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米国による北朝鮮問題を利用した対中国政策

ポイント
・トランプ政権で主導権を握っている勢力は最初から北朝鮮を攻撃することは考えておらず、昨年末にかけて緊張状態を強めておいて年明けから一転して融和ムードを強めたのはシナリオ通りの動きだ。
・米国が北朝鮮に強硬姿勢を見せていたのは、実際に軍事攻撃すると難民が中国領域内に押し寄せ、都市部で暴動が引き起こされる恐れが出てくるため、中国を脅すことが目的だった。中国は体制維持のために都市部で暴動が起こることを恐れているからだ。
・米権力者層は中国を相手に「新冷戦」構造を構築して大規模な軍需を創出しようとしているが、かつての旧冷戦時代とは異なり米国の国力が衰えているため、駐留米軍を撤退させて属国群を独立させて国防を強化させ、それと連携して中国と対峙していこうとしている。
・そのために習近平国家主席に絶対的な権力を握らせたうえで積極的に対外膨張路線を推進させることで、表面的に軍拡競争を繰り広げようとしている。
・その一方で、国有企業改革を推進させて不良債権を顕在化させ、米系金融機関を買収も含めて参入させたうえで、「一帯一路」に乗ってユーラシア大陸を西方に向けてグローバル規模で利権を拡大していこうとしている。



以前からのシナリオに沿った動きか?

 そもそも、最近になって北朝鮮を巡る動きが慌ただしくなったが、実際には既に昨年秋頃から水面下で米朝の外交官が接触していたことが今になって報じられているように、これまでの動きは事前のシナリオに沿ったものだ。北朝鮮側は昨年末にかけて米本土にまで届く核兵器が搭載可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発に成功したことをちらつかせて緊張状態を煽っておいて、年明けから平昌(ピョンチャン)五輪への参加を表明するなど、親北的な文在寅(ムン・ジェイン)政権の統治下にある韓国を“出し”に使って一気に融和ムードを強めるシナリオが、以前から組まれていたといえる。
 以前、当欄で指摘したように、米国では軍産複合体の勢力が北朝鮮への軍事攻撃を主張していたのに対し、ドナルド・トランプ政権の背後に控えて主導権を握っている親イスラエル右派の勢力は最初から攻撃することは考えていなかった。北朝鮮が融和姿勢に転じた背後には、これまでの制裁が奏功しており、経済的に追い詰められているからだといった認識が一般的であり、トランプ大統領も自身の政策の結果だとして誇っているが、そうではなく以前からのシナリオ通りの動きである。


北朝鮮への強硬姿勢は中国を脅すため

 では、どうしてシナリオ通りに北朝鮮が年明けからまず韓国を対象に融和姿勢に転じ、先週になると一気に事態が進んで米国との間でも和解ムードが高まったのかというと、やはり中国との関係を考える必要がある。そもそも、これまで当欄で述べてきたように親イスラエル右派も左派や軍産複合体と同様に北朝鮮問題では強硬な姿勢を貫いてきたが、それは決して攻撃するためではなく、あくまでも中国を脅すためである。
 中国としては実際に米国が攻撃すると難民が国境を越えて中国領域内に押し寄せてくることが考えられるが、そうなると絶望的なまでに貧富の格差が拡大しており、地方の農村部から出稼ぎに来ている「農民工」たちが貧困から脱することができず、政府や体制に対して不満が蓄積されているなかで、暴動に“火を点ける”恐れがある。特に遼寧省では過剰生産能力を抱えている重工業部門の国有企業が集積しており、潜在的に多くの失業者を抱えているだけに、大規模な暴動に発展する恐れすらあり得る。首都北京まではそれほど距離がないだけに、共産党政府の“お膝元”に波及することで、体制が存続の危機にさらされることさえ、まったくないとは言い切れないことになる。

 共産党政権にとって最も大事なことは体制の存続を図ることであるのはいうまでもないが、そのためには都市部で暴動を起こさせないことであるといって過言ではない。金融危機を絶対に引き起こさない姿勢を見せているのも、豚肉をはじめ食料品価格の高騰に神経質になる傾向があるのも、都市部での暴動の発生を恐れているからだ。グローバル報道機関から隔絶されている地方の農村部でいくら大規模な農民一揆が発生しても、極端にいえば“皆殺し”にすれば済むことだが、都市部ではそうした対応もできないからだ。


属国群を独立させて提携しながら中国と新冷戦構造へ

 親イスラエル右派は米国の世界覇権が絶頂期を過ぎて斜陽期に転じたなかで、それまでのグローバル生産体制に代わる経済成長路線として、中国を相手に「新冷戦」体制を構築することで大規模な軍需を創出しようとしている。
 ただし、かつてのソ連を相手とした旧冷戦時代はその覇権の興隆期だったが、斜陽期に転じた今では米軍を世界的に駐留させるだけの国力を喪失しているので、属国群を国防体制を強化させたうえで独立させていきながら、それと連携していくことで中国と対峙していこうとしている。
 トランプ大統領が昨年12月18日の国家安全保障戦略で、ロシアとともに中国を米国の世界覇権の秩序に挑戦する修正主義勢力と位置付けたうえで、軍事力を強化する姿勢を示したのが想起される。


軍拡競争を繰り広げながら中国内部にも進出して利権拡大へ

 かつての旧冷戦時代には、ホワイトハウスではナチズム系のジョン・フォスター・ダレス、ヘンリー・キッシンジャー両元国務長官が主導権を握った一方で、クレムリンでは世界単一政府系のデイヴィッド・ロックフェラーが管理することで軍拡競争を繰り広げ、巨大な“ヤラセ”を演出してきた。
 それと同様に、現在でも米権力者層は中国の習近平国家主席を操り、昨年10月18~24日に開催された共産党大会で、また足元で開かれている全国人民代表大会(全人代)で一強体制を強化させようとしている。そのうえで、「中華民族(帝国)の偉大な復興」を標榜させて、建国100周年に当たる2049年までに「社会主義現代化強国」の建設の目標を掲げさせることで、国防費を大幅に増額させるなど軍事的に、また経済的にも「一帯一路」構想により積極的に対外膨張路線を推進させようとしている。
 そうすることで、表面的には中国と軍拡競争を繰り広げて大規模な軍需を創出していく一方で、中国国内では過剰生産能力や潜在的な過剰債務を抱えている国有企業改革を推進させ、それにより顕在化していく国有銀行の不良債権の処理のために米系金融機関を積極的に参入させていき、単なる資本参加だけでなく完全な買収も仕掛けられていくだろう。そうすることで、中国が主にユーラシア大陸を西方に向けて進出していくにあたり、それに乗ってグローバル規模で利権を拡大していくことを目論んでいるようだ。

 かつて、アジア通貨危機が波及して97年11月に韓国が危機に陥ったのを受けて、12月には国際通貨基金(IMF)の管理下に入って支援を受けることになった。それにより代表的な財閥系企業の多くの株式の過半が米系金融機関に握られたことで、その後韓国経済が成長軌道を回復して財閥系企業が高収益を計上するようになると、その利益の大部分を“掠め取って”いったものだが、それと同じようなものだ。
 ただ、これから中国で起こることは、大帝国による対外膨張路線に乗って利権を拡大していくだけに、そのスケールは韓国の比ではない。


 今週はいつもより1日長く、明日もこの続きを掲載します。
 北朝鮮問題や、最近になって米国が中国に対する通商摩擦をより強めてきた理由がよく理解できると思います。
 明日もよろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。