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米権力者層は国際通商体制の改変に向けて貿易戦争を望んでいる

ポイント
・今回の米国の輸入制限措置は明らかにWTO違反であり、多くの人たちは自由貿易体制が正しいものだと信じ込んでいるので拒絶反応が強いが、この問題はそうした次元の話ではない。
・現行のWTO体制は90年代に入り東西冷戦が終わってグローバル生産体制が構築されていくなかで、旧共産圏諸国や新興国、特に中国を資本主義体制の枠組みに組み込むために導入されたものだ。
・現在、米国で主導権を握っている勢力は新たな経済成長体系として中国を相手に「新冷戦」構造を構築しようとしており、それに合わせて敵対陣営の排除に向けて国際通商体制も改変していく必要がある。
・その意味では、報復合戦の高まりから貿易戦争が強まれば現行の体制が有名無実化、形骸化していくので、米権力者層としては好都合である。



WTO違反なのは明らかだが・・・・

 そもそも、ドナルド・トランプ政権の政策はイスラム圏からの入国制限といったいかにも排他的な政策については、既存の秩序や価値観に慣れ親しんだ人たちの間では、深く考えることなしに“感覚的”に拒絶感を抱きやすいものだ。こうした保護主義的な動きについても、自由貿易が正しいもので保護主義的な動きは良くないことだと多くの人たちが信じているだけに、その実態や裏側の真実を見ないで拒否反応を示す向きがほとんどである。
 実際、保護主義的な動きはそのほとんど、否すべてが世界貿易機関(WTO)違反とされてしまうだろう。

 今回、米国はその措置を打ち出すにあたり表面的な名分として、安全保障に関することで関税を強化するのはWTOルールに認められたものであり、不当に安価な鉄鋼製品が流入したことで国内の鉄鋼産業が空洞化してしまい、防衛産業が打撃を受けていることをその根拠としている。しかし、これはいかにも“詭弁”以外の何物でもなく、実際に紛争処理小委員会(パネル)が設置されて争われれば、間違いなく米国は敗れるだろう。

 しかし、先週初26日にトランプ大統領がいみじくも「WTOは公正な貿易をほぼ不可能にする」としてその体制そのものを真っ向から否定する発言をしたように、現在、米国で主導権を握っている権力者層はこの枠組みそのものを“破壊”しようとしているのである。この問題を考えるうえで、私たちは既存の秩序に対する常識に縛られずにこのことをしっかり認識する必要がある。
 多くの報道機関や識者は、自由貿易体制が崩壊すると米国でもインフレが進んでかえって雇用が失われたり、それが行きつくところにまで行きつくとブロック経済化が進んで世界経済が危機的な状況に陥るといった論調を繰り広げている。しかし、この問題の本質はそうした次元の話ではないのである。


時代の変化に合わせて制度を変えていくのは当然のこと

 以前から当欄で述べてきたことだが、16年11月の米大統領選挙で世界単一政府系の親イスラエル左派が推していたヒラリー・クリントン元国務長官を“インチキ選挙”により破り、トランプ政権を成立させたナチズム的な親イスラエル右派は、中国を相手に「新冷戦」構造を構築しようとしている。それは、08年9月にリーマン・ショックが起こったのを機に米国の世界覇権が絶頂期から斜陽期に転じたなかで、それまでの多国籍企業を中心とするグローバル生産体制が機能しなくなってしまい、新たな経済成長路線を構築していくためには必然的なものと言い得るものだ。
 そうしたなかで、現在のWTO体制は多くの旧共産圏諸国や新興国、それもとりわけ中国を資本主義経済群に取り込んで、西側先進国の秩序に組み込むために導入されたグローバル国際制度である。その前提となる多国籍企業を中心とするグローバル生産体制が機能しなくなり、新たに「新冷戦」体制を構築させようとしているため、国際通商体制もそれに合わせて変えていく必要があるのは、ある意味では当然のことである。


現行のWTO体制を崩壊させて新体制に移行させる必要がある

 現在のWTO体制は95年1月1日に、それまでの「関税と貿易に関する一般協定(GATT=ガット)」体制を引き継ぎ、それを発展解消させて成立したものとされている。しかし、そうした認識は的外れではないとはいえ、完全に実態を言い表しているとも言い難い。
 なぜなら、現在のWTO体制は前記のように旧共産圏諸国や多くの新興国を取り込んだグローバル規模であるのに対し、以前のGATT体制はソ連を相手に冷戦体制下にあったなかで、その対象が西側資本主義経済諸国だけに限定されていたからだ。これから中国を相手に「新冷戦」体制を構築していくにあたり、米国を中心とする国際通商体制の枠内に“敵国”であるその中国やその衛星国がとどまり続ければ、いろいろな意味で不都合が生じてしまう。
 例えばかつて、西側諸国は対共産圏輸出統制委員会(ココム)規制により、ソ連やその衛星国に対して軍事技術や戦略物資の輸出を規制していた。今後、「新冷戦」体制が構築されていくにあたり、米国は現行のWTO体制をいったん崩壊させたうえで、中国やその衛星国、さらに中東ではイスラエルに敵対するイランのような国々をそこから排除していき、新たな国際通商体制に移行させていく必要があるわけだ。


米権力者層としては貿易戦争が強まるのは好都合

 そうした意味では今回、米国が保護主義的な措置を打ち出すことで欧州連合(EU)が迅速に対抗措置を打ち出す動きを見せていることは、米国で現在、主導権を握っている権力者層の間では好都合である。貿易戦争が強まることで現行のWTO体制がなし崩し的に有名無実化、形骸化していけば、米権力者層としては所期の目的を達成できるのである。
 米国が今回の措置を表明すると、EUやカナダとは異なり、中国が当初は批判したり牽制するだけで、すかさず対抗措置を打ち出す姿勢を見せなかった。それは、中国がその経済構造面から対米輸出が大幅に減少すると致命的な打撃を受けかねないので米国との対立が激化することを望んでいないだけでなく、当局の間ではそうした米権力者層の意図を見抜いていた面もあったのではないか。


 週末の明日もこの続きを掲載します。
 日本への影響その他について、付け加えておきます。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。