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国際通商交渉で先進国から集中砲火を浴びる中国

ポイント
・中国は米トランプ政権による保護主義的な動きに危機感を覚えて「自由貿易の擁護者」を称して欧州に共闘を呼びかけてきたが、本来的に一党独裁国家である中国はそれには程遠く、先進国の関係者からは冷ややかに見られていた。
・米国は今回のWTO閣僚会議で自国の貿易赤字の縮小につながらない分野ではあまり参加しなかったが、中国の保護主義的な分野がテーマになると日欧を誘って積極的に参加して激しく攻撃していた。
・中国の保護主義的な分野については多くの問題が指摘されているが、米国はじめ先進国が最も問題視しているのが国有企業への過剰な保護政策に対してであり、民間企業が国際競争上、不利な立場に立たされているとしている。



「自由貿易の擁護者」を称して欧州に共闘を呼びかけてきた中国

 ところで、今月10~13日にアルゼンチンのブエノスアイレスで世界貿易機関(WTO)閣僚会議が開催された。ただ、予想通り今年初にドナルド・トランプ政権が成立して以来、世界覇権国である米国が多国間での枠組みを否定して――すなわちWTO体制そのものを否定しているので“ものの見事に”決裂状態となり、閣僚宣言すら出せないで終わった。そこでは、特に米国が「米国第一主義(アメリカ・ファースト)」の姿勢を強めて自由化に背を向けたのに対し、国内産業の保護にこだわる途上国が激しく対立したが、特に顕著だったのが、米国が日本や欧州を抱き込んで中国を激しく攻撃したことだ。
 これまで、米国で保護主義的なトランプ政権が成立し、特に巨大な貿易赤字をもたらしている中国を標的に“通商戦争”を仕掛けてくるのを背景に、中国では相当に危機意識が強まっていた。中国ではなかなか家計の消費活動が経済成長の主役にならず、公共インフラ事業向けをはじめとする公的固定資本形成や輸出の伸びにその多くを依存する状態から脱することができないでいる。そこに対米輸出が激減すれば経済成長が失速してしまい、バブル崩壊に拍車がかかりかねないからだ。
 そこで危機感を覚えた習近平国家主席は、ダボス会議のような世界各国の代表的な重要人物が集まる国際会議の演説の場で盛んに「自由貿易の擁護者」を自称して米国を牽制し、同じように対米輸出依存度が高いドイツを中心とする欧州に共闘を呼びかけてきたものだ。


中国への攻撃だけに関心を寄せる米通商関係閣僚

 しかし、そうした中国の姿勢に対しては、多くの先進国の関係者から冷ややかに見られていたものだ。所詮、いかに自由貿易の重要性を強調しても、経済社会土壌面で資本主義の精神が未発達な途上国において、しかも政治制度面でも民主制度が否定されている一党独裁国家において、制度面で多くの分野で自由化が進んでおらず高関税も課されたままであり、非関税障壁の分野でも多くの一般民衆の間で知的所有権の感覚すらないようでは、とても自由貿易を“気取る”には程遠い状態にあるからだ。
 案の定、そうした中国の矛盾は今回のWTO閣僚会議で噴出することになった。米国のロバート・ライトハウザー米通商代表部(USTR)代表は自国の貿易赤字の解消につながらない分野ではほとんど交渉に参加しなかったが、中国の保護主義的な分野がテーマになると日欧を誘って積極的に参加して激しく攻撃していたという。


国有企業への過剰な保護政策を最も問題視する米国はじめ先進国

 中国の保護主義的な制度が問題視されたのは、重要データの対外持ち出しの制限や外国企業への技術移転の強要、鉄鋼をはじめとする重厚長大産業の過剰生産等々、多くの分野にわたるが、米国はじめ先進国が最も重視したのが国有企業への過剰な保護政策だ。中国では事実上、国家予算ベースで国有企業が支援されて市場が寡占化されており、それにより過剰生産を招いて国際市場の需給関係に深刻な歪みをもたらしているだけでなく、米国はじめ先進国の民間企業が国際競争で不当に不利な条件に立たされているというものだ。
 かつて、中国では90年代に江沢民政権下で朱鎔基首相が国有企業の分割民営化を推進し、00年代の胡錦濤政権下でも温家宝首相が基本的にはそうした政策を継続した。しかし、現在の習近平政権は「国進民退」により国有大企業を合併させて一段と巨大化させており、さらにその国有企業に「習近平思想」を中核とする共産党による“監視の目”を強化させて統制管理体制を一段と強めていこうとしている。
 それが先進国を中心とする自由貿易体制のルールを強く歪めるものであるのはいうまでもないことだ。


 週末の明日もこの続きを掲載します。
 米国は現行のWTO体制を瓦解させようとしていますが、将来的な新国際通商体制のことについて概観します。
 議論の中心はやはり中国に対する姿勢になります。
 よろしくお願いします。
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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
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