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米国による中国への圧力の手段が通商問題に交代

ポイント
・米国が北朝鮮問題を利用して圧力を強めていたが、それは昨年11月に中国で対外金融規制の緩和により外資系による中国の銀行の買収も認められたなかで、習近平政権に国有企業改革にしっかり取り組むように促すことにあった。
・米国は中国で全人代が開催されたのを機に北朝鮮問題を軟化させたが、それは軍事攻撃をすると難民が中国領域内に流入すると都市部で暴動が誘発される恐れがあるため、それをちらつかせたままでは改革に踏み切りにくくなるためだ。
・それに代わって通商問題で圧力を強めるようになったのは、関税をかけるなどして輸入制限に踏み切ると中国の国有企業は過剰生産能力の捌け口を封じられるため、“血を見る”覚悟で改革に踏み出す以外になくなるからだ。



国有企業改革の推進に向けて北朝鮮問題を利用して圧力を強化

 親イスラエル右派主導の米国が中国に圧力をかけるために北朝鮮問題を利用していたのは、既に昨年11月8~10日にドナルド・トランプ大統領が中国を訪問した際の水面下での交渉で対外金融規制の緩和により外資系による中国の銀行の買収も認められていたなかで、国有企業改革にしっかり取り組むように促すことにあったといえよう。
 国有企業の利権の多くは江沢民元国家主席の勢力が握っているが、習近平現国家主席が王岐山前中央規律検査委員会書記とともに、これまでの反腐敗運動によりその系列の大物クラスを陥れてきたことで、先の共産党大会でこの系列がほぼ全滅状態になったことから、全国人民代表大会(全人代)で人事が出そろえば“大ナタを振るって”改革に取り組むことができる。改革に取り組めば人員整理その他、どうしてもそれなりに“血を見る”ことが避けられないが、そこに習主席が一強体制を確立したことで、強引に反抗を抑え込むことができる権力を手中にした意味が出てくる。
 先の党大会で慣行的な“定年”により政治局常務委員を引退した王前書紀が、足元の全人代で国家副主席に就くといわれているのも、米ロックフェラー財閥系の金融機関と密接なつながりのある人脈が買われているからにほかならない。


全人代の開催とともに圧力の手段を通商問題に切り替える

 とはいえ、いかに習近平主席が絶大な権力を手中にしたとしても、米国が北朝鮮に対して軍事攻撃の可能性をちらつかせれば、特に遼寧省では過剰生産能力を抱えている重工業を多く抱えているだけに、国有企業の改革に向けて大きな障害になってしまう。中国で全人代が開催されるとともに米朝和解ムードが一気に高まり、攻撃の可能性が遠のいたのはこのためだ。
 米権力者層としては中国に圧力を継続してかけるにあたり、今度は実際に通商面で実力行使に出ることになったのであり、この時期に鉄鋼の輸入に25%、アルミニウムに10%の関税がかけられたのもこのためである。この輸入制限措置では中国からだけでなく、その迂回輸出も標的にするためにすべての国・地域からの輸入に対して関税がかけられることになった。過剰生産能力を処理していくにあたり、輸出に捌け口を見出すことができなくなっていけば、中国としては“血を見る”覚悟で国有企業改革を断行しなければならなくなるからだ。
 また今週に入ってからも、知的財産権の侵害を理由に、最大で600億ドルもの関税をかけることが検討されている。さらにトランプ大統領は中国に対し、年間で1,000億ドルもの対米貿易黒字を削減する計画を立てるように要求しているとされる。


ゴールドマン系の影響力後退と通商派台頭は当然の流れ

 トランプ政権では、大統領選挙戦中に支援していた功績からゴールドマン・サックス出身のゲーリー・コーン国家経済委員会(NEC)委員長とスティーブン・ムニューシン財務長官が入閣していたが、それはデイヴィッド・ロックフェラー直系のシティ・グループがヒラリー・クリントン元国務長官の陣営を支援していたことと密接な関係にある。
 しかし、以前からトランプ大統領と関係が悪かったが、ここにきて保護主義的な関税措置の導入によりコーン委員長が辞任に追い込まれたのは、米国の中国に対する圧力が通商政策に代わったのだから当然である。それとともに、選挙戦中に中国からのすべての輸入に45%の関税をかけることを提唱していたピーター・ナバロ通商製造業政策局長の存在感が増していき、さらに次期NEC委員長に対中強硬派の評論家であるラリー・クドロー氏が間もなく就任することになったのも得心がいくというものだ。
 ちなみに、クドロー次期NEC委員長は自由貿易を支持しており、関税引き上げをはじめ保護主義的な政策を批判していたものだ。それが次期委員長への就任を打診されると一転してそれに賛意を示すあたり、就任の条件としてなんらかの裏取引がなされたのだろう。ウィルバー・ロス商務長官が以前には自由貿易や環太平洋経済連携協定(TPP)を支持していたのが、トランプ政権での入閣が決まると急に保護主義的な姿勢に転じ、TPPにも反対するようになったのと同じようなものだ。


 今週はこれで終わりになります。今週もご拝読ありがとうございました。
 来週も週明け19日月曜日より掲載していくのでよろしくお願いします。
 なにかありましたら書き込みをしていただければと思います。
 また私のお話を実際にお聞きしたいようであればご連絡いただければ幸いです。通常の講演はもとより、少人数の気の合った仲間形式での懇親会でもかまいません。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。