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習近平の背後勢力と上海閥を運営している勢力の実相

 毎度、当サイトをご覧いただき、ありがとうございます。
 最初に筆者からお知らせがあります。
 このたび、筆者が講師を務める講演会が大阪で行われることになりました。
 11月19日に大阪堂島商品取引所にて、午後1時より講演を行わせていただきます。
 またそれが終わった後も、午後3時より懇親会において、気軽に質問をしていただければお答えさせていただきます。
 無料で入場できるだけでなく、皆様方と触れ合える数少ない機会ですので、大阪及びその周辺にお住まいの方は是非、下記サイトにてお申込みをしていただいたうえでご来場いただければと思います。

http://www.sunward-t.co.jp/seminar/2016/20161119_3/index.html


ポイント(敬称略)
・かつて、上海閥が李克強を排除するために習近平に相乗りしたことで現政権が樹立されたが、今回の6中全会を巡りそれと同じ動きが見られた。
・習近平を背後で支えているのはかつて、「反胡錦濤の急先鋒」といわれた李長春と、朝鮮族ネットワークを駆使して裏側で国際的に“危険な”組織にもつらなる張徳江である。
・この両人は合従連衡や権謀術数により政敵を陥れるのに長けており、かつては上海閥に接近して同化しているように見せかけていたが、本来的には異なる系列だ。
・上海閥で鄧小平の後押しも受けて江沢民を裏側で支えて政敵を次々に陥れてきたのが曽慶紅であり、それにより江政権による専制権力体制の構築に多大な役割を担ってきた。



前政権時代に次期国家主席が決まったのと同じ動きに

 先週27日には中国で、共産党の重要な会議である第18期中央委員会第6回全体会議(6中全会)が4日間の日程を終えて閉幕したが、そこで習近平総書記(国家主席)が別格な指導者を意味する「核心」と位置付けるコミュニケが採択されたことが発表された。
 以前、当欄では8月上旬に現役の党幹部と引退したOBが河北省の避暑地に集まる「北載河会議」で習近平主席が反対する長老勢力に敗れてしまい、経済政策の主導権を李克強首相に奪われたと述べた。それからわずか2カ月半程度で習近平主席は見事に劣勢な情勢を挽回して優位に立ったことになる。
 この間に何があったのか、筆者にはまだ断片的な情報しか伝わっていないが、それでも現時点でできる限りの分析や考察をしていく。そもそも、最近では当欄では日米の金融政策や米大統領選挙の状況について、それもごく最近では日本銀行(日銀)の外債購入の可能性が出てきたことから、そうした件について主に採り上げてきた。それだけに、中国情勢については筆者は最近ではあまり追っていなかっただけに、急いで情報を取得して分析しているところなので、どうしても粗雑で大雑把なところもあるのはご容赦いただきたい。

 最初に結論を直接的に述べないまでも、今回の習近平主席が巻き返すうえでカギを挙げるとするなら、張徳江・全国人民代表大会(全人代)委員長(現政治局常務委員)と曽慶紅元国家副主席(前政治局常務委員)であるようだ。この両人はつい最近まで対立していたが、それが今回、提携して習近平主席を強大な指導者に“祭り上げた”ようだ。
 かつて、胡錦濤前国家主席の後任の国家主席を決める際に、この両人は前主席の系列である共産主義青年団(共青団)出身の李克強現首相をその地位に就けないために、浙江省党委員会書記だった習近平現主席を担ぎ出してきた経緯がある。いわば、今回はかつてと同じような動きになったということだ。


習近平主席を支えている背後勢力

 現在の状況を考察するにあたり、まず習近平主席の背後勢力や中南海を巡る権力闘争の推移、そしてこれまでの闘争劇の推移を見ておく。
 これらのことはある程度は以前、当欄で述べたことだが、今回の情勢を考察するにあたり是非とも必要なことなので、改めて必要なところについては振り返ることにする。

 まず、習近平主席を背後で支えているのは李長春・前中央精神文明建設指導委員会主任(前政治局常務委員)と前記の張徳江・全人代委員長だ。
 このうち、李長春前主任は胡錦濤前政権以来、中国の思想・イデオロギー部門を握っており、民主化や人権の拡大をいっさい認めず、共産党の美化や日本への排撃姿勢に専念してきた。そして、習近平現政権下では「中華民族(帝国)の復興」を掲げて対外膨張路線をイデオロギー面で推進していく役割を果たしてきた。
 この李長春前主任は、胡錦濤前政権下では、江沢民元国家主席を頂点とする「上海閥」の勢力以上に「反胡錦濤の急先鋒」といわれた経緯がある。実際、04年に小泉純一郎首相(当時)による靖国神社の参拝に抗議して上海や広州で反日デモが吹き荒れた際には、中南海における最大の“黒幕”とされたものだ(ちなみに当時、デモが起こった上海での党委員会書記だったのが上海閥直系で後に汚職の嫌疑で共青団系の策謀により失脚する陳良宇、広州を省都とする広東省の党委員会書記が張徳江委員長だった)。

 張徳江委員長は吉林省朝鮮族出身であるだけに、金正日前政権時代以来、「先軍政治」を推進している北朝鮮の軍部の利権を握っている。またそうした出自による朝鮮族ネットワークから、朝鮮半島にまたがる特異な宗教集団とのつながりが認められ、またその関係から「中東の危険な国」との密接な関係も指摘できる。
 そうした関係から、実際には裏側で日本側では安倍晋三首相とのつながりも認められ、首相の“名代”として高村正彦自民党副総裁が訪中すると必ず張徳江委員長と会談するものだ。
 また、張徳江委員長は沿海部の代表的な地域として経済発展を遂げていた広東省党委員会書記を歴任していただけに、この地域の利権も少なからず握っているようだ。
 さらに大事なことは、この張徳江委員長はそうした人脈から、公安部門のなかでも機密情報を扱う“秘密警察部隊”を握っていることはあまり知られていない。

 この李長春前主任と張徳江委員長は上海閥の一員とされているが、それは胡錦濤前政権下で自分たちの利権を拡大するのに好都合だったことから江沢民元主席を中心とする勢力に接近し、それと“同化”しているように見せかけていたに過ぎない。本当は異なる系列であり、それは自分たちが担いだ習近平主席が最高権力者になると、薄熙来・重慶市党委員会書記(当時)や周永康・前中央政法委員会書記(前政治局常務委員)を反腐敗運動による汚職容疑で陥れ、上海閥に打撃を与えたことに見られる通りだ。
 現在、習近平主席を支えている――よりはっきりいえばコントロールしているのが李長春前主任の直系の“子分”として、その地位を継いでイデオロギー部門を統括している劉雲山・現中央精神文明建設指導委員会主任(現政治局常務委員)である。少し以前に反腐敗運動で上海閥が打撃を受けていた際に、劉雲山主任も近く更迭されるといった見方があったが、それは中国の要人の正確なつながりを認識していない向きの憶測によるものに過ぎない。


陰謀渦巻く合従連衡と権謀術数の巧みな駆使

 この両人は、それも特に張徳江委員長は秘密警察部隊を握り中東の某国との関係もささやかれるだけに、情勢に応じて他の勢力と提携したり、急に裏切って他の勢力と組むといった合従連衡を含む権謀術数に極めて長けている。おそらく、その能力は後述する曽慶紅元副主席を凌ぐほどだと思われる。かつては上海閥に同化していると見せかけておいて後に攻撃しているのはその好例だが、政敵を陥れるためなら一時的に共青団系ともつながるほど“見境”がない。
 また相手を陥れるためには、その相手に接近して良好な関係を構築することで油断させておき、頃合いを見計らって“出し抜く”こともする。薄熙来・元重慶市党委員会書記を陥れたのがその最たるものであり、当初は接近しておいて“持ち上げて”、重慶市で「唱紅」と呼ばれた政治キャンペーンを大々的に展開させておきながら一転して裏切ってしまい、胡錦濤主席や温家宝首相(いずれも当時)に接近して汚職容疑で失脚させたのはその最たる例だといえるだろう。

 さらにいえば、かつて06年から08年にかけて陳良宇・上海市党委員会書記が失脚したのは、胡錦濤主席の“密命”を受けた呉官正・中央規律検査委員会書記(当時)と李源潮・江蘇省党委員会書記(当時、現国家副主席)による共青団系の連携によるものだった。しかし、そこでは中南海では李長春主任がその動きを止めず、また上海市の南隣の広東省にいた張徳江・党委員会書記(いずれも当時)も援軍を出さないで裏切り行為をしていたことはあまり知られていない。
 もとより、後述する上海閥の領袖の江沢民元主席や曽慶紅元副主席は、その直系の黄菊元副首相の子分である陳良宇・元党委員会書記を後継の国家主席、共産党総書記にしようとしていたが、この時点で完全に潰されてしまった。それにより、上海閥としては李克強・遼寧省党委員会書記(当時、現首相)を後継の国家主席にしないためには、李長春前主任や張徳江委員長が推す人物に“相乗り”する以外になくなってしまったのである。


裏側で暗躍して支えてきた上海閥の黒幕

 次に、今回の習近平主席が権力を再掌握するにあたり、もう一人の立役者である曽慶紅元副主席は江沢民元主席と並ぶ上海閥の領袖だが、江元主席が“表”の“親分”なのに対し、曽元副主席は“裏側”での工作活動に従事してきた。
 江沢民元主席は89年6月4日の天安門事件を機に、李鵬首相(当時)を嫌っていた鄧小平の意向で上海市党委員会書記から大幅に引き上げられて共産党総書記に就いたものの、当初はその権力基盤は極めて脆弱なものでしかなく、鄧自身が「南巡講話」をして後押ししなければならなかったほどだ。それから政敵を次々に倒して権力基盤を固めて専制権力体制を確立していくにあたり、裏側で暗躍していたのが曽慶紅元副主席であり、上海閥の権力基盤を確立した最大の立役者といって過言ではない。

 例えば、天安門事件の直後、実質的に軍を動かして民主化を求める学生デモを鎮圧したことで強勢を振るった楊尚昆国家主席、楊白冰・中央軍事委員会秘書長(いずれも当時)の「楊家将」兄弟を92~93年に失脚させたのは、鄧小平の後押しを受けたとはいえ、実働部隊として動いたのは曽慶紅元副主席だった。
 その後も首都北京で実質的に独立政権を樹立していた陳希同・北京市党委員会書記(当時)を97年8月に長城公司事件による汚職容疑で陥れたのも、曽慶紅元副主席が直系の子分の尉健行・中央規律検査委員会書記(当時)に命じて行わせたものだ。


明日は今回の続きについて掲載します。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。