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円高で日本株が上昇した真因を探る

ポイント
・米政府は緩やかなドル安政策を志向しており、ECBはじめ他の主要国・地域の中央銀行には超金融緩和策の出口に向けて動くように圧力をかけているが、日銀にたいしてだけは信用収縮が強まるのを防ぐために現行の超緩和策の継続が容認されていると見られている。
・昨今の円高は日銀が超緩和策の微修正に動くとの見方がその一因になったが、それは安倍政権が銀行業界にも3%以上の賃上げを求めているなかで、銀行に打撃をもたらしている政策を除くことが目的であり、超大規模緩和路線は不変である。
・ここにきて円高が進むなかで日本株が上伸しているが、その背景には米政府が軍需やインフラ需要を創出して大型税制改革により設備投資を活発化させようちしているなかで、日本側に対米直接投資に積極的に動くように要請していることがあるようだ。



日銀まで出口に動くと信用収縮の危険性を高める

 ただし、ドナルド・トランプ政権が“本音”では緩やかなドル安を志向しているとはいえ、日本銀行(日銀)に対しては現行の超大規模な金融緩和策を継続することを容認しているはずなので、ドル安が進んでも対円についてはそうした見方は当てはまらないとする見方には根強いものがあった。
 トランプ政権はドル安を推進するにあたり、欧州中央銀行(ECB)をはじめ主要国・地域の中央銀行には超金融緩和策の出口に向けて動くように圧力をかけていたが、日銀までそれに同調すると世界的に信用収縮を強めてしまい、米金融市場にも悪影響がもたらされかねないからだ。


日銀の微修正は本来的にそれほど大きな要因ではない

 市場では、日銀が近く超金融緩和策の微修正に動くとの観測がくすぶっており、それが先週には円高の一因とされたものだ(どこまでそれに妥当性があるのか不明だが)。
 それは一つには、現行の政策では年間80兆円ものペースで国債を買い入れることになっているが、実際には同50兆円ものペースでしか買うことができない状態なので、現状に合わせて公式の政策も変えるというものだ。またもう一つが、金利を下げ過ぎると銀行が打撃を受けてしまい、金融仲介機能が阻害されてかえって逆効果になる(リバーサルレート)ので、それを是正しようというものだ。

 ただ以前、当欄で述べたように、日銀の黒田東彦総裁は本来的に銀行の収益状況にはあまり留意しておらず、基本的には従来の超大規模な金融緩和策を継続する意向であるようだ。あくまでもその微修正をにおわせているのは、安倍晋三政権が高らかに「デフレ脱却宣言」を出すにあたり、財界に3%以上の賃上げの実施を求めているなかで銀行業界にもそれを呑ませるにあたり、その銀行業界に配慮するために日銀側が安倍首相の意向を“忖度”していることによるものだ。
 確かにこうした日銀が微修正に動くといった観測が先週の円高の一因になった可能性はあるが、少なくとも本来的にそれほど大きな要因ではないはずだ。


カギを握る日米緊急電話首脳会談の動向

 では円高の真因はどこにあるのかを考察するにあたり、カギを握るのが日米政府間の裏側の動きだ。先週14日に安倍首相とトランプ大統領が緊急電話首脳会談を行ったが、そこでは首相やマイク・ペンス副大統領が平昌(ピョンチャン)五輪の開会式に出席したなかで、主に今後の北朝鮮問題を巡る日米間の連携について話し合われたとされている。また、沖縄で米軍機による事故がたびたび起きているのを踏まえ、その厳格な安全の確保も要請されたとしている。
 ただし、米政府が1月22日に太陽光パネルや洗濯機を対象に中国や韓国に対して緊急輸入制限(セーフガード)を発動し、さらに中国に対しては鉄鋼やアルミでも、それに加えて知的所有権や技術供与の強要についても追加措置の発動を検討しているとされているなかで、そうした通商問題をはじめとする日米間での経済協力についても話し合われていておかしくない。実際、会談が終わった後で、トランプ大統領がその際に日本からの投資を要請していたことが明らかになっている。


円高で株高になった真因とは?

 実は、それ以前から水面下で日米の担当官僚の間で日本からの対米直接投資の拡大に向けて折衝が行われていたようだ。
 トランプ政権は米国経済の生産性の上昇を促進させるにあたり、公共インフラ事業を積極的に打ち出し、また「新冷戦」構造を構築することで大規模な軍需も創出していき、それを昨年12月22日に大型税制改革を実現させたことで、世界中に流出した資金を米国に還流させることで設備投資を促し、生産活動を活性化させようとしている。いうまでもなく日本勢による対米直接投資が活発に出てくることが期待されるところであり、日本の主要企業にそれを促進させるには円高・ドル安に誘導することが必要になってくる。
 日米間の裏側での折衝でそうしたことが合意されていておかしくない。実際、先週15日に円高が進むきっかけになったのが麻生太郎副首相兼財務相の発言だったのに見られるように、今回、円高が進んでも日本側から特にそれを懸念する声が聞かれていないのを見ればおおよその憶測がつくだろう。
 だとすれば、特に先週後半に円高が進むとともに、外国人投資家が日本株を物色してきて特におかしなことではないはずだ。


 明日、明後日では、先週に日銀の次期幹部人事が政府から提示されましたが、その決定の舞台裏とともに、最近の米権力者層の間での権力の組み換えが進んだことによる影響を考えることにします。
 今回の日銀に先立って行われたFRBの人事決定と比較することで、日米両政府での主要な勢力とその人事に及ぼす影響について考察します。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。