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米国の世界覇権の斜陽期入りで通貨政策もドル安志向に転換

ポイント
・米国の世界覇権が斜陽期に差し掛かり、米系財閥で権力の組み換えが起こってナチズム系が主導権を握っているトランプ政権が成立したことで、米国の通貨政策がドル高志向から旧冷戦時代と同様に切り下げ方向に転換している。
・かつての旧冷戦時代には貿易赤字や対外債務の累増が進み、それが臨界点にさしかかると一気にドル切り下げに動いたが、それにより世界的に大きな打撃がもたらされたので、現在では緩やかなドル安政策が模索されている。
・米国は「米国第一」により海外に滞留しているドル資金を制度的に米国に還流させようとしており、流動性不足による対外窮乏化に対処するためにFRBにはハト派的な金融政策が求められている。
・最近では米景気拡大が加速し、株価も高騰していたことで、FRBの利上げの回数が年4回に引き上げられるとの見通しが出ていただけに、今回の株安はそれを抑え込む意義があった。



時代に転換点を迎え大統領選挙でトランプ当選

 米国の世界覇権は08年9月にリーマン・ショックに襲われたのを機にその絶頂期が曲がり角を迎えてしまい、それとともに現在ではグローバル生産体制も機能しなくなっている。さらには、「世界皇帝」デイヴィッド・ロックフェラーが昨年3月20日に101歳の“大往生”の末に死去したのは、“一時代の終わり”を告げるものとして、まさにその世界覇権が斜陽期に転じていく象徴的な事例とでもいうべきものだろう。
 それにより主導権が世界単一政府志向から旧冷戦時代に主役だったナチズム系に回帰したことで、16年11月の大統領選挙ではデイヴィッド・ロックフェラーの系列であるヒラリー・クリントン元国務長官ではなく、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官が推していたドナルド・トランプ現大統領が勝利したことは、これまで当欄で述べてきたことだ。


ナチズム志向に回帰したことでドル切り下げ政策が復帰へ

 ナチズム系主導で世界情勢が冷戦体制に回帰していけば、それとともに米国の政策姿勢もそのうちのいくつかが当時と同じものに復帰していくのは当然のことだ。
 例えば通貨政策については、旧冷戦時代には経常赤字が増大して対外債務があまりに積み上がり過ぎると、いずれかの時点でドル切り下げに動くことで対外債務を軽減させてきたが、世界覇権の絶頂期には米国への証券取引ベースでの対米資金還流を促進させ、またグローバル生産体制を円滑に機能させるためにドル高政策が推進された。これから「米国第一(アメリカ・ファースト)」を掲げているナチズム系主導の政策運営が軌道に乗っていけば、通貨政策も従来の旧冷戦時代と同じようにドル切り下げ政策に回帰していくことになる。
 実際、1月24日にスティーブン・ムニューシン財務長官が「ドル安は貿易(ビジネス)機会の面で良いことだ」とドル安容認とも受け取れるような発言をしたのは、まさに“本音”が出たものと言えるだろう。そうすることで米国の輸出環境を改善させて貿易赤字の縮小を目指し、またそれ以上に今後、大規模減税政策や公共インフラ事業、さらには国防費を大幅に上積みして財政面で歳出を大幅に増やすにあたり、実質的な対外債務を軽減させようとしている。
 ただかつての冷戦時代と異なるのは、以前には米国の赤字や累積債務が臨界点にまで膨れ上がった時点で一気にドル切り下げに動いたが、再びそれを実施すると国際金融市場が動揺して世界的に大きな打撃を受けてしまう。そこで当時の失敗を教訓にして、今のうちに密かに緩やかなドル安政策を推進していこうとしていることだ。


米国の通貨政策はもはや抜本的に変わっている

 実際、最近ではユーロ高・ドル安傾向が進み、そして直近では対円でもドル安が進むようになったことにそれが見て取れる。トランプ政権が誕生してから、米国は日本銀行(日銀)までが出口に向かうと自らの資金ファイナンスに支障を来してしまい、世界的にも深刻な信用収縮を引き起こしかねないので現行の政策の継続を容認しているが、それ以外の主要国・地域の中央銀行には出口に向けてしっかり動くように要請している。
 ユーロ高が進んでいるのは、欧州経済の好調を背景に欧州中央銀行(ECB)が超金融緩和策の出口に動く姿勢を示していることもあるが、その点については米国でも経済状況がそれ以上に良好な状態にあり、米連邦準備理事会(FRB)も段階的にバランスシートの縮小を強化しながら緩やかな利上げを継続する姿勢を示しているので、特にその大きな理由とするには無理がある。
 多くの金融市場関係者はいまだに米政府はドル高政策を続けていると信じている向きが多いようだが、米ロックフェラー財閥で重大な権力の組み換えが起こり、それに伴って密かに対円以外では緩やかなドル安政策に転換していることをよく認識する必要がある。米国の世界覇権の絶頂期における世界単一政府志向によるドル高政策は、17年1月のトランプ政権の発足とともに、より近視眼的にいえばイスラエル左派系が主導権を握っているグループ・オブ・サーティ(G30)の最高幹部の一人としてFRBに送り込まれたスタンレー・フィッシャー前副議長が昨年10月に辞任し、さらにホワイトハウスから送り込まれたジェローム・パウエル新議長が今月初頭に正式にその地位に就任したことで、もはや抜本的に変わっているのである。


流動性不足の相殺のためにもハト派的な金融政策運営が求められる

 ただ、かつての冷戦時代とこれから迎える新冷戦時代とで異なるのは、旧冷戦時代には米国の世界覇権が絶頂期にまだ達していなかったとはいえそこに向けて興隆していた段階であったのに対し、現在ではそれを過ぎて斜陽期にさしかかってきたことだ。
 旧冷戦時代が始まる当初では、米国はマーシャルプランの実施やガリオア・エアロ資金を用いて戦後復興を支援し、制度面でも国際通貨基金(IMF)や世界銀行を創設するなどしてドル資金を世界中の多くの国々に供給し、1944年のブレトンウッズ会議で確立された米ドル基軸通貨体制がさらに盤石になるように配慮していった。またそれにより、世界経済が一段と浮揚していくことを後押しすることで、世界覇権国としての責務を如何なく発揮してきた。
 しかし、これから米国はその覇権が衰退期に向かうので、世界のことなどかまっていられる余裕がなくなりつつあり、自国の産業を復活させて経済基盤を強化することに優先的に取り組まなければならなくなっている。昨年末12月22日に成立した大型の税制改革法では法人や富裕層を対象とする減税もさることながら、主要企業が海外に滞留させている資金を米国に還流させることを促すことで設備投資を活発化させようとしている。
 ただそれは、世界中に流通しているドル資金(ユーロ・ダラー)が減少していくことでグローバル規模で流動性不足を引き起こす恐れを強めるものであり、経済構造が脆弱で自国通貨の信用が高くない新興国では深刻な事態に陥りかねない。これはまさに、世界覇権国による対外窮乏化政策にほかならない。それだけに、パウエル新体制下のFRBにはハト派的な政策運営が求められているのだろう。


今回の株価暴落の意味合い

 1月26日まで連日、米株価が史上最高値を更新していく高騰を続けていた際には、米国経済がここにきて一段と好調になってきたこともあり、3月20~21日に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げの決定とともに、今年の利上げの回数の見通しもこれまでの3回から4回に引き上げられるとの観測が一部で強まった。今回の株価の暴落が起こったことでそうした見方は後退したが、このように考えると、今回の株価暴落の意図が見えてくる気がしないでもない。
 それは、3月の全国人民代表大会(全人代)が終わった後で中国の習近平国家主席に対してしっかり国有企業改革に取り組むように圧力をかけながら、利上げの回数の見通しを後退させることで、パウエル新FRB議長がタカ派的な地区連銀総裁の要求を拒絶していくのを後押しする意味合いがあるのかもしれない。


 今週はこれで終わりになります。
 来週もこれまでと同様に、週明け19日から掲載していきます。
 米国のドル安政策の対象が今週になると対円にも波及していきましたが、そのあたりの事情や円高にもかかわらず日本株が上昇するようになった背景について、機会があれば考察したいと思っております。
 来週もよろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。