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南北融和ムードから見る今後の米国と属国群の関係

ポイント
・今回の一時的な米政府機関の閉鎖はトランプ大統領がDACAの廃止にこだわったからだが、それを要求しているのは中下層の白人から構成されるキリスト教原理主義の勢力であり、起こるべくして起こったと言える。
・年明け以降、南北融和ムードが一気に高まったが、北朝鮮側の巧みな交渉術や韓国側の姿勢を見ていると“出来レース”の印象が強く、また本来的におかしな五輪参加問題をIOCがあっさり認めたあたり、背後で巨大な圧力が働いていたことがうかがわれる。
・これから迎える「新冷戦」体制はかつての旧冷戦時代に比べると、米軍が撤退して属国群に独自に国防力を強化させていくことが異なるが、それは旧冷戦時代が米国の世界覇権の興隆期だったのに対し、現在では斜陽期にさしかかってきたのに対応したものだ。



起こるべくして起こった米政府機関の閉鎖

 米国内ではドナルド・トランプ政権が発足1年を迎えるなかで一時的にせよ政府機関の一部閉鎖といった事態が引き起こされたが、ある意味では起こるべくして起こったといえるだろう。今回のつなぎ予算ではトランプ大統領がメキシコとの国境の壁の建設費用を本予算に盛り込むように求めていることや、民主党がこれに賛成する代わりに、幼少期に親と不法入国した若者の滞在を認める「DACA(ダッカ)」の制度の存続を要求しているのに対し、大統領が拒絶しているからだ。
 このうち、後者のDACAの廃止を求めているのは主に中下層の白人から構成されている福音派及びキリスト教原理主義(エバンジェリカル)の勢力だが、この宗教勢力はキリスト教の“仮面を被っている”とはいえ、アジア極東の特異な宗教勢力を含む「世界三大異端宗教」とともに正当的なユダヤ教の流れを汲むものであり、その背後で親イスラエル右派の勢力が扇動しているようだ。世界覇権国である米国の政財界で主導権を握りつつあるトランプ大統領の背後勢力を考察するうえで、重要な示唆に富むものといえるだろう。


巨大な圧力が働いていた北朝鮮の五輪参加

 米国内では政府機関の一部閉鎖の件で揺れていたが、国際的な注目点はやはり北朝鮮情勢の行方だろう。
 新年元旦に金正恩(キム・ジョンウン)委員長が「新年の辞」で従来通り米国に届く核ミサイル開発の件で米国に敵対的な姿勢を示す一方で、韓国に対しては融和的な姿勢に転じ、平昌(ピョンチャン)五輪に参加する意向を見せた。これを韓国の親北的な性格が強い文在寅(ムン・ジェイン)大統領が歓迎し、トランプ米大統領も昨年末までの態度を豹変させてこれを容認したことで、9日に南北閣僚級会談が開催された。
 それ以降、南北間の実務的な協議が次々に行われ、北朝鮮の五輪への参加やそこでの統一旗の使用、団体競技である女子アイスホッケーでの南北合同チームの編成が一気に決まった。アイスホッケーでの合同チームの編成については、北朝鮮の選手をそこに加えるにあたり、本来的には非常に問題があるものだったが、国際アイスホッケー連盟に続いて国際五輪委員会(IOC)もこれをあっさり追認してしまった。
 そのあたり、その背後で巨大な圧力が働いていると見るべきだろう。


出来レースの印象を拭えない南北協議

 そもそも、9日に最初に南北閣僚級会談が開催されてからあまりにも早く五輪参加に関する件が“トントン拍子”で決まるあたり、いかにも“出来レース”であるとの印象を拭えない。
 この間の動きでまず目を見張るのが北朝鮮側が巧みな交渉力を駆使してあっさり主導権を握ったことであり、その背後で米国からの“指南役”から訓練や指示を受けていることがうかがわれるといえよう。また韓国側も相手の意向を“忖度”して率先して譲歩案を出していたあたり、出来レースの印象を一段と強めるものだ。おそらく、五輪の開催が迫る年明けから一気に南北融和路線を推進していくシナリオが以前からできていたのだろう。
 またこのように考えると、保守的で米韓同盟を重視する朴槿恵(パク・クネ)前大統領がスキャンダルで陥れられて親北的で左翼的な文在寅大統領に代わったのも、新たに主導権を握ることになった親イスラエル右派の策謀が大いに関係している可能性を考えないわけにいかない。前回の当欄でも触れたように、文政権が従軍慰安婦問題を再燃させて日本との関係を悪化させようとしているのも、これから北朝鮮問題への対処を巡り強硬路線の一翼を担っている日本を排除するためであると考えれば得心がいくというものだ。


冷戦体制の構築に向かう点では共通するが・・・・

 新たに主導権を握ることになった親イスラエル右派は経済成長を追求していくうえで、中国を相手に「新冷戦」構造を構築しようとしており、その点ではグローバル志向が強い新保守主義(ネオコン)派や軍産複合体の勢力と変わらない。ただ、従来のグローバル勢力は日本を含む「属国群」への占領統治を続けながら米軍が世界的に展開し続け、各地で戦争を引き起こそうとしているのに対し、親イスラエル右派は駐留米軍を次々に撤退させるとともに、属国群を独立させて独自に国防体制を強化させたうえで、そうした属国群と提携して中国やイスラム勢力に対処することを目指している。
 すなわち、グローバル勢力が推進した冷戦体制はかつて、ソ連を相手とした旧冷戦時代に符合するものであり、これから親イスラエル右派勢力が構築しようとしている冷戦体制はそれとは異なるということだ。


米国の世界覇権循環と属国群との関係

 それは米国の世界覇権を巡る循環のそれぞれの局面に適合するものということができる。
 1944年のブレトンウッズ会議と翌45年の第二次世界大戦の終了を機に米国の世界覇権が確立されたが、ソ連を相手とする旧冷戦時代はその覇権が勢いを増していく局面であり、属国群への占領統治を続けて自主性を認めず、米軍が世界的に展開することができたのも、それだけの勢いがあったからこそ可能だったわけだ。世界中に展開できるだけの実力があれば、属国群に自主性を認めないで占領統治体制を続けた方が自らの勢力基盤をしっかり掌握することができたからだ。
 その後、旧冷戦時代は89年のベルリンの壁崩壊と91年1月のソ連邦の解体で終わったが、それ以降の世界情勢は経済システム面ではグローバル生産体制が構築されるとともに、米国が絶対的な超大国として君臨した。いわば、この時期は米国の世界覇権の最盛期ということができるだろう。
 そしてそうした体制が08年9月のリーマン・ショックを機に終焉を迎えたのであり、現在ではグローバル生産体制が機能しなくなってきたことからかつての冷戦時代に復帰せざるを得なくなってしまった。ただ、米国の世界覇権が斜陽期にさしかかってきたことで、属国群との関係もそれに適合して自立させていく方向になってきたわけだ。
 いうまでもなく、それは属国群の独立志向を一段と強めていくことで米国の世界覇権をさらに弱体化させていくことになり、世界情勢は時間を経るにつれて群雄割拠の色彩を強めていくことになる。


 明日以降の3日間もこの続きを掲載します。
 明日は米系財閥の本来の性格を考察するうえで、その先祖の業績を遡って見ていくことで検討していきます。
 明後日もそれを受けて結論付けたうえで、週末には建国以来のイスラエルの事情を簡単に振り返ることで、より理解を深めたいと思います。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。