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現行の量的緩和策の期限後にテーパリングを目指すECB

 毎度、当サイトをご覧いただき、ありがとうございます。
 最初に筆者からお知らせがあります。
 このたび、筆者が講師を務める講演会が大阪で行われることになりました。
 11月19日に大阪堂島商品取引所にて、午後1時より講演を行わせていただきます。
 またそれが終わった後も、午後3時より懇親会において、気軽に質問をしていただければお答えさせていただきます。
 無料で入場できるだけでなく、皆様方と触れ合える数少ない機会ですので、大阪及びその周辺にお住まいの方は是非、下記サイトにてお申込みをしていただいたうえでご来場いただければと思います。

http://www.sunward-t.co.jp/seminar/2016/20161119_3/index.html


ポイント
・ECBの現行の量的緩和策は期限とされる17年3月以降も続けられるが、資産買い入れの規模が徐々に縮小されていく(テーパリング)公算が高い。
・米国は軍需主導経済に移行する以前にスリム化を意図しているのに対し、ドイツは健全財政政策の維持を目論んでいるなかで、たまたま当面はテーパリングで思惑が一致している。



延長されるもテーパリングが導入される展開か?

 次に、もう一つのユーロ相場を取り巻く問題についても見ておく。先々週20日に開催された欧州中央銀行(ECB)の定例理事会では、金融政策の据え置きを決めたうえで、理事会後のマリオ・ドラギ総裁の会見では現行の毎月800億ユーロのペースで国債その他の資産を買い入れる政策を、少なくとも当面の期限である17年3月までは続けることが表明された。
 今月4日にECB筋が量的緩和策の規模縮小(テーパリング)に動くとの報道が出て以来、ヴィトル・コンスタンシオ副総裁はじめECB執行部が再三にわたりそれを否定したにもかかわらず、市場ではそうした観測が根強くくすぶり続けた。それが今回のドラギ総裁の会見で払拭されたようだ。

 ただし、ドラギ総裁は同時に「ユーロ圏経済は引き続き緩やかながらも安定的に回復している」「インフレ率は従来の想定に沿って加速していく見込み」とも述べており、決してハト派的な見通しを述べたわけではない。
 次回12月8日に開催される理事会では、これまで推進されてきた量的緩和策の検証をしたうえで、17年4月以降もそれを続けるかどうか決めるとされている。
 ただ、ユーロ圏経済やインフレ率に比較的楽観的な見通しを述べているというのは、現行の量的緩和策が期限を迎えても、ドラギ総裁が必ずしも現状の購入ペースでは継続しないことを示唆していると読めなくもない。実際、毎月800億ユーロのペースで“バズーカ砲”並みの強力な量的緩和策をこれまで推進しておいて、期限が到来すると急に一気に資産買い入れの動きを停止するのは現実的ではない。
 しかも、ECB執行部にはドラギ総裁がイタリア出身、コンスタンシオ副総裁がポルトガル出身であるのをはじめ、その多くが緊縮財政政策を強いられていることで経済状態が不況に陥っている南欧諸国の出身者で占められているだけに、本来的にその延長を求める雰囲気が強いはずだ。唯一のドイツ出身枠から出ているペーター・プラート専務理事ですら、ドイツ政府やドイツ連銀(ブンデスバンク)の意向とは裏腹にハト派的な傾向が強い。
 そうした状況では、現行の量的緩和策が17年3月で終わることで完全に打ち切りにするのではなく、買い入れ額を徐々に縮小させていくテーパリングに移行するのが自然だろう。


米独間でたまたま当面の思惑が一致

 南欧諸国だけでなく、ECB執行部の間でも量的緩和策の延長を志向する向きが多いなかで、同じ南欧諸国出身であるドラギ総裁が現行の緩和策を徐々に縮小していく方針を探っているのは、いささか奇妙な感がしないでもない。
 おそらく、ドラギ総裁は行き過ぎた緩和策の是正を探ろうとしているグループ・オブ・サーティ(G30)からの指示を受けて動いているのだろう。実際、ドラギ総裁はG30の顧問に就任しているジャンクロード・トリシェ前ECB総裁はじめ、他国の中央銀行関係者であるにもかかわらずスタンレー・フィッシャーFRB副議長からも指示を受けることがあるとされているからだ。
 ECBに量的緩和策の規模縮小に動かせたうえで、ドイツ銀行を追い詰めるなどして圧力をかけることで、ドイツ政府に積極財政政策に踏み切らせようとしている米権力者層の思惑が透けて見えると言えよう。

 そこで興味深いのが、ECBのテーパリングについてはG30だけでなく、ドイツ財務省も支持していることだ。ただし、G30はそれにより信用不安を引き起こして“焼け太り化”しているものをスリム化させたうえで、軍需の創出を含む財政出動政策への転換を促しているのに対し、ドイツ政府(財務省)は自国が財政出動に踏み切らなければならなくなるのを嫌がっていることからECBのテーパリングを支持している。
 いわば、両者の思惑は“正反対”であるにもかかわらず、当面はテーパリングを支持する点がたまたま一致しているに過ぎない。米国で次期政権が「新冷戦」構造の相手である中国と切り離してロシアと提携していけば、必然的にその対立が表面化するはずだ。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。