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NFPが低調も悲観できない米雇用統計の内容

ポイント
・失業率が前月と変わらなかったなかで労働参加率が0.1ポイント低下したが、前月に0.3ポイントも上昇した反動が出ていることも考慮すべきだ。
・非農業部門の雇用者数が事前予想を大幅に下回ったが、前月にかなりの高水準を記録した反動が出ていることや、寒波の影響で経済活動が鈍化した影響も考えるべきだ。
・平均時給は低水準ながらも着実に上昇しているが、今回は好景気が続いているのを背景に長期失業者が減っていることで、低賃金の職種の雇用者が増えていることが全体の賃金の伸びを抑制しているようだ。
・ただそれは労働環境が極めて良好な状態にあることを意味しており、ある時期を過ぎると賃金の伸びが一気に加速していく可能性が高いことを示唆している。



労働参加率の低下は前月の大幅上昇の反動も

 今週はこれまでの慣習通り、まずは本来の重要な金融市況の変動要因について簡単に押さえておく。ジェローム・パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演はともかくとしても、雇用統計についてその内容を見ておくことにする。

 今回、発表された3月の雇用統計では、失業率が前回と同様に事前予想では4.0%に低下するとされていたが、4.1%と前月と変わらなかった。ただ、前回では労働参加率が前々月の63.0%に一気に0.3ポイントも上昇していたので、職探しをする人がかなり増えたことで失業率が変わらなかったと説明できた。今回は参加率が62.9%と前月から0.1ポイント低下したにもかかわらず失業率が変わらなかったので、その限りでは労働環境の改善傾向がやや足踏みしたといえなくもない。
 実際、後述するように雇用者数の伸びが鈍化していたので、そうした見方もある程度は的を射ているのだろう。ただ、前月に大幅に低下したことを考えると、今回はその反動が出ていることも考慮すべきだ。


NFPも反動で低水準も内容は悪くない

 市場で最も注目されている非農業部門の雇用者数(NFP)の前月比の増加幅は10万3,000人とやや低水準となり、事前予想の18万5,000人をかなり下回った。2日前に発表されたオートマティック・データ・プロセッシング社(ADP)の雇用統計が24万1,000人とかなり良好な内容だったので、これまでの経緯からすれば、今回の“正規”の雇用統計は低調なものになることはある程度予想されていたともいえる。
 もっとも、NFPの増加幅は前月が32万6,000人(改定値)と極めて高水準だったので、今回はその反動が出ておかしくなく、その分は割り引いて見る必要がある。過去3カ月平均では20万2,000人に達しており、現在の失業率の水準を維持するには10万人も増えていれば十分だといわれていることから推して、趨勢的にはそれはさらに低下していく公算が高い。

 内訳を見ると、今回のNFPの増加幅のうち、建設業が1万5,000人減少とマイナスの伸びに転じ、小売業も大幅に増加幅を縮小しているあたり、寒波で経済活動が鈍化した影響が出ていたといえるだろう。あくまでも一時的なものに過ぎず、おそらく多くの連邦公開市場委員会(FOMC)関係者やエコノミストが指摘、予想しているように、米国経済は4-6月期以降、再び浮揚していくことが予想できる。
 それ以外に重要な項目として、製造業が2万2,000人と堅調に推移しているのは好感できる要因だ。


賃金が伸びていくと一気に加速することも

 今後のインフレ動向を測る指標として最近、重視されている平均時給の前年同月比の伸び率は2.7%となり、事前予想通りとなって前月から0.1ポイント上昇した。賃金の伸びは依然として緩やかな状態が続いているが、確実に上向いているのは間違いないようだ。
 失業率がさらに低下していくことが見込まれるなかで、日本の主要企業とは異なり、米国ではドナルド・トランプ政権が昨年末に法人税減税を決めたことで、これから従業員の給与を引き上げていく意向を示すところが多い。ある時点で伸びが鮮明に高まると、それが一気に加速していく可能性がありそうだ。


長期失業者が職にありつき表向き全体の賃金が低調に

 また、今回は半年以上にわたる長期失業者が前月の139万7,000人から132万2,000人に、経済的理由でのパート勤務者も516万人から501万9,000人に大幅に減少した。その結果、完全失業者に経済的理由によるパート労働者、働く意欲はあるが求職をやめた人を加味した広義の失業率である「U6失業率」も前月の8.2%から8.0%に低下した。長期間にわたり失業者となって求職を諦めていた人が、好景気が続いているのを背景に活発に職探しをするようになり、実際に職を得られているのを映すものだ。
 これは労働環境がかなり良好な状態にあることを示唆すると同時に、こうした人たちの多くは低賃金の職種に集中している可能性が高いため、全体の賃金がなかなか上がってこなくて当然である。ただそれは、前記のようにある時期を過ぎると賃金の伸びが加速する可能性を秘めているともいえる。


 明日は最近の米国と中国との間での通商紛争の動向について、通商関係の閣僚が市場の動揺を抑える動きを見せたにもかかわらず、トランプ大統領が追加関税を示唆するなど強硬姿勢を維持して再燃しておりますが、そのあたりの事情を考察します。
 明日以降は週末にかけて、北朝鮮を巡る周辺各国の動きについて考えていきます。
 今週は1日長く、14日土曜日まで掲載します。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。