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北朝鮮の非現実的な提唱で米国とも一気に融和ムードに

ポイント
・先週は訪朝した韓国の特使が金正恩委員長が体制の安全保障と引き換えに朝鮮半島の非核化を提唱し、さらに訪米してこのことを伝えるとトランプ大統領が首脳会談の開催をあっさり受託するなど、北朝鮮問題で世界を大きく驚かせる事態が相次いだ。
・朝鮮半島の非核化は在韓米軍の撤退を要求していると思われ、それは親イスラエル右派の思惑通りの動きである。ただ、北朝鮮は核兵器を廃棄しても、既に製造技術を手にしているのでその気になればいつでも製造できる。
・とはいえ、北朝鮮の核兵器は本当は中国や欧州を照準にしていることを考えると、朝鮮半島の非核化は本来的には非現実的であり、金正恩委員長も米権力者層の傀儡であることもあり、本気で非核化に取り組む気はないと思われる。



金一族勢揃いで韓国特使を歓待

 次に、先週起こった大きな出来事について検証していく。特に北朝鮮情勢で大きな動きを見せたが、それ以外にも米国で鉄鋼とアルミニウムの輸入に関税をかける輸入制限措置が正式に導入されたのをはじめ、ゲーリー・コーン米国家経済会議(NEC)委員長が辞意を表明したり、日本でも森友問題で財務省による決裁文書の書き換え問題で国会が紛糾した。
 結論から先に言えば、大きな枠組みでいえば、これらの要因はすべて何らかの形でつながっているものだが、今週は北朝鮮情勢を中心に見ていくことにする。

 まず先週の北朝鮮情勢の“激変”は、週初5日に韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の特使として鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家保安室長と徐薫(ソ・フン)国家情報院長が訪朝して金正恩(キム・ジョンウン)委員長と会談し、文大統領の親書を渡したところから始まった。金委員長は終始笑顔を絶やさず、李雪主(リ・ソルジュ)夫人や妹の金与正(キム・ヨジョン)宣伝扇動部副部長も現れるなど、金一族が勢揃いして迎える歓待ぶりを見せた。


北朝鮮側が体制保障と引き換えに非核化を提唱

 翌6日に訪朝した特使が金正恩委員長のメッセージを公表したところから、世界情勢を揺るがす状況が始まった。
 そこでは①4月末に板門店(パンムンジョム)の「平和の家」で南北首脳会談を行う、②軍事的な緊張緩和と緊密な協議のために南北首脳間のホットラインを設置する、③北朝鮮側は非核化と米朝関係の正常化のために米国側との協議を希望、④北朝鮮側は朝鮮半島の非核化の意思を明確にし、軍事的な脅威が解消し体制の安全が保障されれば核を保有する理由がないことを明らかにした、⑤対話が持続する限り、北朝鮮は核実験や弾道ミサイルの発射実験を実施しないと表明――といった内容だった。
 このなかで特に注目されるのが、言うまでもなく体制の保証と引き換えに非核化に言及したことだ。


米大統領が呆気なく北朝鮮との首脳会談の要請を受け入れる

 さらに8日には、韓国側の特使だった鄭室長が訪米してこのことを伝えたところ、ドナルド・トランプ大統領が5月に会談しても良いことを表明したことで、世界的にさらに大きな“サプライズ”もたらされた。かつて、94年6月にジミー・カーター元大統領が訪朝して金日成(キム・イルソン)国家主席と会談したことはあったが、現職の大統領が北朝鮮の要人と会談したことがこれまでにないなかで、トランプ大統領が呆気なくこれを受け入れたことで世界中が呆気にとられた。
 その後、トランプ大統領はすぐに安倍晋三首相に電話を入れて協議をしたうえで、会談に先立って4月に首相が訪米して首脳会談を行い、緊密に打ち合わせをすることが発表された。さらに、少なくとも北朝鮮側と合意が成立するまでは現行の制裁を継続することも発表された。

 北朝鮮側が非核化を提唱するようになり、米朝首脳会談が開催されることになったことで同国の核問題が終わるのかと言えば、そうはならないと見る向きが圧倒的なようだ。これまで、94年10月21日に米朝枠組み合意が成立し、北朝鮮側も合意に従って西側報道機関に放映させながら施設を爆破したものの、実際には密かに核開発に向けて動いていた先例があるだけに、とてもそうした同国の言動を信じるわけにいかないというものだ。
 実際、米国内では今回のトランプ大統領の決断に対し、あまりに“前のめり”なものだとしてこれを不安視するなど批判的な論調が多いようだ。おそらく、北朝鮮側は今回も非核化に取り組む気はないだろう。


北朝鮮側の提唱は非現実的

 ここでまず考えるべきなのは、北朝鮮側としては単に核兵器の製造を止めるだけでなく、既に保有している分を廃棄しても、既に製造技術を修得しているだけに、いつでもその気になれば製造できることだ。
 また非核化の対象を自国(北朝鮮)ではなく朝鮮半島としているが、これは在韓米軍が戦術核を持ち込んでいることを念頭に置いているのだろう。トランプ政権で主導権を握っているナチズム的な親イスラエル右派は、これまで主導権を握ってきた軍産複合体の勢力に反対して在韓米軍を撤退させることを目指している。その意味では、北朝鮮側が朝鮮半島の非核化を提唱してきたのは、そうした意図が隠れているのかもしれない。
 ただ少し考えると、この提唱は非現実的であることがわかる。

 なぜなら、北朝鮮の現体制の保障を前提にするのであれば、朝鮮半島が南北に分断された状態がこのまま続くか、統一されるとしたら北朝鮮が韓国を併合する形にならざるを得ないからだ。北朝鮮の残酷な独裁体制に組み込まれることを、韓国の国民が許容できるのかといった“馬鹿げた”前提がここで出てくる。
 また分断された状態がこのまま続くとしても、在韓米軍が撤退してしまえば、韓国としては通常兵器の能力では北朝鮮側を上回ってもつねに侵略の脅威にさらされることになる。また核兵器を廃棄してもすぐに製造に動けることで、タイムラグを置いてその脅威にさらされ続けることになる。そうした状態を韓国の国民が許容できるはずがないだろう。


本気で核兵器の製造や廃棄を目指しているわけではない?

 おそらく、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官を中心とする米国の親イスラエル右派の勢力は、在韓米軍を撤退させるにしても、その前に韓国に核武装をさせようとするだろう。いずれは日本もそうした状態にしていくことで沖縄からも米軍が撤退していくことになるが、まずは韓国がその先駆けになる。
 あるいは、朝鮮半島の統一を認めるのであれば、やはり韓国が北朝鮮を併合することで、核兵器も受け継いでいくことになるのだろう。北朝鮮のような国民が“飢えている”国が、そのかなりの部分は日本に拠出させるつもりでいるとしても、統一コストを負担できるはずがないからだ。
 そもそも、これまで当欄で述べてきたように北朝鮮の核ミサイルは中国を照準にしているのであり、親イスラエル右派は中国を相手に「新冷戦」構造に持ち込むにあたり、それを“脅し”に使おうとしている。米本土まで届く核兵器を搭載可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発や保有を目指していたのも、その本来の目的は中国と経済的につながる欧州を標的としたものだ。
 そうしたことを考えても、米権力者層に操られている金正恩委員長が本気で核兵器の廃棄や製造の中止を意図しているとは考えにくい。


 明日以降も17日土曜日にかけて、この続きを掲載していきます。
 通商問題もまじえて、米国の対中国政策が焦点になります。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。