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株高は修正局面、ユーロ高要因は剥落する可能性も

ポイント
・年明けには株高に拍車がかかったが、短期的に日銀が超大規模緩和策の微修正に動くことや米国による北朝鮮への攻撃が見込まれ、一転してリスク回避が強まる可能性がある。
・欧州経済は不動産価格の高騰や中国向け輸出の好調から景気回復傾向が強まりだしているが、このうち前者はECBが量的緩和策の縮小に動いており、これまで通り高騰が続く環境ではなくなりそうだ。
・中国経済についても、共産党大会を過ぎてインフラ投資が減退することや、一強体制を強めた習近平国家主席が国有企業改革に取りかかると経済活動が減速していき、欧州経済に打撃になりそうだ。



一転してリスク回避が強まる局面になることも

 このところユーロ圏で景気拡大傾向が強まり、もとより堅調に推移していた米国でも景気拡大に弾みがついてきたなかで、米国での税制改革法案への期待も加わって株高傾向が続いたが、実際に法案が成立すると年明け以降、一段とそうした傾向に拍車がかかりだしている。
 とはいえ、前回の当欄で指摘したように、近く日本銀行(日銀)が超大規模な金融緩和策の微修正に動くことが見込まれることや、それ以上に米国が3月までに北朝鮮への攻撃に踏み切る可能性があるため、一転してリスク回避が強まる局面になりかねない。
 既に株価はかなり割高な状態にまで買い上げられており、米国での税制改革による企業収益の押し上げ分を勘案してもそうした状態は変わりようがない。筆者は最近の米株価の高騰は、市場が有している“見えざる手”による機能から、ドナルド・トランプ政権による大規模な軍需の創出を織り込みに行っていると見ているが、それはあくまでも中長期的な要素であり、短期的には応分の調整局面入りが避けられないはずだ。
 ここにきて株高に拍車がかかりだしたのは、展開の主導権を握っている米系投機筋が出来る限り高値に引き付けて売り浴びせようとしているなかで、作為的に買い煽っていることで売り方の踏みが出ており、さらに“提灯買い”もそこに加わっているのだろう。


ユーロ圏の不動産価格が反落も

 ファンダメンタルズ面で気になるのが、米国では税制改革と大規模な軍需の創出による相乗効果から主要企業の業績拡大が期待されるのに対し、欧州経済の景気拡大傾向の持続性に疑問符が付くことだ。
 どうして欧州で最近、景気が回復してデフレ状態も解消されていく兆しが出てきたのかというと、主にドイツはじめユーロ圏北部加盟国で不動産価格が高騰していることや、中国向けの輸出が伸びていることによるものだ。しかし、これらの要因は今後、景気拡大を後押しする要因ではなくなってくる可能性が高い。

 このうち不動産価格の高騰については、欧州中央銀行(ECB)が強力な量的緩和策を推進してきたことでもたらされているものだが、そのECBはその縮小に向けて動いている。マリオ・ドラギ総裁はじめ執行部は南欧諸国出身者で占められているだけに、金融政策の正常化に向けた動きについては慎重に対応する姿勢を示しているが、ドイツ連銀(ブンデスバンク)はじめ北部加盟国の中央銀行総裁がタカ派的な姿勢を見せている。
 そしてそうしたタカ派的な動きを、保護主義的な姿勢からドル高の是正を求めている米トランプ政権が後押ししている。確かに資産買い入れの規模を急速に縮小していくわけではないが、不動産価格がこれまで通り高騰していく環境ではなくなっていきそうだ。


中国経済の減速で欧州経済も打撃を受けることに

 また中国経済については、これまでは昨年10月18日から24日にかけて開催された共産党大会を控えて経済情勢を安定的に推移させるために公共インフラ事業が出ていたことが景気を下支えていたが、既にこうした要因が剥落しているので、それだけでもこれから経済活動は減速していくはずだ。
 それだけでなく、習近平国家主席が党大会で「一強体制」を確立し、特に多くの利権を握っている江沢民元国家主席の勢力をほぼ“壊滅状態”に追い込んだだけに、3月の全国人民代表大会(全人代)を過ぎて人事が完全に決まると国有企業改革に取り組んでくる可能性がある。どの程度本格的に取りかかるか不透明ではあるが、それでも経済活動がそれなりに下押しされるのは避けられないと思われ、中国向け輸出依存度が高い欧州経済も打撃を受けざるを得ないだろう。

 今年の世界経済はそうした下押し圧力に対して、米国での税制改革や軍需の創出によるケインズ効果が相殺していく展開になると思われる。いうまでもなく、日銀は当面は安倍晋三政権に配慮して銀行業界を支援するために緩和策の微修正に動くものの、基本的には超大規模緩和策を続けることで米国の資金ファイナンスを支援していくことになる(日米マネタイゼーション)。


 明日は先週末に発表された米雇用統計の内容を簡単に検証しておきます。
 その内容を受けて、明後日は長期的な景気循環面からインフレ動向を展望します。
 また週末12日には、特に中国経済への影響や、その本質について考察します。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。