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気になる長期金利の上昇と米株高傾向の真因

ポイント
・最近、米国やそれ以上にドイツで長期金利が勢いよく上昇しているが、その背景にはこれまで、展開の主導権を握っている米系投機筋が株高を演出するためにその低位安定状態を意図して作為的に債券を買い支えていた面があったようだ。
・これまでの米株価高騰の主要テーマだった税制改革期待については既に出尽くしており、年明け以降は米軍の北朝鮮攻撃によるリスク回避もあって調整局面に移行か。
・ただ、最近の米株高傾向には税制改革期待だけでなく、「見えざる手」により将来的に大規模な軍需が創出されるのを織り込みに行っていると思われ、中長期的な株高傾向は不変か。



米長期金利がここにきて上昇力を強める

 ここにきて長期金利が上昇傾向を強めている。
 米国では10年国債利回りが引値ベースで20日に2.497%に急上昇した。その後の2日間で上昇力が鈍化し、2.5%を目前にして抑え込まれている。とはいえ、最近では10月25日の2.444%を上回ってきており、これをトライアングル(三角保合い)の上放れ(債券相場としては下放れ)と見るなら、年明け以降、3月13日につけた2.608%の今年の年間高水準を超えていく可能性を考えないわけにいかない。
 これまで、米国では2年債を中心とする中期債は米連邦準備理事会(FRB)の利上げ推進姿勢を映して上昇していたのに対し、10年債を中心とする長期債の利回りはそれほど上がっておらず、中長期間のイールドカーブが不自然にフラット(平坦)化していた。こうした状態を、ミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁らは米国経済が景気後退(リセッション)に陥る兆候といった捉え方をしていた。しかし、イールドカーブの形態と同様に景気の先行指標とされる株価が高騰しているなかで、その見方については筆者は妥当性を疑問視していたものだ。


最近の長期金利の上昇は債券の買われ過ぎの反動か

 これまで長期金利の上昇力が鈍かった要因としては、労働市場が完全雇用に近い状態にあるにもかかわらずに賃金がなかなか上がらず、インフレ率が停滞していたからだ。
 ただその説明は決して誤りではないが、より正確に言えば、そうした状態を利用して展開の主導権を握っている世界最大の商業銀行の系列の米系ヘッジファンドや米大手投資銀行といった米系投機筋が、株価を買い上げるのを意図して長期金利の低位安定を維持するために、作為的に債券相場を買い支えていた面が大きいと思われる。実際、ここにきての長期金利の上昇については、米国以上にドイツでその傾向が強いのは、世界の各種債券の中でドイツ国債が最も作為的に買い上げられており、その反動が出ているためである。
 もとよりドイツ政府がバラク・オバマ前政権下の米国や南欧諸国、新興国から積極財政政策に転換するように要請されていたにもかかわらず、頑なにそれを拒み続けていたなかで、マリオ・ドラギ総裁率いる欧州中央銀行(ECB)が強力に量的緩和策を推進したことから、それに伴って買い入れる国債が枯渇しつつあった。そうした状態を利用して国際的な投機筋がドイツ国債を買い煽っていたことから極端にマイナスの利回り状態が続いていたが、最近では同国はじめユーロ圏経済の回復傾向を受けてその反動が出やすくなっている。
 米国でのここにきての長期金利の上昇も、債券市場での買われ過ぎの反動が出ている面が大きいだろう。


株価は年明けに円高とともに調整局面入りか

 だとすれば、長期金利がこれまでの反動により修正的に上昇していくのに伴って、米国で税制改革法が成立したことで材料出尽くしとなったこともあり、年明け以降には株価はある程度の調整局面を迎えておかしくない。
 先週の当欄で述べたように、米ドナルド・トランプ政権はジョン・ケリー大統領首席補佐官に後押しされてホワイトハウスで安全保障政策を管轄しているハーバート・マクマスター大統領補佐官主導で、キリスト教原理主義(エバンジェリカル)右派のマイク・ポンペオ中央情報局(CIA)長官も後押しする形で3月までに北朝鮮を攻撃する見込みである。それにより一時的にリスク回避が強まれば、円高とともに株安の進行を助長することになりそうだ。


年明け以降の株安は単なる調整局面

 ただし、そうした株価の下落局面は単なる調整局面でしかないだろう。
 それは一つには、これまではFRBが年3回のペースで利上げを推進していく姿勢を見せていたなかで、投機筋が作為的に長期金利の上昇を抑え込んでいたことが株価を押し上げる一つの原動力になっていた面があった。ところが、そのFRBではホワイトハウスの“イエスマン”であるジェローム・パウエル理事がまもなく新議長に就任する。
 パウエル次期FRB議長は米権力者層の意向を受けたホワイトハウスの指示を受けて、国防費の大幅な増額により将来的に財政赤字が膨れ上がることが予想されるなかで、対外的な公的債務残高の軽減を目指して緩やかなドル安の進行を意図したハト派的な金融政策を推進すると見込まれるからだ。いうまでもなく、それは中長期的に株高傾向を後押しする一因になるはずである。


株価高騰は軍需の創出を織り込みつつある可能性も

 もう一つは巨大な軍需の創出が株高の継続に寄与すると思われることだ。
 これまで、株価を押し上げる主要なテーマになってきたのが税制改革期待だったが、それが先週末22日に正式に成立したなかで、既に株価には完全に織り込まれた状態にある。
 今回の税制改革では明日以降、述べるように法人税が大幅に引き下げられ、企業部門は10年間で6,500億ドルもの減税の恩恵を受けることになる。ある米証券会社の試算では、主要企業の1株当たり利益(EPS)を平均して約6%押し上げることで、株価収益率(PER)をおおむねその分だけ押し下げる効果があるという。
 もっとも、その程度の押し上げ効果であれば、株価にはこれまでの上昇で完全に織り込まれており、むしろ足元では買われ過ぎの感が強い。ただし、各市場参加者がそこまで考えてはいないだろうが、筆者はこれまでの株価高騰は税制改革期待だけでなく、“自然の法則”による市場の「見えざる手」により将来的に大規模な軍需が創出され、それによりデフレ圧力が克服されて主要企業の収益が一段と大きく押し上げられていくのを織り込みに行っているような気がしてならない。
 いわば、今回成立した税制改革は、先週初18日にトランプ大統領が「国家安全保障戦略」を発表したのと“セット”で考える必要があるということだ。


 明日以降、週末にかけての3日間では、今回決まった米国の税制改革と18日にトランプ大統領が発表した国家安全保障戦略との関係を考えることで、「新冷戦」時代の幕開けについて考察していきます。
 まず明日は税制改革の中身について検討します。
 よろしくお願いします。
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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
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