こそうとしているが、慢性的に紛争状態にさせるにはテロ組織を支援することが有効でも、大戦を勃発させるには国家間の対立状態に回帰させる必要がある。



親イスラエル右派に操られているサウジ皇太子

 サウジアラビアのムハンマド皇太子は外交面でイランを標的に強硬な姿勢を推進するとともに、内政面では原油の輸出に依存する経済状態からの脱却を目指して経済構造改革を断行している。しかし、国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)のメドが立たないなど、それはほとんどうまくいっていない(もとより成功させること自体が非常に難しいが)。
 そもそも、弱冠32歳のこの皇太子は米国の大学に留学して卒業したことになっているが、本当は能力不足で満足に卒業が出来なかったといった程度の学力に過ぎない。そうした人物が強大な権限を握って内政面では急進的な改革を、外交面では強硬路線を推進しているのは、背後に何らかの人物に操られている可能性が高いと言わざるを得ない。
 実際、ムハンマド皇太子に大きな影響を与えているのは、米ドナルド・トランプ政権でも大きな影響力を行使している大統領の娘婿のジャレッド・クシュナー上級顧問である――すなわち、親イスラエル右派の勢力そのものに操られているということだ。


習近平に似てきたサウジでの専制体制強化に向けた動き

 ムハンマド皇太子は今月3日から4日にかけて、汚職容疑で数十人の王族や閣僚を逮捕拘束するという暴挙に出た。それにより、9月に反イスラエル的で教条的なワッハーブ派の聖職者を一斉に追放したこともあわせ、少なくとも表面的には一段と権力集中が進むはずだ。
 サウジでは汚職対策委員会を設置してその撲滅に取り組むのは今に始まったことではないが、筆者が気になるのは、そのやり方が中国で習近平国家主席が政敵を次々に排除するためにこれまで推進してきたのと似てきたことだ。
 以前、当欄で指摘したように、習近平主席をその地位に押し上げて実質的に操ってきたのは、“名誉職”のような地位である全国人民代表大会(全人代)委員長に就任するなどしてこれまでほとんど表に出ることなく、先の共産党大会で表向き引退した張徳江委員長だ。この人物は吉林省朝鮮族出身としてアジア極東で根付いている右翼的で特異な宗教勢力とのつながりがあり、親イスラエル勢力とも通じているようだ。そうした勢力を権力基盤として抱えている習主席が、米系財閥の金融資本と深いつながりのある王岐山・中央規律検査委員会書記(当時)とともに腐敗撲滅運動を繰り広げてきた。
 今回のムハンマド皇太子の行動を見ると、独裁国家において傀儡政権に権力基盤を強化させるにあたり、そうした親イスラエル勢力の“やり口”がよく見て取れるものだ。


サウジでの一斉逮捕で米国とのつながりが一本化される

 今回のムハンマド皇太子による不満分子の王族や閣僚の一斉逮捕で権力基盤の強化以外に指摘できることは、一つにはその保釈金として保有する財産のかなりの部分の供出が強要されたことで、悪化しているサウジの財政を立て直すうえで大きく貢献することが期待できることだ。
 特に今回、逮捕された中では、世界中に知れ渡っている富豪であるアルワリード・ビンタラール王子が含まれているので、ムハンマド皇太子率いるサウジ政府はかなりの財産を“強奪”できる。この王子は米系財閥直系のシティ・グループの大株主であるだけに、その逮捕は財産の強奪以外に、その影響力の排除を望んでいる同財閥の意向もあったかもしれない。
 ただ今回の一斉逮捕劇で最も大事なことは、サウジで反対勢力が大きな打撃を受けてほぼ壊滅状態になり、ムハンマド皇太子が一段と専制的な権力基盤を強化したことで、米国とのつながりも一本化されたことだ。


王族内で様々な勢力や派閥が形成されて別個の路線が推進される

 サウジでは王族が1万人も2万人もいるといわれるだけに、そこには多くの勢力や派閥が存在してきた。その中でも大きな勢力としてまとまりやすかったのが、初代アブドルアジズ国王の死後、2代目国王から現在の第7代サルマン国王までその子息の兄弟間で王位を継承してきたが、多くの王子にはその母親の実家が大きな影響力を行使してきたため、兄弟間では母親が同じ王子たちで派閥を形成してきたことだ。
 その最も有名なものが、スデイリ部族の出身の母親の7人の子息たちで構成されている「スデイリ・セブン」と呼ばれる勢力であり、サルマン現国王もその系列だ。この系列は80年代に第5代ファハド国王が米国に接近するにあたり、当時のロナルド・レーガン政権で主導権を握っていた好戦的な共和党系新保守主義(ネオコン)派や親イスラエル右派勢力との結び付きが強くなり、その関係が今でも続いている。
 ただ、米国にはいろいろな勢力があり、異なる系列がサウジでそれ以外の勢力と結ぶようになるのも自然な流れというべきものだ。実際、第6代アブドラ前国王は意識的に反スデイリ系の路線を推進してイスラエルと距離を置くにあたり、米国ではバラク・オバマ前政権で主導権を握り、穏健外交を志向する傾向が強い外交問題評議会(CFR)系の勢力と親密な関係を築いたものだ。

 このように、サウジでは建前上は国王による専制統治体制が確立されているはずであるにもかかわらず、実際には王族内の多くの各勢力が、国王が主導権を握っている政府の意向とは異なることを背後で推進してきた。そうした状態を利用して、米国でも政治的なものに限らず、経済的、軍事的、宗教的その他様々な勢力が存在しているが、そうした多くの勢力が別個にサウジのいろいろな勢力と結びついて画策してきた。
 例えば米国のある勢力がアルカイダやイスラム国(IS)といったテロ組織をサウジのある勢力を介して支援してきたが、それを米政府の意向を受けたサウジ政府が容易に取り締まることができなかったのはこのためだ。
 また米国の主要な勢力も一方では自国の政権で主導権を握りながら、もう一方ではこうしたテロ組織を支援するようなこともしてきた。実際、オバマ前政権でCFR系を率いていたジョセフ・バイデン副大統領が中国政策の失政を米権力者層から責められて影響力を後退させた後、ヒラリー・クリントン国務長官(いずれも当時)に率いられた民主党系ネオコン派が主導権を回復した。それとともに、その系列の資金源だったロックフェラー財団やクリントン財団、ソロス基金がサウジを介してISを活発に支援したのがその好例である。


国家間同士の敵対関係への回帰が必要に

 今回のレバノンのサード・ハリリ首相軟禁事件やアラブ諸国の緊急外相会議で垣間見えたように、親イスラエル右派的な共和党系ネオコン派が主導権を握っているトランプ政権は、イスラエルが支援するサウジ主導のスンニ派政権とイランのシーア派政権との間で「中東大戦」を引き起こそうとしているのはまず間違いないと見るべきだろう。サウジで“逆クーデター”による一斉逮捕劇が起こったことで、強大な権力を握ることになった“青二才”のムハンマド皇太子を操ることで、好戦的な米国のこうした勢力が中東で大規模な戦争を引き起こしやすくなったのは間違いない。
 かつてのアルカイダやISといったテロ勢力を巨大化させれば、中東を慢性的な紛争の泥沼状態に陥らせるには好都合だが、中東大戦のような大規模な戦争状態を引き起こすには、かつてのように国家間の対立状態に回帰させる必要がある。例えば、第一次、第二次両世界大戦では国家間同士の激しい戦争だったが、その“ミニチュア的”な中東版だと思えば理解しやすいだろう。


原油価格高騰で恩恵を受ける勢力とその影響

 ところで、原油相場は指標となる米国産のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)市況でそれまでは100ドル前後の高水準だったのが、14年後半に暴落して以来、現在では50ドル前後と以前の半分程度の水準で推移している。中東で大規模な戦争が起これば、少なくとも瞬間的には大きく噴き上がるはずであり、実際に主要な油田地帯やその輸送路が大きな被害を受ければそれが長期間続く可能性が高い。
 いうまでもなく、イランに加えて、サウジから断交されたことで否応なく同国との関係を強化せざるを得なくなったカタールも空爆を受けて被害を受ければ、天然ガス価格も大きく高騰するだろう。そうなれば、米国のシェール業者やロシアといった他の産油国やガス供給国、米系を中心とする石油会社は大きな利益を得られることは容易に予想できる。
 ただ留意すべきなのは、消費国では15年から安価な原油価格の恩恵を受けてきたことで慣れ親しんだなかで一気に価格が高騰すると、需要側が石油やガス離れの傾向を強める可能性があることだ。そうなると、短期的に石油・ガス産出国や石油・ガス企業が高収益を上げても、中長期的には米系財閥が朝鮮半島北部のウラン鉱石の利権を握ることで優位性を奪取していく原発産業にも恩恵が及ぶことになる。

 いずれにせよ、中東情勢や北朝鮮情勢とも関連性が高いエネルギー問題や、日本と並ぶ中核的な属国であるはずのサウジで“破滅的”と言い得るほどの“暴政”がどうして推進されているのかについてはより深い考察が必要だろう。今後、会があれば採り上げることにする。


 今週はこれで終わりになります。今週もご拝読いただきありがとうございます。
 来週はまた週明け4日の月曜日から掲載していきます。
 北朝鮮が2カ月半ぶりに弾道ミサイルを発射したので、また北朝鮮問題が主体となりそうですが、来週もよろしくお願いします。
 なにかありましたら書き込んでいただければ幸いです。
 直接出向いてお話することも、報酬次第でお引き受けします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。