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米国で石油・軍需産業系の閣僚が解任された背景について

・軍需産業系は大統領選挙戦の最中からトランプ陣営を攻撃しており、その後押しを受けてその地位に就任したマクマスター前大統領補佐官がロシアに批判的だったのは当然だ。
・ティラーソン前国務長官は穏健派だったが、それは朝鮮半島情勢では現状維持を目論むことであり、すなわち在韓米軍がいつまでも撤退できない状態にすることだった。
・日本で安倍政権が財務省理財局の公文書改ざん問題で陥れられていたのは、米国が北朝鮮に対して融和姿勢に転じるにあたり、日本にはこれまで通り北朝鮮や中国に対して強硬路線を続けるように命じていたにもかかわらず、日朝首脳会談の開催を模索したからだ。
・もっとも、日本が強硬路線を続ければ孤立して拉致問題も置き去りにされてしまい、国内世論や野党、対立している政治家から攻撃されるのが目に見えていたので、安倍政権としてはやむを得なかった面もある。
・ティラーソン前国務長官が現状維持の姿勢にこだわったのは、北朝鮮問題には世界最大のウラン鉱石の埋蔵地域の利権獲得といった性格も帯びていたなかで、石油産業の利害を守るといった意味もあったと思われる。



前大統領補佐官の起用とその失脚の背景

 昨年末の段階で、ホワイトハウスではマイク・ポンペオ中央情報局(CIA)長官が、あと3カ月もすれば北朝鮮は米本土まで届く核兵器が搭載可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)を手にすると報告したのを受けて、ハーバート・マクマスター大統領補佐官(いずれも当時)が軍事攻撃を決断したとされる。マクマスター補佐官は職業軍人出身で軍需産業系の支持でその地位に就いており、それは軍産系が一様に敵視しているロシアに対して一貫して批判的な姿勢を採り続けていたことにも表れていたものだ。
 大統領選挙戦中から軍需産業系はロシアとの不透明なつながりを指摘することでドナルド・トランプ陣営を攻撃しており、マイケル・フリン元大統領補佐官を辞任させざるを得なくなったなかで、後任にマクマスター補佐官が就いたのは至極当然だったといえる。トランプ大統領とロシア問題で意見が合わなかったのも当然であり、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官から反感を買っていたのは致命的だったといえる。


前国務長官の就任と解任が意味するもの

 一方で、直前までシティ・グループと並んでデイヴィッド・ロックフェラー直系のエクソンモービルの会長兼最高経営責任者(CEO)だったレックス・ティラーソン前国務長官は穏健派として、軍事力の行使をちらつかせる他の軍需産業系のタカ派とは反対の姿勢を採り続けていた。ただ、その意味するものは現状維持なのであり、すなわちこれまで通り朝鮮半島を南北に分断されている状態を安定的に維持することで、在韓米軍がいつまでも撤退できない状態を継続することだ。
 すなわち、石油・軍需産業系の内部でもタカ派とハト派が存在しているが、そうした産業の利害に沿って政策を推進していく理念自体に変わりはない。米韓自由貿易協定の改定を巡り、北朝鮮の軍事脅威が続いている状態にあるにもかかわらず、米国側が在韓米軍の撤退をちらつかせて韓国側を脅したが、それがティラーソン長官が解任された直後であることが注目される。
 そもそも、トランプ大統領は当初はイスラエルで長期的に政権与党を担っている右派リクードへの最大の献金者であるシェルドン・アデルソン氏の意向を受けて、ジョン・ボルトン新大統領補佐官を国務長官に就けるつもりでいたという。ところが、ロシアゲート問題で石油・軍需産業系から攻撃されたことでそれを断念せざるを得なくなり、妥協の産物として同じ系列でありながら穏健的なティラーソン前長官が浮上したのだという。
 実際、トランプ政権が発足した際に、重要閣僚人事では国務長官のポストが最後まで決まらなかったものだ。


財務省理財局の改ざん問題で安倍政権が窮地に陥っているワケ

 いうまでもなく、マクマスター前大統領補佐官もティラーソン前国務長官も、さらに前補佐官と同じ職業軍人系であるジェームズ・マティス国防長官もジョン・ケリー大統領首席補佐官も(ただし、マティス長官はあまり党派色が強くないためにトランプ大統領陣営から疎んじられるのが避けられているが)、在韓米軍とともに沖縄に駐留している米軍の撤退を望んでいない。
 そうしたなかで、これら重要閣僚が解任されるとともに、日本では財務省理財局の公文書改ざん問題が急速に高まっていき、安倍晋三政権が窮地に陥っているのも注目する必要がある。どうしてここにきて安倍政権が米国に陥れられているかというと、米国のキッシンジャー元国務長官の系列から、孤立状態を深めても北朝鮮に対してそれまでの強硬路線を維持するなど、中国に対する姿勢も含めてそうした路線を継続するように指示(よりはっきりいえば“命令”)していたにもかかわらず、日朝首脳会談の開催を模索するなど従来の路線を修正しようとしたことが指摘できる。
 米国が在韓米軍に続いて将来的には沖縄からも駐留米軍を撤退させようとしているなかで、日本は安全保障面から独立していけるように、さらには将来的にアジア極東では米国に代わりこの地域で軍事的な観点から秩序の安定を守ることができるように、これから国防費を倍増させて平和憲法も改正し、さらに将来的には核保有国になっていく必要がある。そのためには北朝鮮や中国に対して強硬姿勢を維持し続ける必要があったにもかかわらず、孤立化や日本にとって重要な拉致問題が置き去りになることを恐れてしまい、水面下で日朝首脳会談を模索する動きを見せたことにあるようだ。
 そうした意味では、ティラーソン前国務長官やマクマスター前大統領補佐官が解任されたのとほぼ同時期に改ざん問題が高まったのも注目される。


やむを得ない面もあった安倍政権の対応

 もっとも、外交面で孤立化が進んだり拉致問題で素通りされてしまえば、国内世論や野党、敵対的な政治家から激しく攻撃されるのが目に見えているので、安倍政権としてはやむを得なかった面があるのは確かである。もしかしたら、トランプ政権の閣僚が職業軍人系で固められたのを見て、政権の外交ブレーンが安倍首相にキッシンジャー元国務長官の意向に背いて協調外交路線に転じるように進言したのかもしれない。安倍政権のブレーンの多くは竹中平蔵元総務相に近い人脈で占められているが、元総務相が活躍した小泉純一郎政権の際に、中曽根康弘元首相や読売新聞の渡辺恒雄(通称ナベツネ)代表取締役主筆を中心に、多くのキッシンジャー元長官につらなる旧勢力が相次いで大きな打撃を受けたことを想起すべきである。
 とはいえ、ナチズム系としても安倍首相を追い詰めてはみたものの、それに代わる後継首相に有力な人材が見当たらないで苦慮しているようだ。かつて、キッシンジャー元国務長官はソ連と敵対するにあたり、同じ社会主義大国である中国を同国と分断させて味方につけるため、友好関係を結んで国交の樹立に動いた。ところが、それに先んじて田中角栄政権下の日本が中国と国交を結んだためにキッシンジャー元長官は怒ってしまい、それが一因になってロッキード事件を引き起こされてしまった。
 現状では、安倍首相はそこまで極端に陥れられるような状況ではないようだ。


前国務長官が現状維持だったもう一つの理由

 なお、ティラーソン前国務長官が朝鮮半島情勢を巡り現状維持の姿勢にこだわったことについては、その利害関係の観点でいえば、前長官はその出自から石油メジャーの利害を守っていたところがあったともいえる。北朝鮮問題にはその本質上、世界最大の埋蔵量を誇るとされる朝鮮半島北部のウラン鉱石の利権を、米国が中国を排除してロシアとともに握ろうとしていたことがあったことが指摘できる。バラク・オバマ前政権時代の核兵器の縮小路線をトランプ政権が抜本的に転換しようとしているだけでなく、次世代のエネルギー産業として原子力の優位性が高まれば、石油産業には大きな打撃がもたらされるからだ。


 明日もこの続きを掲載します。
 明日は、特に米トランプ政権の重要閣僚に凶暴なネオコン派が就いた背景について考察します。
 週末の明後日はロシア人元工作員の暗殺未遂事件についてごく簡単に考えてみます。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。