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先週の動き・・・・米中通商紛争の後退から総じて株高に

ポイント
・米国株は米中貿易紛争にシリア問題も加わったことで動意の激しい展開が続いているが、通商問題では貿易戦争への懸念が後退したことから上昇する場面が多かった。
・ドル指数の過半を占めるユーロ・ドル相場が保合い圏内での動きを続けているのを映して各種商品市況も同じような動きを継続しているが、原油相場がこれを上放れてきたのが注目される。
・米国としてはサウジアラビアに国営石油会社のIPOを支援する目的や、それ以上に中国に国有企業改革の推進を促すうえで信用収縮が強まる状態になるのを避ける必要があり、リスク選好が強まりやすい環境になりそうだ。
・ドル・円相場は米韓FTAの修正で為替条項が入ったのを受けて日米首脳会談で日銀の超大規模緩和策の修正を求められるとの見方から上値が重くなっているが、それだけに会談が終わると上がりやすくなることも。



 先週の国際金融市況は不安定な動きを続けながらも、米中貿易戦争への懸念が後退したことから株価が反発歩調になった。
 米国株は前週末6日にドナルド・トランプ米大統領が中国の知的財産権の侵害問題で1,000億ドルもの追加関税を検討するように米通商代表部(USTR)に指示し、中国側がこれに反発したことからダウが前日比572ドル安と急落した。そうしたなか、週初9日には米中両国から紛争の激化を和らげる発言が出たことから反発したが、7日にシリアで化学兵器を使用したバッシャール・アサド政権軍と見られる(実際にはそうではないが)空爆が起こったことや、米議会予算局(CBO)による財政赤字の拡大予想が嫌気されて値位置を下げ、上昇幅はダウで前週末比46ドル高にとどまった。しかし、10日には中国・博鰲(ボーアオ)で開催されていたアジアフォーラムで、習近平国家主席が資本取引を含む大胆な市場開放策の実施を提唱したことから、前日比428ドル高と急伸した。
 その後、11日にはトランプ大統領がミサイル発射を警告するツイートを発するなどシリア情勢の緊迫化や、それに伴う米国とロシアの関係悪化が懸念されて同218ドル安と下落した。しかし、12日にはトランプ大統領がシリアに対する軍事行動の判断の先送りを決めたことや、条件次第で環太平洋経済連携協定(TPP)への復帰を検討するようにUSTRに指示したことが好感され、同293ドル高と反発した。ただ、週末13日には国連安全保障理事会でシリア問題を巡り米国とロシアの間の溝が埋まらなかったため、利食い売りが優勢になって同122ドル安と反落した。

 日本株も先週も米国株に比べると落ち着いた動きになったなか、総じて堅調に推移した。
 週初9日は米中両国の閣僚から貿易戦争への懸念を和らげる発言が出たのが好感され、日経平均が前週末比110円高となった。さらに翌10日も安寄りしたが、習近平主席による前記の演説が好感されて値位置を引き上げて続伸し、前日比116円高になった。
 11日にはシリア情勢の緊迫化から同107円安と反落し、翌12日にもその影響が続いて当初は続落したが、その後トランプ米大統領がTPPへの復帰の検討を表明したことから下げ幅を縮小していき、同26円安にとどまった。週末13日にはトランプ大統領がシリアへの軍事攻撃の判断の先送りやTPPへの参加の是非を検討したことが好感され、同118円高となった。

 外国為替市場では地政学リスクに押されながらも、株高に追随してどちらかといえば円安気味に推移した。
 ドル・円相場は週初9日の東京市場では、前週末にトランプ大統領が追加関税を検討するように指示したことから下振れしたことで1ドル=106円80銭台で始まったが、すぐに米中両国の貿易戦争への懸念が後退したことで107円台に復帰した。ニューヨーク市場ではシリア情勢の緊迫化による円高圧力から軟化していき、翌10日の東京市場では106円60銭台まで下げたが、その後アジアフォーラムでの習近平主席の演説を受けて、ニューヨーク市場では107円40銭近くまで戻した。
 その後、11日にはシリア問題の緊迫化からニューヨーク市場では106円60銭台に再び下げたが、その後退とともに強含んでいき、トランプ大統領がTPP復帰を検討する発言や、同日に公表された3月20~21日開催分の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録の内容がタカ派的だったことも押し上げ要因になり、週末13日のロンドン市場では107円80銭近い水準まで上昇した。

 ユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.23ドル台を中心に推移した。
 週初9日の東京市場では前週末に米国側が中国に対して追加制裁関税を検討する動きに出たことから軟化して1.22ドル台後半で始まったが、貿易戦争への懸念の後退によりすぐに1.23ドル台に復帰した。
 その後、シリア情勢の高まりやその後退にも影響されたが、ユーロ側の要因としては10日にオーストリア中央銀行のエワルド・ノボトニー総裁が年内に資産購入プログラムを終了すべきとするなど、欧州中央銀行(ECB)の金融政策についてタカ派的な発言をしたことからユーロ高に振れたが、すかさずECB筋がこの発言は総裁による個人的見解と表明したことからすぐに下押すという場面も見られた。


先行性の高い商品群の中で原油相場が上放れ

 ドル指数の過半を占めるユーロ・ドル相場は今年に入ってから上値を1ユーロ=1.25ドル台、下値を1.22ドル前後とする保合いでの推移が続いており、特に最近では1.22ドル台から1.24ドル超とレンジが一段と狭くなっている。これを受けて、金や原油、各種穀物といった国際商品市況も保合い圏内での動きが続いているが、こうした商品市況は市場規模が小さいだけに展開の主導権を握る投機筋が策動しやすいことから、為替相場や株価に先行して動くことが多い。
 このうち、「永遠不変にして普遍の無国籍通貨」としての性格から最もドル相場に逆相関の関係にあるとされる金相場は、11日にシリア問題で急伸した後にFOMC議事録の公表を受けて反落したが、原油相場は下がらずに保合いを上放れてきているのが注目される。


短期的に気になる要因はあるが中長期的にリスク選好か

 こうしたなか、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策を巡りジェローム・パウエル議長がタカ派的な発言をしていることもあり、6月12~13日に開催されるFOMCでは追加利上げの決定とともに、委員の年内の利上げの回数の見通し(ドットチャート)の中心値が4回に引き上げられておかしくない。また取組状況を見ても、外為市場では投機筋によるドルの売り持ちが多く、反対に原油先物市場では買玉がかなり多い状態だ。
 それでも、こうした動きは中長期的にドル安が進むことを暗示しているといえなくもなく、それはリスク選好が強まることも意味しているので株価も上昇していくことが予想される。


日銀だけは除外されておりドル・円は別格か

 ただし、ドル・円相場だけは事情が異なる。
 通商政策を重視しているトランプ政権はドル高をもたらしている主要各国・地域の中央銀行が超金融緩和策を推進しているのを批判し、FRBとともに出口に向けて動くように要請している。しかし、日本銀行(日銀)だけは“キチガイじみた”超大規模な緩和策の修正に動くと世界的に信用収縮が強まりかねないため、当面は現行の政策を継続することが許されているようだ。
 トランプ政権としてはサウジアラビア政府による国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)を支援する必要があり、またそれ以上に中国に国有企業改革を推進させるにあたり、絶対に信用不安が高まる状況にさせてはならない事情がある。このため、リスク選好が再燃して株高局面に復帰していくとともに、ドル安以上に円安が進みやすくなっていくのではないか。

 ただ、足元では米韓自由貿易協定(FTA)が修正された際に為替条項が入ったことから、今週17~18日に開催される日米首脳会談で米国側から日銀の金融政策の修正が求められるとの観測がどうしてもくすぶっているようだ。それだけに、首脳会談が終わるとドル・円相場が上昇しやすくなるかもしれない。


 今週は、明日は先週のアジアフォーラムでの習近平国家主席の演説で金融分野の対外開放を打ち出したことを採り上げます。米国による中国への攻撃の成果が出たといえます。
 明後日はその“付録”として、自動車分野もそこに加えられたことで、日本の状況についても簡単に考えていきます。
 週末の2日間では、北朝鮮問題を巡り今週の日米首脳会談を皮切りに27日に南北首脳会談、そして最大の焦点である米朝首脳会談が開催されますが、その本当の意味について、もう一度深く考察してみたいと思います。
 今週もよろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。