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従来の路線が踏襲されたFOMCの不可解な姿勢

ポイント
・今回のFOMCでは利上げを巡る採決で反対者が2人出たこと、利上げの回数が引き上げられなかったことからハト派的とされたが、声明文やFRB議長の会見は従来の内容がそのまま踏襲された。
・ただ、最近の良好な米景気指標の発表や税制改革を織り込んでGDP見通しが上方修正されたにもかかわらず、利上げの回数が据え置かれたのは説明がつかない。
・その背景にはもとよりタカ派とハト派の対立が高まっていたなかで、米国の北朝鮮への攻撃やその後には中東大戦の勃発が控えているなかで、執行部も交代していくこともあって議論の収拾がつかなかったことがあったようだ。
・シカゴ連銀のエバンズ総裁はハト派的とされているが、本当はブラード総裁に次いで権力者層の意向に従って発言内容を変える傾向があり、事前に北朝鮮攻撃や中東大戦のことを聞かされていたフシがある。



従来の路線を踏襲した声明文や議長会見

 先週は市場に直接影響を与える要因として米国では12~13日に連邦公開市場委員会(FOMC)が、14日には欧州中央銀行(ECB)理事会が開催されたが、特に前者については大きな変動要因になったので簡単に押さえておく。
 今回のFOMCでは利上げが決まるのは既定路線であり、声明文や会合後のジャネット・イエレン議長の会見内容も特に波乱要因はなかった。ただ最近、良好な米景気指標の発表が相次いでいたなかで、FOMC委員による今後の利上げ見通し(ドットチャート)が前倒しされて18年中の回数が引き上げられるとの見方が出ていたのが、従来と変わらず18年中も3回で据え置かれた。しかも今回の利上げの決定を巡り、採決でミネアポリス連銀のニール・カシュカリ、シカゴ連銀のチャールズ・エバンズ両総裁が反対したことから、市場ではこれをハト派的と受け止めて米長期金利が急低下し、外為市場でもドル安に振れた。
 ただ結論から先に言えば、この市場の動きはもとより展開の主導権を握る米系投機筋がタカ派的な見解を唱えてドル高に誘導し、FOMCの終了とともにドル売りに転じたことによるところが大きいようだ。

 今回のFOMCの声明文では、「18年の経済成長は加速し労働市場も底堅い」「失業率は一段と低下していくことを予測」としたうえで、「今年はインフレ率が低下したが中期的には2%目標を達成へ」とされた。
 また会合後のイエレンFRB議長の会見でも、「インフレ率が目標値の2%に達するには非常に好調な労働市場の継続が必要」としたうえで、「今年第2、3四半期の経済成長は堅調」「税制の変更は国内総生産(GDP)見通しの上方修正を後押し」としたうえで、「今年の軟調なインフレ動向は一時的なもの」「イールドカーブは以前に比べてフラット(平坦)化しているが、その傾きは歴史的なレンジ内」との認識を示した。そのうえで、「労働市場が過熱した状態を放っておくと急激な引き締めが必要になる」として「段階的に利上げを継続していくことが必要」との結論を述べた。
 これまで、つい最近までスタンレー・フィッシャー前副議長が主導権を握ってきたFRB執行部は、足元のインフレ率の停滞は一時的なものであり、中期的には2%目標に向けて上昇していくとの認識を示すことで緩やかな利上げ路線を正当化してきた。今回のFOMCでの声明文やイエレン議長の会見は、それをそのまま踏襲したものといえる。


不合理なGDP見通しの上方修正と利上げ見通しの据え置き

 もっとも、FOMC委員による米国経済の実質GDP成長率の見通しでは、18年が9月時点の2.1%から2.5%に、19年も2.0%から2.1%に引き上げられた。最近の米景気指標が良好な内容のものが多く発表されているなかで、ドナルド・トランプ政権が提唱している税制改革の実現が現実味を帯びて法人税が大幅に引き下げられることから、見通しが上方修正されて当然である。
 にもかかわらず、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の18年末の見通しが18年末に2.1%、19年末が2.7%と利上げの回数としてそれぞれ3回、2回と従来の見通しがそのまま据え置かれた。市場はこれをハト派的と受け止めたが、GDP見通しを上方修正しておいて利上げの回数を引き上げないのは説明がつかない。
 以前に比べて慎重な金融政策を運営していく方針に転じたいというのであれば理解できなくもないが、それなら中期的にインフレ率が2%目標に到達するという見通しを撤回しないまでも(撤回すれば利上げができなくなってしまうが)、その表現を和らげるといった配慮が必要だっただろう。


収拾がつかず従来の方針をそのまま踏襲

 どうしてこうした不合理なことになったのかというと、会合の状況については3週間後に議事録が公表されるとそれなりに明らかになるのだろうが、かなり激しい議論が闘わされて収拾がつかなくなったことがあったようだ。
 もとより労働市場がひっ迫しているにもかかわらず賃金が上がらず、インフレ率がなかなか上向いてこないなかで、FOMC委員の間ではタカ派、ハト派それぞれの見解に割れてまとまりにくい状態にあった。ただ今回、そうした状況に拍車をかけたのが、米国が北朝鮮を攻撃する公算が日に日に高まっており、さらに中東でもトランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定すると発表したこともあって大規模な騒乱や戦争状態が引き起こされる可能性が高まりつつあることだ。
 そうした状況において、会合ではFOMC委員の間で議論が紛糾したなかで、FRB執行部の間でもこれまで主導権を握ってきたフィッシャー副議長が退任しており、イエレン議長も退任を間近に控えていることから議論をまとめて誘導していくことが難しくなっていたことがうかがわれる。それにより、声明文やイエレン議長の会見の内容が従来の方針を踏襲せざるを得なくなったというのが実態だったようだ。


権力者層の意向を受けて姿勢を変えるFOMC委員

 注目されるのは、今回の利上げの決定を巡りカシュカリ総裁が反対票を投じるのは、以前から自身が足元のインフレ率の停滞を理由にそれを“公言”していたこともあって事前に予想されていたことだが、そこにエバンズ総裁も加わったことだ。
 この人物はかつて、ベン・バーナンキFRB議長(当時)がインフレ目標を設定して量的緩和策に踏み出す際に理論的根拠を与えて強力に援護射撃した経緯があることからハト派的とされているが、本当は権力者層の意向を受けて発言内容を変える傾向がある。経済学者やエコノミストとしての自身の理念がなく、権力者層の意向に忠実に従って発言内容を変えるのはセントルイス連銀のジェームズ・ブラード総裁の名前が浮かぶが、このエバンズ総裁もそれに次いでそうした性格が強いといえる。
 ブラード総裁は1年以上前に、それまでのタカ派的な論調から極端にハト派的な姿勢に急激に転換したが、今になって思えば、政権の“イエスマン”であるジェローム・パウエル理事が次期FRB議長に就任することを暗示していたといえなくもない。さらにいえば、エバンズ総裁は今回のFOMCで利上げの是非を巡る投票に臨む際に、権力者層から近く米国が北朝鮮を攻撃し、また中東でも大規模な戦争が引き起こされることを聞かされていたフシがある。


 明日は米国の北朝鮮への攻撃に向けて、最近の米国での動きを概観します。
 明後日からの2日間では、先週、WTO閣僚会議が米国の保護主義的な姿勢から見事に決裂しましたが、歴史的な潮流の観点からその必然性や中国を排除していく動きについて考察します。
 よろしくお願いします。
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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。