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極めてタカ派的になった米雇用統計の内容

ポイント
・今回の米雇用統計では失業率が低下予想に反して前月と変わらなかったが、職探しをする人が大幅に増えて労働参加率が急上昇しており、それが前月と不変だったら0.2ポイントほど低下していたと思われる。
・労働市場が極めてひっ迫しつつあるのはNFPの30万人を超す伸びに端的に表れており、過去分がかなり上方修正されているだけでなく、内容的にも製造業が伸びているなど申し分のないものになった。
・その割に平均時給の伸びが予想を下回り、前月分も下方修正されたが、前月の大幅な伸びは大型の税制改革の成立を受けて主要企業が一時金を支給した一時的な要因によるものだ。
・それでも賃金が伸びてこないのは、職探しをする人がかなり増えたことで長期失業者が職にありつくケースが増加し、低賃金の職種で雇用者数が増えたことによるところが大きいと思われる。



失業率の実態は0.2ポイント低下か?

 次に、9日に発表された2月の米雇用統計について簡単に検証する。
 今回は失業率が4.0%に低下すると予想されていたが、4.1%と前月と変わらなかった。とはいえ、労働参加率が前月の62.7%から63.0%に急上昇しており、景況感が一段と上向いたことから職探しをする人がさらに大幅に増えたことを示唆するものとなっただけに、失業率が低下しなくて当然である。
 おそらく、労働参加率が前月と変わっていなければ、失業率は0.2ポイントほど下がっていたのではないか――すなわち、実態としては事前予想をもさらに下回って4%を切っていた可能性が高いということだ。労働市場が極めてひっ迫した状態にあることが示唆されるところだ。


NFPが30万人を超す大幅な増加幅に

 労働市場が一段とひっ迫してきているのは、非農業部門の雇用者数(NFP)の数値に端的に表れた。
 今回の前月比の増加幅は31万3,000人と極めて高水準になり、事前予想(20万5,000人)を実に10万人以上も上回った。しかも、前月分が20万人から23万9,000人に、前々月分も16万人から17万5,000人に上方修正された。
 内訳を見ても、政府部門を除いた民間部門が28万7,000人に達した。さらにその中でも好天に恵まれたことで建設業(6万1,000人)が増えたのもさることながら、製造業が3万1,000人も増えており、内容面でも申し分のないものとなった。

 今回の発表では、サンプリングの対象となる12日の週を含む週間失業保険申請件数が22万2,000件とかなり少なかったので、ある程度は好調な内容になることが予想できていた。
 ただ、7日に発表されたオートマティック・データ・プロセッシング(ADP)雇用統計の前月比の増加幅が23万5,000人と事前予想(20万人)を上回っていたので、過去の事例からは今回の雇用統計は予想を下回ると見る向きも散見された。にもかかわらず、結果は見事にそれが裏切られたあたり、作為的に操作しても覆い隠せないほど労働市場の情勢が一段とひっ迫してきたということなのだろう。


前月の平均時給の大幅な伸びは特殊要因

 ただ、その割に平均時給が低調な状態が続いており、なかなか賃金が上昇してこないのが気になるところだ。今回はそれが26.75ドルと前月比0.04ドル(0.1%)上昇にとどまった。前年同月比では2.6%と事前予想(2.8%)を下回り、前月分も2.9%から2.8%に下方修正された。
 市場でも、雇用統計の発表を受けて株式市場ではNFPの大幅な増加幅を好感して急伸する地合いを継続したが、債券市場や外為市場では平均時給の結果が嫌気され、長期金利(10年債利回り)は2.9%台を維持できず、ドル高の勢いも削がれてしまった。

 どうして労働関連の指標とは裏腹に平均時給が低調な内容になったのかというと、一つは前月に2.8%(修正値、当初は2.9%)と一気に伸びたのが特殊要因による押し上げによるところが大きかったことだ。昨年末(12月22日)にようやくトランプ政権が“鳴り物入り”で標榜していた大型税制改革が成立したのを受けて、年明け1月中には政府の意向もあって、主要企業が従業員に一時金を支給するところがかなり見られた。そうした要因が、当該月の平均時給をかなり押し上げたと見られる。


長期失業者の参入が押し下げ要因になっている公算も

 おそらく、平均時給の趨勢は今回、発表されたように前年同月比で2.6%程度なのだろう。それでも労働市場が一段とひっ迫してきたなかで、この数値がなかなか上昇してこないと思う向きが多いのではないか。
 ただ、前記のように労働参加率が大幅に上昇するほど職探しをする人が増えたということは、これまで就職活動を諦めていたような長期失業者が職にありつく事例が増えつつあることがうかがわれるだけに、平均的な賃金の伸びが抑えられて当然である。
 だとすれば、ある程度のタイムラグを置いて全体的な賃金の伸びも加速していく公算が高いと言えなくもない。


FRBの利上げ年4回の見方が増えることに

 これから株価がこのまま出直っていくか、不安定な動きを続けるかにもよるが、今回の雇用統計の発表を受けて、米連邦準備理事会(FRB)の今年の利上げの回数が4回になると予想する向きが増えるだろう。実際、今月20~21日の連邦公開市場委員会(FOMC)では、もはや利上げの決定は既定路線だが、地区連銀総裁の間で4回への引き上げを主張する委員が増えておかしくない。
 就任して初めて会合の議長を務めるジェローム・パウエルFRB議長が、ホワイトハウスの“イエスマン”としての役割を担うべく、事前に水面下でそうしたタカ派的な見解を抑え込んで説得できるか、早くも試練を迎えたといえそうだ。


 明日以降、17日土曜日までは北朝鮮問題について考察します。
 年明け以降、またさらにここにきて一転して南北間や米朝間で融和ムードになった背景や、その背後の米国による対中国政策について考えていきます。
そしてそのうえで、鉄鋼やアルミの輸入制限措置、中国で足元で全人代が開催されていることも絡めて考えていきます。
 今週は1日多く、17日土曜日まで掲載する予定でおります。
 今週もよろしくお願いします
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。